NATURE DIARY

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20090725 雨の南アルプス散歩: Mission Impossible

Nature Diary #0268
Date: July 25th (Saturday), 2009
Place: South-Alps, Yamanashi Pref.
Weather: Cloud and Rain



<Mission:Impossible>

日本チョウ類保全協会の中村康弘氏から高山蝶タカネキマダラセセリ(以下、タカネキ)南アルプス亜種の生息調査の依頼(指令)を受けた------ウーム、これは何となく昔(ウン十年前)テレビで観た スパイ大作戦 “Mission:Impossible” みたいだ。ちなみに、指令は10秒後に消失せずに、今でもメールボックスに残っている。

南アルプスのタカネキは、近年著しく個体数が減り、見ることすらかなり困難な蝶。

この難しいミッションの相棒には、山梨百名山を踏破している友人のヨッシーさんにお願いした。ヨッシーさんは甲府市内の病院に勤める友人で、山梨百名山からみる風景という素晴らしいホームページを管理している。


§ Diary §

朝、ヨッシーさんと芦安村の市営駐車場で合流し、彼の知り合いの車でタカネキの棲む峪の入口まで送って頂いた。l車を降りると生憎の小雨模様で、行く先にも厚い雲がかかっている。

これでは高山蝶のタカネキを見る可能性は低いが、棲息地の様子だけでもしっかり観察しておきたいので、このミッションを雨天決行することにした。とにかく、本日は山に詳しいヨッシーさんと一緒なのでとても心強い。


明るく開けた峪の斜面を ルートファインディング しながらゆっくりと進むが、足場が悪くて歩きにくいので、虫林はしばしば転んでしまう。注意しているつもりなのだが、どうしても転んでしまうのだ------もう少し足腰を鍛えてから来るべきだった。

さらに、雨は降ったり止んだりだが、時々ゲリラ豪雨のように本降りになったのには少し肝を冷やした。

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南アルプスの峪

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A landscape of valley of southern Alps.
Olympus E-3, ZD 8mm, EC-14


通常の撮影では、よほどの土砂降りでないと雨の様子がわからない。
そこで、ストロボを用いて雨を強調してみたところ何とかわかる程度に写す事ができた。

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雨の景色

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A rainy landscape
Olympus E-3, ZD50mm, EC-14、外部ストロボ


しばらく峪を遡行していくと残雪が大きなスノーブリッジを形成していた。このブリッジは中を人が通れるぐらい大きい。洞は2つあって、中間の柱で支えられている。

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スノーブリッジ

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Snow Bridge
Olympus E-3, ZD 8mm, EC-14、外部ストロボ



タカネコウリンカ; Senecio takedanus

悪天候の中をさらに進むとカカネコウリンカの大群落をみつけた。

タカネコウリンカは日本固有種で、中部地方の亜高山から高山にかけて生育する。この植物の種名 takedanus は登山家の武田久吉のことで、彼は日本山岳会を創設し、高山植物の研究者としても知られている。

いままでもタカネコウリンカを見たことはあるが、これほどの大群落は初めてだ。苦労してここまで登ってきた甲斐があった。

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タカネコウリンカの大群落

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A large colony of Senecio takedanus
Olympus E-3, ZD50mm, EC-14

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タカネコウリンカの大群落

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A large colony of Senecio takedanus
Olympus E-3, ZD 8mm, EC-14



ヤマガラシ; Barbarea arthoceras

さらに道無き急坂を喘ぎ喘ぎ登っていくと、沢すじに黄色い絨毯のように広がるヤマガラシの群落にであった。よく見ると、このヤブカラシの間にはクモマツマキチョウの食草のハタザオも多数認められた。

ウーム、こんな場所でクモツキが飛んでいたらさぞや気持ちが良いだろうと思う。来年はぜひともクモツキの時期に訪れてみたい。

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ヤマガラシの大群落

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Barbarea arthoceras
Olympus E-3, ZD50mm, EC-14



その他; Miscellaneous

クモマベニヒカゲと思ったらベニヒカゲ、それもスレたメスだった。

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ベニヒカゲ♀

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A female of Japanese Argus resting on the leaf
Olympus E-3, ZD50mm, EC-14


足もとの細い枝に褐色の蛹を見つけた。形からするとヒョウモンチョウの仲間のものだろうか。わかる方がいたら教えていただきたい。

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ヒョウモン類の蛹?

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Pupa
Olympus E-3, ZD50mm, EC-14


ヒメキシタヒトリは昼間に飛ぶ高山性の蛾の一種だ。この峪にはかなり個体数が多いようで、雨でもしばしば見ることができた。

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ヒメキシタヒトリ赤石山脈亜種

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Parasemia plantaginus melanissima
Olympus E-3, ZD50mm, EC-14

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キバネモンヒトリ

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Spilarctia lutea japonica
Olympus E-3, ZD50mm, EC-14


足もとでミヤマハンミョウを何頭か見たが、この個体はいやに黒化していた。

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黒化したミヤマハンミョウ

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Cicindela sachalinensis
Olympus E-3, ZD50mm, EC-14


綺麗なヤナギハムシを見つけた。
この虫はオレンジ色になるものもあるが、この個体は黄色いかった。

d0090322_244371.jpg
ヤナギハムシ

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Chrysomela vigintipunctata
Olympus E-3, ZD50mm, EC-14

d0090322_245779.jpg
ラッパのような形のコケ

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Chrysomela vigintipunctata
Olympus E-3, ZD50mm, EC-14


タカネキの棲息地は十分に観察できたので、午後早々に山を降りることにした。

途中、強い雨で沢の水が増えて来たので、あわてて渡渉点を見つけて沢を渡った。何度か転び、2mくらいの滑落もしたが、なんとか無事に元の林道に戻ることができた。

林道ではヨッシーさんの知人の車が待っていてくれて有難かった。


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§ Afterword §


悪天候のためにタカネキマダラセセリは見ることができなかったので、このミッションは失敗に終わってしまった。しかし、タカネコウリンカやヤブカラシの大群落は今回の収穫で、そんな「秘密のお花畑」の中で天気の良いときに撮影してみたいと思った。

来年以降にまたヨッシーさんと挑戦してみようと思う。

d0090322_251493.jpg


雨の中、ご一緒していただいたヨッシーさんに感謝します。



以上、 by 虫林花山
Commented by chochoensis at 2009-07-28 07:06 x
虫林さん、南アルプスですか・・・健脚で無いと難しいのでしょうね・・・=ヒメキシタヒトリ=とか=ヤナギハムシ=・・・素敵です・・・。ヤナギハムシは探しているのですがなかなか見つかりません、探し方が悪いのでしょうね・・・。
Commented at 2009-07-28 17:55 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by clossiana at 2009-07-28 18:39
このミッションは成功だったと思います。虫林さんやヨッシーさんの如き山歩きの精鋭達がかろうじて到達出来るような場所はタカネキマダラノの如き、同じ奥山の精霊が好む場所に決まっているからです。今回はたまたま精霊達が恥ずかしがって顔を見せませんでしたが彼らの息遣いは感じられたことと確信しています。
Commented by fanseab at 2009-07-28 22:44
南アルプスのタカネキ探索、お疲れ様でした。
生息環境をこれだけ精査されれば、ほぼmission completedと言っても良いのでは。タテハの蛹は一見してヒョウモン類ではなく、Neptis属、それも恐らくミスジチョウかホシミスジではないかと思います。生息標高が高すぎる気もしますが・・・・。
Commented by 蘭丸 at 2009-07-29 05:02 x
虫林san、おはようございます。
そして、雨の中、お疲れさまでした。
黒化した、ミヤマハンミョウ。。。。。んんん~渋いですね!
「大雪山行」多大なるお褒めを頂きありがとうございましたm(_._)m 。
Commented by 虫林 at 2009-08-01 04:33 x
chochoensisさん、
有難うございます。
今回は本命は見ることができませんでしたが、環境を観察できました。
ヤナギハムシは以前にも南アルプスで見つけたことがありますので、こちらでは少なくないようです。しかし、色が橙色のものはいませんね。
Commented by 虫林 at 2009-08-01 04:34 x
非公開コメントさん、
有難うございます。
今回行ったのは後者の場所です。かなり高いところまでアプローチできたので、環境は大体把握できました。来年が楽しみです。
Commented by 虫林 at 2009-08-01 04:37 x
clossianaさん、
暖かいコメント有難うございます。
今回は環境の把握が主な目的になってしまいましたが、その意味では目的は果たされたと思います。少し危険な場所なので、来年もヨッシーさんにお付き合いいただいて再訪してみたいと思います。
Commented by 虫林 at 2009-08-01 04:40 x
fanseabさん、
有難うございます。
今回は久しぶりの冒険でしたが、何事も無く無事に帰ってこれてよかったです。何事も無理は禁物ですね。
蛹ですが、やはりミスジチョウの仲間だとすると、フタスジチョウかもしれませんね。おっしゃるとおりだと思います。御教示有難うございます。
Commented by 虫林 at 2009-08-01 04:42 x
蘭丸さん、
有難うございます。
ハンミョウの仲間はなかなか渋くて好きな虫の一群です。今回のミヤマハンミョウは妙に黒くて驚きました。
北海道旅行では多大な成果、オメデトウございました。
Commented by thecla at 2009-08-01 18:26 x
南アのタカネキマダラ探索お疲れ様でした。
タカネコウリンカ、ヤマガラシの群落は素晴らしいですね。ただ、画像を見る限りでは、単一種の群落のようで、鹿の食害の影響でなければ・・・なんて考えすぎでしょうか。
Commented by 虫林 at 2009-08-03 12:12 x
theclaさん、
コメントありがとう御座います。
このミッションはかなり難しく、さらに可能性もあまり高くないようですが、毎年1回くらいは続けて行きたいと思っています。もしよろしければ、来年当たりご一緒にいかがでしょうか?
タカネコウリンカ、ヤマガラシは単一植物の群落だったのですが、鹿害の影響は僕にはわかりません。そうでなければ良いのですが----。
by tyu-rinkazan | 2009-07-28 02:09 | Comments(12)