NATURE DIARY

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20090809 クロシジミとゴマシジミ調査 (山梨県)

Nature Diary #0272
Date: August 9th (Sunday), 2009
Place: Hokuto-shi, Yamanashi Pref.
Weather: Cloud



<茅ヶ岳ゴマを救おう!>

茅ヶ岳周辺のゴマシジミの棲息地が急速に姿を消している。

そこで、本年より山梨県北杜市の1) 茅ヶ岳中腹2) 須玉町小尾・神戸地区 の棲息地がゴマシジミ保全区域に指定され、地券者、行政、日本チョウ類保全協会、北杜市オオムラサキセンターが協力して、活発な保護活動が実施されている。なお、指定区域には、連名で 「立て看板」 が設置され、チョウの成虫、幼虫、食草などの採集行為が禁止された。

是非とも、チョウ愛好者のご理解とご協力をお願いします。

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須玉町小尾 神戸地区のゴマシジミ保全区域の立て看板

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Conservation area
Canon Power Shot G10


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§ Diary §

朝、日本チョウ類保全協会事務局の中村康弘氏を甲府駅でピックアップして、クロシジミとゴマシジミの棲息地調査に出かけた。まあ、堅苦しく「調査」といっても、チョウの種類、個体数や生態などを観察してノートに記録するのはもっぱら中村氏で、虫林はといえば、ただ撮影のみをすれば宜しいという何とも気楽なものである------申し訳ない。

中村氏とご一緒するのは、「ゴマシジミ保全事業」のために、茅ヶ岳中腹での草刈の際にワレモコウをマーキングする作業をして以来だ。


クロシジミ; Gray-pointed Pierrot

県内唯一のクロシジミのポイントに到着して歩き始めると、間もなく目的のクロシジミが飛び出した。さすがに時期が少し遅めなので、出現するクロシジミはメスが多いようだ。

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クロシジミ♀(2009年8月9日、富士山麓)

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A female of Gray-pointed Pierrot perching on the leaf.
Olympus E-3, Sigma 150mm Macro


以前はクロシジミは山梨県内に広く分布していたみたいだが、現在では富士山麓の限られた地域でしか見られない絶滅危惧種になってしまった。

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クロシジミ♀(2009年8月9日、富士山麓)

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A female of Gray-pointed Pierrot perching on the leaf/
Olympus E-3, Sigma 150mm Macro


いろいろな枝や葉を見ていた中村氏が突然声を上げた。ブッシュの脇のススキの葉でとうとうクロシジミの卵を見つけたのだ。

成虫ばかり追いかけていた虫林には、卵などは視野の外(out of 眼中)にあったので驚いた。日本産蝶類標準図鑑によればクロシジミは数個の卵を産むと記されているが、見たところ葉に産み付けられた卵の数はもっと多いようである。

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ススキの葉の卵(2009年8月9日、富士山麓)

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Eggs of Gray-pointed Pierrot lining on the panpas leaf.
Olympus E-3, ZD50mm Macro, EC-14


クロシジミは孵化するとこのアブラムシの蜜を舐め、クロオオアリの巣の中に入って成長するのだ。そのため、クロシジミの卵が産み付けられた葉を観察すると、必ずクロオオアリが徘徊していて、さらにアブラムシをそこに見ることができた。

クロオオアリのメスはそのことを学習ではなくて本能的に知っているのだから凄い。たかがチョウとナメテはいけないのだ。

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クロオオアリとアブラムシ(2009年8月9日、富士山麓)

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Olympus E-3, ZD50mm Macro, EC-14


クロシジミの卵は、ススキの他にもハギやクロマツでも見つかった。結局、クロシジミが卵を産むのに重要なのはアブラムシクロオオアリの存在のようである。

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萩に産み付けられた卵(2009年8月9日、富士山麓)

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Eggs of Gray-pointed Pierrot
Olympus E-3, ZD50mm Macro, EC-14


中村氏によれば、クロシジミの幼虫に寄生するヒメバチがあるという(クロシジミセアカヒメバチ)。

この写真のヒメバチは背が赤くないが、卵が付いていたススキの葉の周囲にじっとしていた。何という名前のヒメバチかはわからないが、とても怪しいハチである。

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ヒメバチの一種(2009年8月9日、富士山麓)

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A bee resting on the leaf
Olympus E-3, ZD50mm Macro, EC-14



ホシチャバネセセリ; Japanese Scrub Hopper

ホシチャバネセセリのポイントに移動したが、どういうわけかなかなか成虫を見つけることができなかった。不思議に思っていると、我々の前からネットを持った一人の採集者がやってきたではないか--------ウーム、なるほど、少ないわけだ。

それでも、何頭かのホシチャを見つけることができ、広角写真を撮影することが出来た。背景に偶然?写っている人物は同行の中村氏だ。

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ホシチャバネセセリ(2009年8月9日、富士山麓)

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A Japanese Scrub Hopper resting on the leaf.
Canon Power Shot G10

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ホシチャバネセセリ(2009年8月9日、富士山麓)

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A Japanese Scrub Hopper resting on the leaf.
Olympus E-3, ZD50mm Macro, EC-14



ミヤマカラスシジミ; Mera Black Hairstreak

この草原にはクロツバラの木が多く、ミヤマカラスシジミが非常に多い。このシジミチョウは比較的遅く出現するので、この時期でも新鮮な個体を見ることができた。

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吸蜜するミヤマカラスシジミ (2009年8月9日、富士山麓)

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A Mera Black Hairstreak feeding on the flower.
Olympus E-3, ZD50mm Macro, EC-14

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葉上で休むミヤマカラスシジミ (2009年8月9日、富士山麓)

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A Mera Black Hairstreak resting on the leaf.
Olympus E-3, ZD50mm Macro, EC-14

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産卵するミヤマカラスシジミ (2009年8月9日、富士山麓)

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A Mera Black Hairstreak egglying on the branch.
Olympus E-3, ZD50mm Macro, EC-14


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§ Afterword §

富士山麓でのクロシジミの観察の後、茅ヶ岳山麓にも足をのばして、保全区域の様子を見に行った。神戸地区の保全区域には「採集禁止」の立札が各道筋に立てられているにも関わらず、ネットを持たないが明らかに採集者とわかる人たちがコソコソと徘徊していたのには驚いた。同じ自然を愛するナチュラリストとして情けなくなる。

採集禁止区域での採集行為を、チョウの採集行為の是非に置き換えてよく話されるが、この両者はまったく異質なものであって比較にはならない。しかし、採集者の中には前者のようなことをする人がいることも事実なのは残念で仕方がない。さらに、ネットオークションで販売しているのを見ると憤りを禁じ得ないのだ。


良識あるナチュラリストとしてゴマの姿を楽しみましょう!
中村さん、本日はご苦労様でした。



以上、 by 虫林花山
Commented by clossiana at 2009-08-11 20:25
クロシジミとゴマシジミの保全活動、お疲れ様でした。クロシジミの卵が圧巻ですね。私も成虫以外のステージは基本的にはout of 眼中ですので見たことは当然ありません。でも、写真に写っている卵すべてが成虫にまでなれば結構な数の蝶が飛び交う筈ですね。そうはうまくいかないのが自然ですが。。。ところでアリとアブラムシの背後に見えている白い毛のようなものは何ですか?
Commented by himeoo27 at 2009-08-11 21:15
本日拝見させていただいた全ての蝶は、
卵だけでなく成虫すら初心者のヒメオオ
には、見たこと無いという意味で、
「out of 眼中」です。

まあ気長に1種ずつ見ていこうと思いました。
それまで、絶滅しないことを祈るばかりです。

調査活動ご苦労様でした!
Commented by 霧島緑 at 2009-08-11 21:27 x
山梨のクロシジミやゴマシジミは、このような対策を採らねば姿を消してしまうのも時間の問題ですね。
このような看板があれば注意もしやすいですし、生息環境保全には協力したいと思っております。
Commented by ぽんぽこ山本 at 2009-08-12 00:25 x
クロシジミの卵を観察されましたか! 迫力の有る産み方をします。時には3桁の卵塊を作ります。 図鑑の数卵産卵するは明らかに間違いです。 クロシジミの幼虫はクロオオアリのオス幼虫に化学擬態をしておりクロオオアリは自分のワーカー幼虫をほったらかしてでもオスの匂いのするクロシジミの幼虫を育ててしまう仕組みがあります。
ホシチャは少し時期が遅かったようですね!時期には、まだまだ沢山見られます。【ぽん!】
Commented by 虫林 at 2009-08-12 12:37 x
clossianaさん、
コメントありがとう御座います。
クロシジミは現在数を減らしているシジミチョウの代表選手ですが、山梨県の一部ではまだ見ることができるので嬉しく思っています。でも、これからどうなるかわからない部分もあるので気が抜けませんね。
卵は中村さんが探していて見つけてくれました。僕にはその根気がありません。
アブラムシの塊の白い毛のようなものは僕にも不明です。どなたか教えていただければ幸いです。
Commented by 虫林 at 2009-08-12 12:40 x
ヒメオオさん、
コメントありがとう御座います。
フィールドでの楽しみ方は、日とぞれぞれで自由ですが、僕も1種ずつゆっくりと撮影されるのが良いかと思います。クロシジミの生息地は山梨県でも限局していまして、やはり心配になってしまいます。
フィールドの自然を楽しむ一員として、わずかですが力になればと思っていますが。
Commented by 虫林 at 2009-08-12 12:43 x
霧島緑さん、
コメントありがとう御座います。
クロシジミもゴマシジミも非常に生息地が少なくなっていまして、このような対策が必要なのは残念ですが、仕方がありませんね。
ゴマシジミもあまりに採集者が詰め掛けるので、神戸地区では腕章の無い一般の方は立ち入り禁止になっています。しばらく、厳しい規制が必要なようです。
Commented by 虫林 at 2009-08-12 12:47 x
ぽんぽこ山本さん、
ありがとう御座います。
さすが蝶の生態学に造詣が深いぽんぽこさnですね。なるほど、クロオオアリの♂が出す物質に近いものをクロシジミの幼虫が出すのですね。クロシジミの生態はユニークでとても面白く拝聴しました。
ホシチャはやはりスレが多かったです。7月の後半くらいが最盛期かな。
また、教えて下さい。ありがとう御座いました。
Commented by maeda at 2009-08-12 16:46 x
ゴマも保全が始まったと聞いていましたが、見覚えのある看板(ヒョウモンモドキの時と似ています)を見て、保全協会が関与しているとすぐに分かりました。
採集禁止にしても、要はマナー次第なのでしょうね。寂しい状況ですね。

1頭目のミヤマカラス、白帯がほぼ消失した個体ですね。
素晴らしいです。
Commented by 虫林 at 2009-08-12 17:27 x
maedaさん、
コメントありがとう御座います。
ゴマシジミは蝶屋さんにはとても人気があるみたいで、この時期には沢山の方が採集に訪れてきます。そろそろ保護区を作って保護しなければならない時期になったと思います。看板の効果を期待しています。
ミヤマカラスのご指摘、そのとおりです。撮影したときには白帯が消失していたことに気づいていたのですが、ブログを書くときにそのことを記するのを忘れていました。さすがですね。
このような、白帯が消失する個体は東北地方以北では多いと聞いていましたが、この場所で見られるのが意外でした。
Commented by thecla at 2009-08-12 23:54 x
ゴマとクロシジミの生息調査、お疲れ様でした。
採集禁止には決してしたいわけではないのですが、今の生息状況、人が何人も歩くと畦が傷みやすい脆弱な棚田という環境からは、採集禁止というか立ち入り自体を制限しないといけない状況だと思います。
Commented by アッキーマッキー at 2009-08-13 09:15 x
虫林さん、おはようございます。
ゴマの保全活動もされてるんですね。僕も週末に時間があれば、富士山麓のゴマを観察に行こうかと思ってます。
Commented by chochoensis at 2009-08-13 20:23
虫林さん、=ゴマシジミ=の保護活動が始まったと聞いて少し安心しましたが、まだまだ保護の周知が必要なようですね・・・ぜひ頑張って欲しいものです・・・。
Commented by 虫林 at 2009-08-13 21:21 x
theclaさん、
コメント有難うございます。
立ち入り禁止の場所をまた確認してきましたが、毎日のように採集者が訪れているようです。我々が立ち寄った時にも、ネットを持たない採集者が来ていたのが心配ですね。でも、これからですから-----。
Commented by 虫林 at 2009-08-13 21:24 x
アッキーさん、
コメント有難うございます。
今年からゴマシジミは2箇所を保全地区にしていて保全して行く予定です。theclaさんもコメントで書かれていますが、採集禁止や立ち入り禁止にしたいわけではありませんが----仕方がないでしょうね。
富士山麓のゴマはこれからですね。
Commented by 虫林 at 2009-08-13 21:27 x
chochoensisさん、
コメント有難うございます。
ゴマシジミの保護はまだ始ったばかりで、これからですね。
採集者の方々も理解して協力してくれると良いのですが。
ゴマシジミは発生地域から離れるチョウではないので、見つかれば100%採集可能です。やろうとすれば、大量採集も可能ですので、是非とも保護しなければ絶滅するでしょう。
by tyu-rinkazan | 2009-08-11 07:03 | Comments(16)