NATURE DIARY

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201100707 みちのく陸中散歩:チョウセンアカシジミほか

=チョウセンアカシジミの村=
タイトルトップの写真は、チョウセンアカシジミ(チョウアカ)が棲息する村の風景です。緑がまぶしい水田の横を綺麗な小川が流れ、家の周りには満開のクリの花が咲いています。とても長閑で平和な風景ですが、ここから3.11の東日本大震災、津波の被災地(小本)までは、たった15~20㎞ほどしか離れていません。陸中のチョウアカの棲息分布は、今回の津波の被災地とかなりオーバーラップしています。

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Nature Diary #399

今週は所用で宮城県仙台市に出張しました。この時期の東北はゼフィルスシーズン最盛期ですので、足を伸ばして岩手県の陸中地方を一日だけ歩いてみました(いつも短い足を伸ばし過ぎ)。

» チョウセンアカシジミ; Coreana raphaelis The Korean Hairstreak

透明な水が流れる川沿いの道に沿って歩を進めていくと、デワノトネリコ(チョウアカの食樹)の葉の上に小さなオレンジ色のチョウがひっそりと静止しているのを見つけました-----チョウアカです。

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デワノトネリコの葉に静止するチョウセンアカシジミ♂ (岩手県岩泉町、7月7日)

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Canon EOS 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400



チョウアカの最盛期は過ぎていますので、新鮮とは言い難い状態ですがやはり綺麗です。お腹の感じからすると、多分♀なのでしょう(実は♂らしい)。陸中のチョウアカは山形産とちがい、♂♀の色彩に差がありません。

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チョウセンアカシジミ♀ (岩手県岩泉町、7月7日)

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Canon EOS 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400、外部ストロボ



上とは別の個体ですが、しばらく見ていると、ゆっくりと翅を開いてくれました。
陸中のチョウアカは明るい色をしているのが特徴です。

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半開翅するチョウセンアカシジミ♀ (岩手県岩泉町、7月7日)

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Canon EOS 60D, Sigma 24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro, ASA400




» キマダラルリツバメ; Spindasis takanonis  The Japanese Silverlines

キマダラルリツバメ(キマルリ)にまた出会うことができました。

昨年キマルリを見つけたのは、イネ科植物の広い草原でしたので、それこそ目の前でその姿を観察できました。しかし、今回はその場所には現れてくれず、近くのクズが生い茂る開けた場所で見つけました。その個体は地上から約3mほどの木の葉上に固執していて、証拠写真程度にとどまりました。

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占有行動を示すキマダラルリツバメ♂ (岩手県陸中、7月7日)

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Canon EOS 7D, EF 300mm F4L IS USM, ASA400




» ダイセンシジミ; Wagimo signatis The Alphabetical Hairstreak

ダイセンシジミ(ウラミスジシジミ)を見ることができました(10頭以上)。このダイセンシジミには翅裏の模様が異なるタイプが知られています。基本型(ケルシボルスQuercivorus型)は紋が三本の筋のように見える模様で、その模様からウラミスジという名前がついています。

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ダイセンシジミ基本型 (Quercivorus型) (岩手県滝沢村、7月7日)

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Canon EOS 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400



一方、紋が複雑に乱れるタイプはシグナトュス型(Signatus型)と呼ばれ、北海道に多く出現するようです。わかりやすくいえば、シグナトュス型は北国タイプのダイセンシジミですね。ここでは基本型とシグナトュス型が混在して同時に見られました(シグナトュス型の方が少し多い)。

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紋が乱れたダイセンシジミ(Signatus型) (岩手県滝沢村、7月7日)

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Canon EOS 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400




» アイノミドリシジミ; Chrysozephyrus brillantinus The Brilliant Hairstreak

クリソゼフの輝きはいつ見ても魅力的です。ちょうど午前7時を回ったあたりから9時ころまできっちりと占有行動を見ることができました。人間の体には24時間周期の「体内時計 biological clock」というものがありますが、他の動物、植物はては菌類までこの時計が存在することがわかっています。アイノミドリシジミのテリ張りは、この「体内時計」によるものでしょう。ちなみに虫林の「腹時計」も正確ですよ

体内時計が狂うと種々の病気になる危険が高まるといわれています。
不規則な生活の虫林もアイノミドリの占有行動を少しは見習わなくてはいけませんね。

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アイノミドリシジミ♂ (岩手県滝沢村、7月7日)

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Canon EOS 7D, EF 300mm F4L IS USM, ASA400



クリソゼフの翅の輝きは、見る角度で著しく異なります(前方からが一番輝きが強い)。でもあまりビカビカは好きではないので、ファインダーを見ながら、好みの輝きが得られる角度を探すことにしています。

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占有行動を示すアイノミドリシジミ♂ (岩手県滝沢村、7月7日)

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Canon EOS 7D, EF 300mm F4L IS USM, ASA400

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占有行動を示すアイノミドリシジミ♂ (岩手県滝沢村、7月7日)

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Canon EOS 7D, EF 300mm F4L IS USM, ASA400



アイノミドリの展翅標本を室内でみると、例外なく金緑色に輝きます。でも野外の晴れた日中の自然光下では、種々の程度に青色が入り、ファボのように青色になることも少なくありません。これは光源(色温度)の問題が大きいのかもしれませんね。

下の写真は外部ストロボ光で撮影したものですが、飛翔している個体の翅表がとても綺麗な金緑色になりました。次回は静止してている個体にストロボ光を当てて撮影してみようと思います。

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飛翔するアイノミドリシジミ♂ (岩手県滝沢村、7月7日)

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Canon EOS 60D, Sigma 10mm Fisheye, ASA800, 外部ストロボ、Trimming (+)



飛翔写真を撮影していたら、朝日が偶然に写りこんでしまいました。意図的に撮影したのではないので少し恥ずかしいですが、朝日の中で飛び交うアイノミドリの雰囲気が良くわかるので掲載してみました。

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朝日の中で飛ぶアイノミドリシジミ♂ (岩手県滝沢村、7月7日)

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Canon EOS 60D, Sigma 10mm Fisheye, ASA800, 外部ストロボ、Trimming (+)




» ウラジロミドリシジミ; Favonius saphirinus The Saphirinus Green Hairstreak

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ウラジロミドリシジミ♂ (岩手県滝沢村、7月7日)

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Canon EOS 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400




» ミズイロオナガシジミ; Antigius attilia, The Black-banded Hairstreak

ミズイロオナガの翅裏の模様は多様です。でも、この個体ほど紋が減少した個体は少ないのではないでしょうか。まるで別種のように見えますね。

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黒紋が減少したミズイロオナガシジミ (岩手県滝沢村、7月7日)

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Canon EOS 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400




» キマダラモドキ; Kirinia fentoni , The Pseudo-Labyrinth

キマルリのポイントの林の中の小道を歩くと、キマダラモドキが足元から飛び立ちました。結構敏感でなかなか近寄らせてもらえませんが、なんとか撮影することができました。

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キマダラモドキ (岩手県岩泉、7月7日)

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Canon EOS 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400




§ Afterword §

最近、とある高校生から被災地の復興活動のシンボルとして、以前に撮影した三陸のチョウセンアカシジミの写真を使用したいという匿名の申し出がありました。もちろん二つ返事でOKしたことはいうまでもありません。その復興活動の詳しい内容は説明されていなかったのですが、とにかく僕の写真が被災地復興のために少しでもお役にたつのであればこれほど嬉しいことはありません。

この時期の岩手県のチョウたちはとても魅力的で、わざわざ車でいった甲斐があったというものです



以上、 by 虫林花山
Commented by 蝶山人 at 2011-07-10 20:45 x
素晴らしい写真の連続で
目を見張ります。
チョウアカ開翅や陸中キマでも難易度高いのに
シグナータも個体密度低い種ですから。
アイノの翅の色は露出難しいのに
飛翔も含めて見事な表現ですね。
Commented by furu at 2011-07-10 21:40 x
主役級が次から次へと現れて、東北地方の生物層の豊かさがよく判りました。
ダイセンが10頭以上とは驚きです。
Commented by 虫林 at 2011-07-11 06:28 x
蝶山人さん、
有難うございます。東北のゼフシーズンは関東とはかなり異なる種類が多くて楽しいですね。撮影し甲斐があります。もう少しゆっくりと撮影したいところですが、時間的な余裕がないのが残念です。
山梨からは500km以上ですので、車の運転は疲れました。
Commented by 虫林 at 2011-07-11 06:31 x
furuさん、
有難うございました。今年はどういうわけか早朝にたたくとダイセンが沢山出てきました。一本の木で5頭出てきた時もあります。当たり年なのかそれとも当たり前の個体数なのか良く分かりません。
東北の蝶たちはたしかに多様で豊富でした。
Commented by chochoensis at 2011-07-11 07:06 x
虫林さん、みちのくのチョウ・・・彼の地に出掛けたのは今から50年前・・・懐かしく拝見しました。やっと、ここまでパソコンが打てるようになりました、毎日は無理かもしれませんが、=美しい写真=を拝見しに来たいと思っています・・・。
Commented by ダンダラ at 2011-07-11 08:18 x
忙しい中を素晴らしいファイトですね。
8日に所用で甲府に行って、近くの山を一日飛び歩きましたが、ぐったり疲れました。
今年は疲れが残る感じで・・年かなあ。
ウラミスジシジミのSignatus型はあこがれますね。
素晴らしいです。
それに、アイノミドリの卍飛翔、電信柱があって撮影した場所の雰囲気もよくわかり、さらにアイノの色もよく出ていて素晴らしいですね。こんな感じの写真が撮りたいものです。
Commented by 虫林 at 2011-07-11 12:59 x
chochoensisさん、
回復されていますね。良かったです。
chochoensisさんが陸中を訪ねたのは、50年前なのですね。その頃は、新幹線も無く、高速道路も出来ていなかったでしょうから、アプローチはかなり大変だったと思います。でも、努力は何らかの成果になって報われたでしょう。今回、訪れたチョウアカの場所は以前はかなり沢山の個体がいたようですが、現在では観光地になってなかなか見れなくなったと現地の方が言っていました。
見ていただいて、ご指導いただけますことをお願い申しあげます。
Commented by 虫林 at 2011-07-11 13:07 x
ダンダラさん、
有難う御座います。やはり僕も最近では、頑張った後は少し疲れが残ります。
とくに今年は暑いから夏ばて気味です。
この時期の甲府近郊はとても暑くて大変ですね。
熱中症にはくれぐれも注意して下さいね。
ウラミスジはかなりの個体が発生していて、下草にも朝に何頭も
静止していました。Signatus型は50%以上を占めると思います。
アイノミドリは、水田に面したハヤシの縁で、長さ200mくらい
の場所の所々で卍飛翔が行われていました。
まだ出始めのようで、全て新鮮な個体だったのが嬉しかったです。
今年はアイノやメスアカのメスの撮影をしてみたいと思っています。
Commented by naoggio at 2011-07-11 16:07 x
いつものことながら素敵な散歩道を歩いておいでです。
アイノミドリの光沢は本当にきれいですね。
飛翔も見事という他ありません。
撮影した蝶の写真が復興の力になるなんて素晴らしいです。やはり虫林さんにはなにか巡り合わせを引き寄せて行く力のようなものが備わっていると思えてなりません。
Commented by kmkurobe at 2011-07-11 19:00 x
アイノの飛翔良い色が出ていますね。昨日アイノを撮影できましたが、個体数の割にイマイチの画像ばかりでした。
ウラミスジのシグナータは帯広で採集したとき全てがそうだったので感激したのを覚えています。
Commented by ヘムレン at 2011-07-11 20:21 x
さすが・・東北!!ゼフの宝庫ですね。
前に、友人に「やっと、ウラジロ撮った!」と報告したら、青森の親戚のとこにはウラジロが一番多くて、もう見飽きた・・・なんて(><)。。
シグナトュス型・・って言うのですね(^^;)。。ずっと、シグナタとかシグナータって呼んでいました。呼び方はともかく、見に行きたいです(^^)。。
チョウアカもいまだ未見だし・・・(^^;)。。
Commented at 2011-07-11 22:31 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by dragonbutter at 2011-07-12 23:03
珠玉の写真ばかりでうっとりと拝見しました。
岩手はさすがに行く機会がなかなか見つかりませんが、いつか訪れたいと思います。随分昔の秋に早池峰山に登って以来でしょうか。
Commented by 虫林 at 2011-07-13 07:14 x
naoggioさん、
有難うございます。
アイノミドリなどクリソゼフの翅の輝きはやはり魅力的ですが、写真にそれを残すのはなかなか難しいです。今回は、テリ張が目線よりも下で行われる場所だったので、少し楽でした。なかなかそういうポイントって少ないですね。
チョウセンアカの棲息地のほとんどは、被災地にかさなっていて、チョウアカをそのシンボルにするというアイデアはなかなか良さそうに見えます。
Commented by 虫林 at 2011-07-13 07:17 x
kmkurobeさん、
アイノミドリは見ることは楽なのですが、それを撮影するのは容易ではありませんね。白馬あたりだと良い場所があるので羨ましく思います。
ウラミスジはそういうわけか個体数はかなりいて、両タイプが混ざっていました。6:4くらいで、シグナータ型がおおかったように思います。
Commented by 虫林 at 2011-07-13 07:22 x
ヘムレンさん、
カシワ林はかなりあるのですが、なかなかキタアカ、ハヤシ、ウラジロはいません。東北も甘くはないようです。でも、知らないだけで、かなり沢山いる場所があるのでしょうね。今回のチョウアカは昔からの産地ですが、観光地化したために現在ではかなり数が減ってしまったようです。見ることができて嬉しかったです。
Commented by 虫林 at 2011-07-13 07:25 x
非公開コメントさん、
静止している個体と開翅している個体は、ご指摘のように別の個体です。静止している個体はオスでしたか、ウーム、なるほどさすがです。後ほど修正しておきます。有難うございました。
ミズイロアナガの黒紋減少したのは面白いでしょ!なにか別の種類のような雰囲気がありますね。
Commented by 虫林 at 2011-07-13 07:30 x
dragonbutterさん、
この時期の岩手は独特の蝶が多くて良いですよ。でも、広いのでポイントが絞りきれない悩みがあります。早池峰山は北上山地の主峰ですね。この北上山地が生物学的に独特の種類が多くて興味ある場所だと思われます。トンボなども面白い種類がいるのではないでしょうか。
Commented by banyan10 at 2011-07-15 16:52
信州でこんなアイノの開翅を撮りたかったのですが、環境が変わって無理でした。本当に良い色で飛翔も見事ですね。
ウラミスジのシグナータもいつかは見たいところです。やはり東北、北海道へ行かないと難しいようですね。
Commented by 虫林 at 2011-07-16 00:28 x
banyanさん、
アイノの開翅を撮影できるポイントはなかなか少ないですね。
信州では残念でしたが、また時期を見て行かれれば、良いチャンスもあると思います。あのポイントは下草に降りていれば最高ですよね。
ウラミスジのシグナータは東北ではそれほど稀ではありませんし、北海道ではほとんどシグナータですからいつかチャレンジされると良いですよ。
by tyu-rinkazan | 2011-07-10 20:00 | ▣チョウセンアカシジミ | Comments(20)