NATURE DIARY

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20070113 ゼフ越冬卵シリーズ4 (ウラミスジ、クロミドリ)

今日は朝から晴れている。
外に出てみると、甲斐駒や白根三山、鳳凰山などの南アルプスが、青空をバックにくっきりと映えて見える。
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。。甲斐駒ケ岳 (山梨県北杜市, 2007-Jan-14) 北杜市の丘からは南アルプスが一望できる。

。。。Pentax K100D, Pentax D-FA 100mm MACRO, ASA 200


葉の上に降りた霜がとても綺麗だ、日があたるまでの芸術品-----。
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。。霜が降りた葉 (山梨県北杜市, 2007-Jan-14)

。。。Pentax K100D, Pentax D-FA 100mm MACRO, ASA 200



まず、近くのクヌギ林によった。
ここは大きな台場クヌギがあるところで、南斜面にある。到着してまもなく、クヌギの枝上で仲良く越冬していたテントウムシを2頭発見した。この2頭は初めじっとしていたのだが、しばらくすると動き出した。

ナミテントウと思っていたが、どうもそれよりも大きく、また鞘翅の辺縁がカメノコテントウのように平たくなっている。
図鑑で調べてみると、どうやらアカボシテントウだ。
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。。アカボシテントウ (山梨県敷島町, 2007-Jan-14)

。。。Ricoh Caplio GX8, Fit gyorome-8, ASA 64, Panasonic PE28S

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。。アカボシテントウ (山梨県敷島町, 2007-Jan-14)

。。。Ricoh Caplio GX8, Fit gyorome-8, ASA 64, Panasonic PE28S



先週、見つけた新しい伐採跡にまたやってきた。
下の写真のように、枝を全て刈り、クヌギの幹だけを残している。この伐採方法は甲州地方の特徴みたいで、これを繰り返すことで、有名な台場クヌギなる。
昔は伐枝を炭焼きにして燃料としたらしいが、現在はシイタケのホダ木となるのだろう。
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。。。。。。。。。。。。。。伐枝されたクヌギの林 (山梨県北杜市, 2007-Jan-14)

。。。。。。。。。。。。。。。Pentax K100D, Pentax D-FA 100mm MACRO, ASA 200



先週と同様に道路脇に積まれた伐採枝を見ていくことにした。
宝物はなかなかみつからなかったが、しばらくして、越冬芽の基部にやっとゼフの越冬卵を認めた。見つけた越冬卵はアイノミドリよりも明らかに小さく、多分、Favoniusの仲間のものだと思われる。だとすると、最も可能性が高いのがジョウザンミドリシジミの越冬卵だと思う。注:実体顕微鏡写真からジョウザンミドリシジミではなく、ウラミスジシジミの越冬卵であることが判明した。コメントを頂いた方々に感謝します。
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。。休眠芽基部のウラミスジシジミの越冬卵(陰に1つあるので計3個)(山梨県北杜市, 2007-Jan-14)

。。。Ricoh Caplio GX8, Fit gyorome-8, ASA 64, Panasonic PE28S



驚いたことに、ウラミスジシジミとアイノミドリシジミの越冬卵が同じ休眠芽に産まれていたのを発見した。
同じ食樹の蝶ではこのようなことがあるのだろうか?

こうして、比較してみると、アイノミドリの越冬卵はウラミスジのものより大きくて立派であることがわかる。卵の大きさは卵黄の量を意味すると思うが、興味深いものだ。
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。。同じ休眠芽基部に産み付けられたアイノミドリとウラミスジの越冬卵 (山梨県北杜市, 2007-Jan-14)

。。。Ricoh Caplio GX8, Fit gyorome-8, ASA 64, Panasonic PE28S



次に、クヌギの伐採枝を観察してみることにした。
クヌギの枝ではミズイロオナガシジミの越冬卵とともに、Favoniusの仲間の越冬卵を発見した。この卵は小型で、表面の突起が短い。オオミドリやエゾミドリもクヌギに産卵するらしいが、休眠芽の基部には産まないらしい。

アカシジミやウラナミアカシジミの越冬卵も可能性があると思うが、鱗毛などもはっきりしない。
この場所はクロミドリシジミの記録もあるみたいなので、クロミドリシジミの越冬卵と考えるのが妥当だろう。よく分からないが、一応、クロミドリとしておくことにする。
注:実体顕微鏡写真から、クロミドリシジミの越冬卵であるとみなされた。
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。。クヌギの休眠芽基部に産み付けられたクロミドリシジミの越冬卵 (山梨県北杜市, 2007-Jan-14)

。。。Ricoh Caplio GX8, Fit gyorome-8, ASA 64, Panasonic PE28S

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。。クロミドリシジミの越冬卵の拡大 (山梨県北杜市, 2007-Jan-14)

。。。Ricoh Caplio GX8, Fit gyorome-8, ASA 64, Panasonic PE28S



さらに、ミズイロオナガシジミの越冬卵も見つけたので、一応掲載しておく。
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。。ミズイロオナガシジミの越冬卵 (山梨県北杜市, 2007-Jan-14)

。。。Ricoh Caplio GX8, Fit gyorome-8, ASA 64, Panasonic PE28S


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<実体顕微鏡写真の所見>
突起は短く、クロミドリの越冬卵で矛盾しないものと思われました。
何となく嬉しい----。
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。。クロミドリシジミの越冬卵の実体顕微鏡写真

。。


当初、ジョウザンミドリシジミとしたが、実体顕微鏡で観察すると、表面の突起はさほど長くはないようですが、突起の先が鋭く、鋭角にとがっているので、ウラミスジシジミの越冬卵と考えました。
「青森の蝶たち」の以前の記事に、ze_ph さんが撮影したとても素晴らしいジョウザンミドリの越冬卵の拡大写真が載せられています。これをみるとジョウザンの越冬卵も針状突起を持っていますが、ウラミスジの卵はその針状突起がさらに鋭いことがわかります。
上の「青森の蝶たち」をクリックすると見ることができますので-----是非参照してみてください。
ze_ph さん、素晴らしい写真ありがとう。
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。。ウラミスジシジミの越冬卵の実体顕微鏡写真

。。

突起部の拡大。
突起の先が針状にとがっている。
このように針状になるのはウラミスジシジミの越冬卵の特徴とされています。
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。。ウラミスジシジミの越冬卵の実体顕微鏡写真(突起部拡大)

。。


参考までアイノミドリシジミの実体顕微鏡写真も載せておく。
上の写真と比較しても、突起の形態が著しく異なることがわかりますね。
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。。アイノミドリシジミの越冬卵の実体顕微鏡写真

。。

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虫林の知る若手研究者にT大のKさんがいた。KさんはNatureという科学雑誌に論文を立て続けに掲載したので、何てすごい奴だと感心していた。しかし、彼の論文が、外国の研究者から虚偽のデータを含んでいるという疑いがかけられた。

T大の調査委員会は1年間の調査の結果、最終的に彼をクロと認定した。そのため、Kさんと主任教授のT先生が懲戒免職となったのである。
-------学問の世界は厳しいのだ。

若手研究者は何とか良い雑誌(Impact Factorの高い雑誌)に自分の論文を載せようと日夜努力している。高いImpact Factorの雑誌に自分の論文を載せることは、研究者の勲章でもあるし、励みにもなる。また将来ステップアップするための重要な条件にもなるのである。

しかし、Kさんには科学者としてもっとも大事な「正直さ」が欠けていたのだ。
---------残念である。
Commented by maeda at 2007-01-14 17:51 x
ゼフ越冬卵のシリーズ、いつも楽しみです。
あの卵はおそらくクロミドリなのでしょうね。
台場クヌギの原型も初めて見られました。こんな風に切って出来るとは。

蝶などの昆虫の世界も自然科学で、みんなが見たこと見つけたこと、試したことを公表し合いながらお互いの知識を深めていると思います。
医学も同じであるはずですが、あまりの結果主義に問題もあるのでしょうね、素直に取り組む余裕がないのかもしれません。でも、事実であることが一番大事なことと思います。
Commented by cactuss at 2007-01-14 19:19
gyorome-8が活躍していますね。なかなか鮮明に撮れるものですね。
クヌギの休眠芽にあった卵はクロミドリシジミの可能性が高いですね。
アカシジミやウラナミアカシジミの卵はゴミが付いていますので、写真の様なきれいなものはないと思います。
Commented by kenken at 2007-01-14 19:35 x
越冬卵の撮影、素晴らしい出来映えです。
クロミドリとされた卵は扁平な感じで、見慣れていないので、きっとそうなんでしょう。
台場クヌギのある風景はなんだか懐かしい感じがします。最近は里山の利用が少なくなって、なかなかこんなシーンを見かけません。
ところで、ダイセンらしき卵は見かけませんでしたか?

事実を事実として記録・発表することは単純なことですが、難しいことですね。人間、やはり愚直に生きていきたいもんです。
Commented by thecla at 2007-01-14 21:01 x
ゼフ越冬卵シリーズ楽しませていただいています。
昔、勝沼あたりで伐採地を探して卵探索をしたことを思い出しました。そのとき、一番多かったのはダイセンだったかな。

最近、「誠実さ」の欠如、あるいは「誠実さ」の対象の誤り(例えば、顧客ではなく、内部組織を優先)が目立つような気がします。
正直だとか誠実であることが生きにくい世の中になってきているのかもしれませんが、誠実でありたいと願います。
Commented by 虫林 at 2007-01-14 22:26 x
maedaさん、
クロミドリシジミは成虫もまだ見た事が無い蝶です。
この越冬卵がクロミドリシジミのものかどうか、もう少し調べてみます。

若い研究者達は、その研究室内の研究者や他の施設の研究者と論文作成の競争にさらされています。その中でおっしゃるように余裕が無くなり、正常な判断ができなくなったのだと思います。
Commented by 虫林 at 2007-01-14 22:30 x
cactussさん、
クロミドリの可能性がやはり高いですか。
まだ見た事が無いので、もう少し形態を観察してみます。
おっしゃる通り、アカシジミやウラナミアカシジミの越冬卵はゴミや鱗毛が付着していますね。また越冬芽の基部というのも合わないですよね。
Commented by 虫林 at 2007-01-14 22:35 x
kenkenさん、
山梨ではこのような伐採が他でも見られます。
台場クヌギの林も手入れしないと維持できませんね。

競争のプレッシャーの中で、事実をそのまま出す事に価値があるのだと思います。勇気を持って、愚直に生きて行きたいものです。
Commented by 虫林 at 2007-01-14 22:42 x
theclaさん、
ダイセンシジミという呼び方にキャリアを感じます(笑)。
伐採地のあたりではダイセンを見た事がありませんが、
いても全く不思議ではありませんね。これから探してみます。

確かに誠実、正直に生きることは簡単ではありませんよね。
しかし、非常に大事な事だと思います。
Commented by fanseab at 2007-01-14 22:44
gyoromeによる越冬卵シリーズ、完成の域に達して、虫林さんの18番ですね。いずれも素晴らしいです。大好きな甲斐駒画像とあわせて、思わず越冬卵探しに行きたくなる・・・そんな素敵な画像の連発です。
4枚目のアカボシテントウの写真も雰囲気が出ていて好きですね。
Commented by KAZ at 2007-01-14 22:49 x
こんばんは。
越冬卵の写真、どんどん増えますね。
だんだん写真のほうも、より美しくなってきた様な感じです。
春からは飼育でしょうか?、世話が大変ですね。

あまりに昔の事で記憶が薄くなってますが、クヌギではウラミスジも多かった様に記憶しています。
Commented by 虫林 at 2007-01-14 23:37 x
fanseabさん、
有難うございます。
お蔭様で、gyoromeでの越冬卵の撮影は軌道に乗ってきた
ような気がしています。アカボシテントウの写真は、これだけ
拡大しているにも関わらず、後ろの背景が良く写っているので
嬉しくなりました。
Commented by 虫林 at 2007-01-14 23:49 x
KAZさん、
kenkenさんやtheclaさんからもウラミスジの話題が出てきましたので、ジョウザンミドリかウラミスジかの鑑別が少し心配になってきましたよ。
確かにウラミスジもミズナラに卵を産みますね。
幼虫図鑑では、ジョウザンの卵は1個時に2個が休眠芽の基部に産まれるとありますが、この時の卵は実は陰で見えないのも含めて、その枝に3個だったのです。アイノと同じ場所のものも2個で複数でした。
ウラミスジであれば、複数でも構わないみたいです。

うーむ、これはウラミスジの可能性も出てきてしまったかな。
困ったデスね。
とにかく、皆さん有難うございます。
もっと拡大して観察してみますね。


Commented by chochoensis at 2007-01-15 07:14 x
虫林さん、越冬卵シリーズ、楽しませてもらっています。ありがとうございます。私にはコメントする知識も無いので、皆さんの豊富な知識に、唯驚いています。gyoromeレンズの威力も知りました、ありがとうございます。
Commented by 虫林 at 2007-01-15 12:45 x
chochoensisさん、
いや~、やっぱり、越冬卵は難しいです--------。
ジョウザンミドリシジミのものと思ったものは、ジョウザンではなくて、実体顕微鏡写真で観察するとウラミスジシジミでした。また、クロミドリシジミの越冬卵は、クロミドリでよさそうです。
今回は、実体顕微鏡写真が役に立ちました。
Commented by banyan10 at 2007-01-15 20:47
今度はウラミスジにクロミドリですか。すごいですね。
gyoromeの写真も一番良く撮れているのではないでしょうか。
そういえば、山梨ではジョウザンを見たり、ポイントを聞いた記憶がないですね。埼玉でもほとんどいないそうですが、群馬や栃木では一番観察しやすいようなので不思議です。
Commented by kasya5 at 2007-01-15 21:49
ゼフの越冬卵の写真も素晴らしいけど2枚目の霜が降りた葉の写真に惹かれました。
しかしgyoromeで撮すと小さな卵もこんなに大きく撮せるのですね。
Commented by 虫林 at 2007-01-15 22:19 x
banyanさん、
お蔭様ですこしづつgyoromeも慣れてきました。
山梨でジョウザンは私も撮影した事がありません。
はやり稀なのでしょうかね。
今年の夏の課題が一つ増えました。
有難うございました。
Commented by 虫林 at 2007-01-15 22:23 x
mamoさん、
日が当たるまでの僅かな時間帯でみられるところがいいですね。
gyoromeは画質は?ですが、非常に近くよれるのと、驚異的な
被写界深度なので、おもしろい写真になります。
色々試して楽しんでします。
Commented by 6422j-nozomu2 at 2007-01-15 23:41
この時期私は鳥の方に浮気をしておりますが、虫林さん流石でございます。実体顕微鏡写真を駆使して、見事にゼフ卵の撮影並びに同定をなさっていらっしゃる。1日で4種類とは効果的ですね。それから、背伸びしないで、人間正直に生きるのが一番ですね。
Commented by 霧島緑 at 2007-01-16 00:44 x
このポイントは、探索を重ねる度に新しい発見をもたらしてくれる正に宝の山だったのですね。
それにしても、デジカメの拡大写真にとどまらず、顕微鏡での確認作業など、虫林さんならではですね。
これらの卵が救われることも期待します。
Commented by 虫林 at 2007-01-16 07:52 x
nozomuさん、
ありがとうございます。
鳥のほうは見ることは好きなのですが、写真は難しいのでまだ躊躇しています。
ゼフの越冬卵の同定は難しいので、仕方なく実体顕微鏡を持ち出してしまいました。でも中々やり始めてみると面白いものなのですね。
もう少し続けてみたいと思います。
Commented by 虫林 at 2007-01-16 08:45 x
霧島緑さん
そうですね、たまたまこんな場所を見つけたので、ラッキーでした。
越冬卵は初心者には鑑別が難しいので、実体顕微鏡まで持ち出してしまいました。
霧島緑さんには色々と教えてもらわなくてなりません。
どうぞご指導よろしくお願いします。
Commented by nomusan at 2007-01-16 21:07 x
すっかり出遅れてしまいました(汗)。いや、素晴らしいです。ため息がでます。それにしても一つ一つの卵が、陳腐な言い方しかできませんが、何と美しいものでしょう。神秘的です。いや、これはエエもん見せていただきました。個人的にはアイノとウラミスジが混在してるってのが面白かったですね。
Commented by 虫林 at 2007-01-16 23:56 x
nomusanさん、
コメント有難うございます。
新しい伐採後でゼフの卵を楽して探しています。
越冬卵て面白い形をしていて飽きないですね。
by tyu-rinkazan | 2007-01-14 17:15 | ▣クロミドリシジミ | Comments(24)