NATURE DIARY

tyurin.exblog.jp

20070527 里山の甲虫達:オトシブミ(落とし文)ほか (山梨県甲府市)

§オトシブミ;落とし文§

甲虫の名前の中で、「オトシブミ」という名前は最も好きなものの一つだ。そもそもオトシブミとは「落とし文」の意味で、密かに想いを寄せる女性の前に、恋文を落としておくという昔の慣習からきている。この虫がつくる葉っぱの揺り篭が、昔の文の形態に似ていることからきた名前だろうと思われる。この和名の命名者に、虫林は心からの賛辞を送りたい。

まあ、「落とし文」という風習にこめられた心情は、今の若者達でも理解するのは決して難しいことではないと思う。--------とそうは思うが、現代の社会ではそのようなことをしてはならない。世知辛い今の時代で、好きな彼女の前で落とし文でもしようものなら、「ゴミをかってに捨てないでください!」などと注意されるか、ストーカーとして交番に届けられるかどちらかだろうね。


§揺り篭つくりの名人達§

甲府市北部の山の林道脇で、花の終わったサクラ類の木の葉をみると、そこにゴマダラオトシブミを見つけた。このオトシブミは羽がゴマダラ模様で特徴的なので、同定は簡単だ。よく見ると、葉をカッティングしている最中のようで忙しそうだ。
d0090322_18262262.jpg
。。葉を口で切っているゴマダラオトシブミ Paroplapoderus pardalis

。。。.Ricoh GX-8, gyrome-8, ASA 100
。。。.(2007-May-27, Kofu/Yamanashi)


ゴマダラオトシブミはクヌギやナラの葉を巻くということが図鑑に記載されている。
するとサクラの葉を巻いてはならないのかというと、そうでもないらしい。現に巻いているのだから、認めざるを得ないのである。 Seeing is believing.である。

そこで、しばらくゴマダラオトシブミが葉っぱの揺り篭をつくる過程を静かに見学することにした。全工程で20-30分ほどだ。当日は風が強くて、さすがの名人も苦労していたように思う。
揺り篭つくりの過程は4つの工程からなります(以下、写真の番号順)

①口で葉をカッティングする。
②切った葉を入念に折る。
③葉の先の方に移動して巻き始める。
(当日は風が強くて折った葉がまた拡がってしまい、1度やり直しを余儀なくされた)
④器用に巻き上がって完成。


感想を一言でいうと、オトシブミは凄い力持ち!
d0090322_18265519.jpg
。。ゴマダラオトシブミが葉を巻く過程

。。。 Procedure of making cradle by Paroplapoderus pardalis
。。。.Pentax K10D, Pentax D-FA 100mm Macro, ASA 100
。。。.(2007-May-27, Kofu/Yamanashi)


オトシブミ類の中の“美麗種 ベニホシハマキチョッキリ”を発見した。
このチョッキリは金緑色に紅をまじえて輝く翅を有する、この虫を見ていると、宝石のようなという表現があながち大げさなものではないということがわかる。少なくとも虫屋(特に甲虫屋)にとっては、宝石以上の魅力を有していることに間違いない。

べニホシハマキチョッキリは、以前は独立種として扱われてきたが、現在では、ドロハマキチョッキリの1変種とみなされているようである。つまりドロハマキチョッキリ中で、金緑色の鞘翅に赤色の発達した個体という意味合いになるのだろう。
d0090322_1829861.jpg
。。美麗種:べニホシ(ドロ)ハマキチョッキリ Byctiscus princeps

。。。 Byctiscus princes looking like a jewel
。。。.Pentax K10D, Pentax D-FA 100mm Macro, ASA 100
。。。.(2007-May-27, Kofu/Yamanashi)


キイチゴの葉上で、「オトシブミ」を見つけた。せっかくなので、虫の目レンズで撮影してみた。オトシブミなどの甲虫は、動きが鈍いので撮影が楽と思うかもしれないが、実際はそう甘くは無い。彼らは結構敏感で、人の影を見ただけで、葉からポロリと落ちてしまうことが多い。そこで、彼らを見つけた場合は、先ず100mm以上の長玉で撮影してから、広角系のレンズで撮影したほうが良さそうだ。

この時のオトシブミは、珍しく非常に鈍感で、カメラを全く気にしなかった。そこで、ゆっくりとgyorome撮影ができたのである。
d0090322_18292167.jpg
。。オトシブミ Apoderus jekelii

。。。 Apoderus jekelii resting on the leaf
。。。.Ricoh Caplio GX-8, Gyorome-8, ASA 100
。。。.(2007-May-27, Kofu/Yamanashi)


クローズアップすることで、今まで気がつかなかった昆虫達の表情がうかがい知れるようになる。昆虫の顔を前面から撮影することは、なかなかうまく行かないことが多いが、今回のオトシブミ君は非常にフレンドリーなので助かった。何しろ虫林には「撮気」はあっても「殺気」は皆無なのだから。
d0090322_1829346.jpg
。。オトシブミ Apoderus jekelii

。。。 Apoderus jekelii resting on the leaf
。。。.Ricoh Caplio GX-8, Gyorome-8, ASA 100
。。。.(2007-May-27, Kofu/Yamanashi)

**************************************************

クヌギの葉をゆっくりとみると、美しいキイロテントウを見つけた。このテントウムシは明るい黄色の翅をもち、美しくあでやかな雰囲気がある。クヌギの葉を見渡してみると、あちらこちらで、このテントウムシを見ることができた。
d0090322_18294788.jpg
。。キイロテントウ Illeis koebelei

。。。 Illeis koebelei resting on the leaf
。。。.Ricoh Caplio GX-8, Gyorome-8, ASA 100
。。。.(2007-May-27, Kofu/Yamanashi)


草原にはカタモンコガネが忙しそうに飛び回っていた。
d0090322_18295865.jpg
。。カタモンコガネ Blitopertha conspurcata

。。。 Blitopertha conspurcata resting on the grass
。。。.Pentax K10D, Pentax D-FA 100mm, ASA100
。。。.(2007-May-27, Kofu/Yamanashi)

d0090322_18309100.jpg
。。カタモンコガネ Blitopertha conspurcata

。。。 Illeis koebelei resting on the leaf
。。。.Ricoh Caplio GX-8, Gyorome-8, ASA 100
。。。.(2007-May-27, Kofu/Yamanashi)


ノバラの花を見ると、セスジヒメハナカミキリが訪れていた。小さなハナカミキリで、この仲間は種類が多く、ピドニアだけの愛好者もいるくらいだ。
d0090322_18302081.jpg
。。セスジヒメハナカミキリ Pidonia amentata

。。。 Pidonia amentata resting on the grass
。。。.Pentax K10D, Pentax D-FA 100mm, ASA100
。。。.(2007-May-27, Kofu/Yamanashi)


小枝上で交尾しているヒナルリハナカミキリを見つけた。このハナカミキリはカミキリムシらしくないカミキリムシで、この甲虫をはじめてみて、カミキリムシの1種であると看破できる人は天才だろうと思う。
d0090322_18303367.jpg
。。ヒナルリハナカミキリ Acmaeops minuta

。。。 Mating of Acmaeops minuta
。。。.Ricoh GR-D, ASA 100, Flash(+)
。。。.(2007-May-27, Kofu/Yamanashi)

**************************************************

本日は種々のトンボも見ることができた。虫林はサナエトンボをみると、初夏になったことが認識できる。ところが、このサナエトンボの仲間は非常に良く似ていて、なかなか同定が難しそうなのだ。一応、図鑑で絵合わせをして、名前を付けてみたが自信は無い。
d0090322_1830479.jpg
。。クロサナエ♂Davidius fujiama

。。。 Davidius fujiama resting on the leaf
。。。.Pentax K10D, Tamron 70-300mm ASA 100
。。。.(2007-May-27, Kofu/Yamanashi)

d0090322_18412560.jpg
。。腹部を上げた特徴的なポーズを示すクロサナエ♀Davidius fujiama

。。。 Davidius fujiama resting on the leaf
。。。.Pentax K10D, Tamron 70-300mm ASA 100
。。。.(2007-May-27, Kofu/Yamanashi)

d0090322_18414181.jpg
。。腹部を上げた特徴的なポーズを示すクロサナエ♀Davidius fujiama

。。。 Davidius fujiama resting on the leaf
。。。.Pentax K10D, Tamron 70-300mm ASA 100
。。。.(2007-May-27, Kofu/Yamanashi)


この時期にニシカワトンボを見るために必ず立ち寄る場所がある。そこはスギの林に囲まれた小渓流で、行く度にかわいい姿を見せてくれた。しかし、本日立ち寄ってビックリした。というのも、スギの林が伐採されて、そこは開けてしまったのだ。
カワトンボの数は非常に少なくなり、本日見かけたのは、写真の1匹が唯一のものだった。
d0090322_18415439.jpg
。。ニシカワトンボ

。。。 The dragonfly resting on the leaf
。。。.Pentax K10D, Tamron 70-300mm ASA 100
。。。.(2007-May-27, Kofu/Yamanashi)

**************************************************

良い季節になったものである。小生のように散歩することが主目的のものにとって、この季節は1年中で最も良い時期かも知れない。

是非とも野外に出て、この素晴らしい季節を楽しもう!
Commented by kenken at 2007-05-28 21:06 x
オトシブミは刺激を与えるとぽろっと葉から落ちるのに、うまくgyoromeでここまで迫れたもんですねぇ~
えへへ・・・実はもともと甲虫屋だったので、とても楽しく、興味深い画像です。小型のハナカミキリの仲間は渋くていいねぇ。大好きです。
トンボ・・・こいつはちと疎くて、いろいろ勉強させてもらってますです。
Commented by kmkurobe at 2007-05-28 21:37
うーん70-300ミリでこのオトシブミのアップはスゴイですね。どの写真も甲虫はこうあればという意図が感じられます。さすが甲虫屋いやいや恐れ入りました。
Commented by 虫林 at 2007-05-28 22:54 x
kenkenさん、
元甲虫屋としては、チョウを探しながらも、傍らの甲虫達にも反応して
してしまいます。とくにカミキリムシは好きなものですから、いつも目で
追っているのですが、なかなか本気にならないと見つからないもので
すね。トンボは好きですが、サナエトンボは難しくてね~。
Commented by 虫林 at 2007-05-28 22:57 x
kmkurobeさん、
オトシブミや甲虫達はさすがに70-300mmレンズは常用にはして
いません。やはり100mmマクロが慣れていて、つかっていて安心
感がありますね。最近は甲虫屋というよりは元甲虫屋といった方が
あっているかもしれませんが、甲虫の写真はこれからも掲載してい
きたいと願っています。
Commented by banyan10 at 2007-05-29 17:45
ゴマダラオトシブミが葉を巻く過程は面白いですね。
僕だったら30分待って撮影するのは無理だった気がします。(^^;
べニホシハマキチョッキリは教えてもらったやつですね。
普通のオトシブミがまだ未撮影です。
蝶を探しているときは、なかなか他の虫が見つからないですね。
僕の場合も蝶が少ない早い時間に見つけるケースが多いです。(^^;
Commented by grassmonblue at 2007-05-29 21:11 x
山をバックにしたオトシブミの画像いいですね。
GX100を買いましたが、まだ苦労しています。こういう画像撮って見たいものです。
秘訣をひとつ教えてください。
Commented by 虫林 at 2007-05-29 23:59 x
banyanさん
ゴマダラオトシブミの揺り篭作製は、小生もジッと見ていることはできずに、周りをうろうろしながらのものでした。結構、こらえ性がないもので。
オトシブミはまだまだ見ることができますので、少しだけ意識すると多分見ることができると思いますよ。
Commented by 虫林 at 2007-05-30 00:08 x
grassmonblueさん、
GX100は良いですね、小生も意識していますが、まだ決断できないでいます。
GX-8もGX-100と同様に1cmまで近寄れますので、かなりの拡大ができると思います。ですから、最短距離で撮影すれば、かなりこのオトシブミの写真に近くなると思います。しかし、この写真では、GX-8にgyorome-8という「ドアミラーを流用した虫の目レンズ」を装着しています。そうすると、ピントのあう範囲がレンズ先端からほぼ0cmになって、ぎさらに魚眼的な雰囲気で撮影できます。解像力はあまり良くないです。
GX-8とGX-100の違いは、ストロボの位置で、GX-100ではレンズの上にあるので、ディフューザーを少し自作すると、ストロボを利用した写真が撮影しやすくなるような気がします。小生も買いたいな~。
Commented by Noreen05 at 2007-05-30 05:04
先日虹色に輝くベニホシハマキチョッキリに似た虫を見ました。
でも蝶を追いかけていたので一瞬美しい!と思ったのですが通り過ぎてしまいました・・・次回は無視しないで写してみます。
モイワサナエは良く見かけます。これからの季節蜻蛉に逢える楽しみも増えてきます。しかし蝶と同じく同定は出来ません(汗)。
Commented by chochoensis at 2007-05-30 06:20
虫林さん、おはようございます。昨日は一日中病院で検査漬けだったので、拝見するのが遅れてしまいました・・・6月の入院が決まりました。
「ゴマダラオトシブミ」の=ゆりかご=作り、見事ですね・・・小生も狙っていたので羨ましいです。素晴らしい時系列写真ですね、お見事です!
「クロサナエ」雄、間違いなく見事ですね・・・雌は良くわかりませんが、生息場所が同じならおなじように「クロ」では無いでしょうか・・・「ダビド」の方がやや標高の低いところにいると言いますから・・・。それと、「カタモンコガネ」素敵ですね・・・見てみたいです。甲虫が詳しい虫林さんが神様に見えます、今度ご一緒させてもらいたいです・・・。
Commented by 虫林 at 2007-05-30 08:29 x
Noreenさん、
コメント有難うございます。
小生は元甲虫屋(Kenkenさんも同族)ですので、チョウの撮影をしていても甲虫に反応してしまうのです(笑)。
北海道にはチョッキリの仲間では、サメハダチョッキリという稀種がいて、これは渋い美しさで、そして稀な種ですぞ。いつか見たいと思っています。また、北海道の甲虫では、アイヌキンオサ、オオルリオサムシは是非、いつか撮影したいですね。
Commented by 虫林 at 2007-05-30 08:36 x
chochoensisさん、
病院での検査は大変でしたね。ご苦労様でした。
6月に入院とのこと、是非ともゆっくりとご自愛ください。お願いします。
昆虫全般に深い興味をもたれるchochoensisさんですので、是非ともお元気になられて、またご一緒したいと思います。

クロサナエの同定、有難うございました。これで安心しました。
カタモンコガネは草原をハエのようにブンブン飛ぶ、小型のコガネムシです。ここの草原はほとんど歩かない上、アサマシジミなども棲息していますので、是非ともお連れしたいと思います。
by tyu-rinkazan | 2007-05-28 19:21 | ■甲虫 | Comments(12)