NATURE DIARY

tyurin.exblog.jp

20080119 温暖化と蝶:ムラシの越冬 (山梨県南部町)

§Information§

第2回チョウ類保全シンポジウム-ギフチョウ・ヒメギフチョウ-が開催されます。

◆日時:2008年2月10日(日)10:00~16:30
◆場所:群馬県渋川市民会館
◆主催:特定非営利活動法人(NPO法人)日本チョウ類保全協会
◆共催:群馬昆虫学会・赤城姫を愛する集まり
◆後援:群馬県教育委員会・渋川市教育委員会・(財)日本自然保護協会・日本鱗翅学会
◆参加費:無料(どなたでも参加することができます)


詳しい内容はここをクリックしてください →Information


**************************************************

§ 温暖化と蝶: Who knows next ? §

今年も地球温暖化が叫ばれている。

虫林の周りでも、もともと住んでいなかった暖地性の蝶たちが急激に増えてきた。
その最も顕著なものは、ツマグロヒョウモンとクロコノマチョウだろう。

15年ほど前の山梨県では、ツマグロヒョウモンは迷蝶あるいは偶産蝶(山梨の蝶:甲州昆虫同好会編、山梨日日新聞社)だったが、近頃では、甲府市内でも普通に見られる蝶になってしまった。このツマグロヒョウモンは、今や北関東をも完全に分布圏内に入れ、東北地方へと進出しようとしているのだ。一方、クロコノマチョウの方は、かなり前に山梨県や千葉県房総半島まで北上、東進していた。最近では本栖湖湖畔などでも姿を見かけた人がいるという。さらに、驚いたことに、クロコノマチョウが青森県内でも記録されているらしい(越冬は不可だろうけどね)。

暖地性の蝶達の北上は、この2種にとどまらない。
ナガサキアゲハは、神奈川県ではかなり普通に見られるし、最近は北関東(群馬県、栃木県)でも土着が確認されている。ムラサキツバメも北関東まで急速に北上し、神奈川県や千葉県では、関西方面よりも個体数が多く発生しているようにみえる。その他、ヤクシマルリシジミ(静岡県まで)やイシガケチョウ(三重県まで)なども年々確実に北上しているようだ。

一方、北上する蝶達に疑問を呈する人もいる。
高桑正敏氏は、「月刊 むし」という雑誌に、亜熱帯性チョウ2種の関東における発生の謎という興味あるレビュー記事を載せている(月刊 むし 2001; 364:18-25)。それによると、関東におけるムラサキツバメとナガサキアゲハの突然の分布拡大は不審な点が多々あり、放蝶などの人為的移入の可能性が高い事を指摘している(その根拠を列記すると長くなるので、原著をご覧になってほしい)。

虫林もつい最近まで、この2種の蝶については、人為による(食樹での移入も含めて)可能性が高いと考えてきた。その根拠として、分布拡大があまりに急激である事、北上したにしては、分布上、静岡県が空白になっていたからである。ところが、実際に調べて見ると、静岡県でもムラサキツバメは普通に見られるようだし、先月、1頭ではあるが山梨県でもムラツを見つけた。このような事実を考えると、両種の分布拡大は、必ずしも人為的な移入とはいえないかもしれないと思うようになった。

両種の分布拡大には種々の要因が関わっている可能性があるようだが、自然の北上であれ、人為的な移入であれ、南国の蝶たちの急速な分布拡大(北上)の背景に、温暖化(warming temperature)が重要な役割を果たしていることは間違い無さそうである。

この10数年間における、このような南国のチョウ達の急激な分布拡大を、誰が想像できただろうか?
この現象は、蝶に限ったことでないのは明白で、他の色々な昆虫や植物にも同様なことが考えられるのであろう。
------この先、いったいどうなるのであろうか。 Who knows next ?である。

P.S.
話は少しそれるが、昨年、ソテツを食するクロマダラソテツシジミの放蝶が、関西地方で相次いで見られた。その時に、「南国の蝶が身近な蝶になった」 とそれを歓迎する空気もあったように思う。少なくとも、厳しい糾弾はされなかった。これは、大変な間違いだ。そんなことが許されるのであれば、日本の生態系は乱れに乱れてしまうだろう。

関西および関東の都市圏では、蝶に限らず多くの他の動物(インコなどの鳥も含む)が、ブリーダーにより、安易に野外に離され、自然繁殖して、在来種を圧迫している。

また、娯楽目的で意図的に放される場合も多い。とくに、食魚性のブラックバスなどは、駆除不能な状態にまで追い込まれているのはご存知の通りである。

蝶でも、現実的に神奈川でのアカボシゴマダラや関東でのホソオチョウの例もあるので、是非ともそのような放蝶行為だけは謹んで欲しい。

アマチュア蝶愛好家はモラルを守って楽しもう!

**************************************************

§Diary§

朝起きて、いつものように「ちりとてちん」を家族で見ながら朝食をとった。
本日は非常に天気が良いようだ。

ウーム、そうだ!
昨年の暮れに県南で見つけたムラサキシジミ(ムラシ)とムラサキツバメ(ムラツ)の混合越冬集団の様子を見に行ってみよう。最後に見てからすでに3週間も経っている。

山梨県内とはいえ、静岡県との境界に近い県南の町までくると、さすがに少し暖かく感じる。
この辺では、ユズを栽培している家が多い。冬の最中とはいえ、ユズがある風景はどことなく暖かく感じられるようだ。

ユズの実を大きく入れて、広角レンズで撮影してみた。---大きくしたので夏みかんみたいだね。
d0090322_22294686.jpg
ユズの実

.
A fruit of Yuzu
.
Olympus E-3, ZD 8mm FISH-EYE, EC-14, ASA 200

(2008-January-19, Nanbu-cho, Yamanashi)


先月、見つけた越冬集団は、アオキの葉の上にくっついた枯れ葉上で見られた。
今回、同じ場所を見たところ、葉の上の枯れ葉が消失していた。しかし、嬉しいことにムラシはまだ3頭ほど葉上で越冬していたのだ。

ムラシは基本的に枯葉の上で越冬する蝶なのだが、今回の緑葉上での越冬は、葉の上に付着していた枯れ葉が落ちたあとに残った個体なのだろう。
d0090322_22315766.jpg
越冬するムラサキシジミ

.
Three Japanese Oak Blues passing the winter in group on a leaf
.
Olympus E-3, ZD 8mm FISH-EYE, EC-14, ASA 200, Built-in-Flash (+)

(2008-January-19, Nanbu-cho, Yamanashi)

d0090322_22321663.jpg
。。。。。。。。。。越冬するムラサキシジミ

.
。。。。。。。。。。Three Japanese Oak Blues passing the winter in group on a leaf
.
。。。。。。。。。。 Olympus E-3, ZD 50mm MACRO + EC-14 + Gyorome-8, ASA 400, Built-in-Flash (+)

。。。。。。。。。。(2008-January-19, Nanbu-cho, Yamanashi)


さらに、近くの別な場所で2頭のムラサキシジミを認めた。この個体も以前は同一場所にいたものだろう。

この場所の越冬集団は、最も多いときにはムラシ7頭+ムラツ1頭の計8頭だったので、それから比べると、かなり少なくなったといえるかもしれない。さらに、ムラツは消えてしまったのが、少し寂しく感じる。
d0090322_22331644.jpg
越冬するムラサキツバメ

.
Two Japanese Oak Blues passing the winter under the leaf
.
Olympus E-3, ZD 50mm MACRO + EC-14 + Gyorome-8, ASA 400, Built-in-Flash (+)

(2008-January-19, Nanbu-cho, Yamanashi)


林道奥の別な場所で、南向きの杉の木の樹皮をめくったところ(写真の右にある幹)、テントウムシの越冬集団を見つけた。以前にも見つけた木なので、いても当然であるが、それにしても沢山の個体が一緒に越冬しているものだ。
d0090322_22332982.jpg
杉の木

.
Japanese cedar
.
Olympus E-3, ZD 8mm FISH-EYE, EC-14, ASA 200

(2008-January-19, Nanbu-cho, Yamanashi)


これらはどれもテントウムシで、同一種であってもこれだけ色彩や斑紋が異なるのだ。
d0090322_22334321.jpg
越冬するテントウムシ

.
The Lady birds passing the winter in group
.
Olympus E-3, ZD 50mm MACRO + EC-14 + Gyorome-8, ASA 400, Built-in-Flash (+)

(2008-January-19, Nanbu-cho, Yamanashi)


その後、秋にキタキチョウやツマグロキチョウを多く見かけたポイントに行き、キチョウの仲間の越冬を1時間ほど探したが、残念ながら見つけることができなかった。

キタテハの翅の一部が、枯れた草原の上に寂しげに落ちていた。
d0090322_22343320.jpg
キタテハの翅の断片

.
A fragment of Chinese comma’s wing
.
Olympus E-3, ZD 50mm MACRO + EC-14, ASA 200

(2008-January-19, Nanbu-cho, Yamanashi)


まだ実の残る柿木を見ていたら、突然、メジロの群れが訪れた。
石化けしている虫林をあまり恐れずに、柿の実をついばんでいたので、マクロレンズのままで撮影した。
d0090322_2234040.jpg
柿の実とメジロ

.
White-eyes and persimmons
.
Olympus E-3, ZD 50mm MACRO + EC-14, ASA 200, Trimming (+)

(2008-January-19, Nanbu-cho, Yamanashi)

**************************************************

§Afterword§

近年の南国のチョウ達の北上スピードは異常である。
温暖化は身近にあるに違いない。

冬が寒いから、春が嬉しい。夏が暑いから、秋になると気持ちが良いのだ。
こんな日本の四季が崩れない事をいのるばかりだ。

それにしても、この寒い時期に、成虫を見ることができるムラサキシジミはありがたい存在である。しかし、越冬集団を構成する蝶の数は、枯れ葉が落ちたためか、寒さのためか減少してしまったのが少し残念に思う。

今回はキチョウの越冬態は観察できなかったが、この蝶の越冬態なら甲府市内でも観察できるはずなので、これからも少し探していきたいと思っている。
Commented by kmkurobe at 2008-01-21 08:14 x
温暖化はとくにツマグロヒヨウモンで感じます。
白馬ではいくらなんでも越冬はできないと思っていますが・・・・・
ただ10年くらい前から日本海の水温が徐々に上がりだし、本来だったら釣れない魚が当たり前のように釣れるようになりました。
エチゼンクラゲ騒動のはるか前からです。
海水温は気象に随分影響を与えるはずですから、日本海側のヒサマツの分布広がるかもしれませんね・・・・・
Commented by ダンダラ at 2008-01-21 21:31 x
完全な緑葉上で越冬するムラサキシジミははじめてみました。
枯れ葉から緑の葉に移動したと言うことでしょうか。越冬に適した条件が揃っている場所なんでしょうね。
温暖化以外にも色々な理由で、すごいスピードで絶滅種が増えているそうですね。
地球の歴史の中でも過去に例がないスピードだそうです。これから数億年後にはどんな理由として記録されるのでしょうか。
Commented by 虫林 at 2008-01-21 22:56 x
kmkurobeさん、
ツマグロヒョウモンの急速な分布拡大は驚くばかりですね。
成虫は白馬でも見ることができるとは----。
昆虫ばかりではなく、そのほかの生物への温暖化の影響も著しいものがあります。何でも温暖化のせいにするのは難しいとは思いますのが、近年の異常な減少は、温暖化を抜きにして説明できませんよね。
ヒサマツの分布拡大は、個人的には嬉しいですが、どうでしょうかね。
Commented by 虫林 at 2008-01-21 23:04 x
ダンダラさん、
緑の葉上のムラサキシジミの越冬は仰るとおりで異常ですよね。でも、実はこの越冬個体が見られた葉は、以前にこの緑葉の上に枯葉が付着していて、枯葉上で越冬していたものです。どういうわけか、枯葉が消失してしまいましたが、越冬に適した場所なのでここで越冬していたのだと思います。
温暖化でその分布を拡大する種類と、絶滅の道をたどるものと両方があるのですね。これからどうなるのか注意深く見守らなくてはいけないと思います。
Commented by chochoensis at 2008-01-22 22:42 x
虫林さん、温暖化の影響・・・チョウ以外の他の虫たちでも恐ろしいほど北上しているので恐ろしくなります、時々ブログの中で紹介していますが怖いです・・・これからどうなるんでしょうね。3週間ぶりの=定点観測=ムラサキシジミが」無事でよかったですね。これからの観察も楽しみにしています。
Commented by banyan10 at 2008-01-23 16:15
温暖化対策はなかなか進まないので心配です。
そのうち日本の蝶も見れなくなる種が出てくるのでしょうかね。
緑色の葉で越冬するムラサキシジミは違和感ありますね。(^^;
Commented by 虫林 at 2008-01-23 22:03 x
chochoensisさん、
仰るとおりで、この北上スピードは異常としかいいようがありませんね。
一体これからどうなって行くのかわかりません。
ムラサキシジミの越冬集団は、かろうじて頑張っていました。
また、2月に観察してみますね。
Commented by 虫林 at 2008-01-23 22:06 x
banyanさん、
1900年代の後半から今までの10年間に、起こったことは、ちゃんと検証する必要がありますよね。ここを検証して、将来を予想しなければなりません。見守っていきましょう。
緑葉にムラサキシジミはやはり違和感がありますよね!
でも、面白いでしょ?
by tyu-rinkazan | 2008-01-20 22:44 | ▣ムラサキシジミ | Comments(8)