NATURE DIARY

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20080906 夏の終わりの構内散歩:ミカドミンミン(山梨県)

Nature Diary #0202

黒色紋がほぼ消失して体全体が黄緑色になったミンミンゼミの変種を「ミカドミンミン」という。このミカドミンミンは色々な場所から記録されているが、その出現率はかなり低く、多くの場所では稀である。しかし、虫林の住む山梨県の甲府盆地では、この珍奇なミンミンゼミが稀ならず見られるのだから嬉しい。

昨年、あろうことか大学の構内でミカドミンミンを見ることができた。
今年も帝(ミカド)様におめもじ賜ろう。


§ Diary §

虫林がいる研究棟の周りには、クスノキを主とするちょっとした林があって、そこではこの時期とてもセミが多い。部屋の窓を開けると、アブラゼミやミンミンゼミは言うに及ばず、ツクツクホーシや時にはクマゼミの声も聞こえてくる。

昼休みに、誰にも気づかれずにそっと部屋を抜け出した(忍者の空蝉の術を使ってね)。別に昼休みならば、そんな術を使わなくても良いのだが、セミの撮影には空蝉の術を使うのだ。


ミンミンゼミ・通常型: Oncotympana maculaticollis

ミーン ミーン、ミーンという声を頼りにそっと木に近づいて幹を見回すと、大きな声の主がすぐに見つかった。黒っぽいので、どうやら通常型のミンミンゼミようだ。

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ミンミンゼミ通常型 (2008-September-6 中央市)

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Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F10, 1/250, EV-0.7, ASA800, Flash (+)


通常型では前胸背の黒い紋がはっきり見え、遠目には黒っぽくみえる。こうして木の幹にとまっていると、結構な保護色になっているのがわかる。鳴いていなければ、見つけることは困難だろう。

セミが鳴くのは求愛行動だといわれている。セミは地中生活がとても長く、地上に出て鳴くのは1-2週間である。だから、鳴くことは彼らにとってみれば極めて大事な行動だろう。

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ミンミンゼミ通常型 (2008-September-6 中央市)

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Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F7.1, 1/250, EV-0.7, ASA800, Flash (+)


通常型では、腹部の腹弁の色も真っ黒くなる。円内にその拡大写真を出した。

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。。。。。。。。。。ミンミンゼミ通常型 (2008-September-6 中央市)

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。。。。。。。。。。 Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F7.1, 1/400



ミンミンゼミ・ミカド型: Oncotympana maculaticollis, f. mikado

ミカド型にみえる個体でも、少量の黒紋を有している場合が多く、黒紋が完全に消失する真のミカドはかなり少ないようだ。やや太い木の幹にアブラゼミのそばに静止しているミンミンゼミをみつけた。

黒紋がない----ミカドミンミンだ!

ミカドミンミンは黒紋が消失し、体全体が緑色になる。見たとたんに明らかに違和感があり、さらにいえばどこか異様な感じがする。この個体くらい黒紋が消失すれば、ミカドミンミンと呼んでもよいだろう。

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ミカドミンミン (2008-September-6 中央市)

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Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F9.0, 1/80, EV-0.7, ASA800, Flash (+)

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。。。。。。。。。。ミカドミンミン (2008-September-6 中央市)

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。。。。。。。。。。 Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F11, 1/250


どこからミカドミンミンと呼ぶかについてはよくわからないが、ミカドミンミンでは腹弁の色が白色に近いそうである。確かにこの個体は腹弁の色が白く(円内)、通常型の黒腹弁と比べてみると明らかだ。

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ミカドミンミン (2008-September-6 中央市)

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Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F9.0, 1/80, EV-0.7, ASA800, Flash (+)



ミンミンゼミ・中間型: Oncotympana maculaticollis

通常のミンミンゼミと黒紋が完全消失するミカドミンミンの間には、緑化型ともいえる中間型がある。つまり、黒紋の面積がかなり少なくなるが、完全には消えていないものである。

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ミンミンゼミ中間型 (2008-September-6 中央市)

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Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F7.1, 1/40, EV-0.7, ASA800, Flash (+)


枝にとまって鳴いているかなり緑化の進んだミンミンゼミを見つけた。逆光にシルエットを際立たせてとても綺麗だ。ウーム、セミを美しく撮るのは難しいものだ。

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逆光のミンミンゼミ中間型 (2008-September-6 中央市)

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Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F8.0, 1/250, EV-0.7, ASA800, Flash (+)


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§Afterword§

夏が舞台の日本のドラマや映画では、必ずセミ(とくにミンミンゼミ)の声がバックに使われる。一方、ヨーロッパやアメリカの映画でセミの声を聞いたことがない。すなわち、セミの声は、日本の夏の風物詩として、子供の頃からわれわれ日本人の意識の中に組み込まれているのだ。

今年もミカドミンミンを見ることができた。こんなセミが自分の周りに棲息しているのは面白い。一説によれば、甲府盆地は夏の気温が高いので、ミカド型の発生率が高くなるそうだ。反対に気温の低い北海道のミンミンゼミでは黒化傾向が強いそうだ。その伝でいけば、青森あたりのミンミンゼミはどうなのだろうか--------気になるところだ。



以上、 by 虫林花山
Commented by spatica at 2008-09-08 00:06 x
ミカドミンミン、写真で見ても違和感を感じますし、実物を見たらもっと変な感じがするんでしょうね。
最後の写真はすごい綺麗に撮れてますね。自分もセミを撮ってますがこんなに奇麗に撮れた試しがないです。おみごと。
Commented by Celastrina at 2008-09-08 00:38 x
ミカドミンミン、異様な感じがイイですね。
青森では大半が黒々とした普通型で、7枚目のような中間型ですらきわめて稀にしかみつかりません。ましてやミカド型なんて、夢のまたユメです。
Commented by clossiana at 2008-09-08 13:34
空蝉の術、お見事です。幸いにして私は最近は、そのような術を駆使せずとも、会社のほうで、すでに期待していないようです。さて、ミカドミンミンですが最初「山梨の昆虫」でその存在を知ったのですが昨年の貴ブログで詳細を知りました。山梨が最も出現率が高いとの事ですが不思議な現象で面白いです。一度見てみたいです。
Commented by 虫林 at 2008-09-08 19:14 x
spaticaさん、
ミカドミンミンを初めて見たときは感激しましたね。これが噂のセミかと思いました。せも、注意深く聞いても鳴き声にはあまり差が無いみたいでした。
この写真のセミは、たまたま葉の間からスポットライトが当たっていて、見ているとシルエットが強調されて綺麗でした。
でも、セミの写真は難しいですね。大学構内だと、木が低いので見やすいのですが、山地のエゾゼミなどはなかなか-----。
Commented by 虫林 at 2008-09-08 19:18 x
Celastrinaさん、
コメント有難うございます。昆虫の地方変異や突然変異などは色々あるので面白いですね。そうですか、やはり青森では緑化型も少ないみたいですね。甲府では緑化型やミカド型のミンミンゼミは、統計をとったことが無いのですが、20%くらいになるのではないかと思われます。それほど苦労せずに見ることができるのです。
北海道の黒化したミンミンゼミも見てみたいです。
Commented by 虫林 at 2008-09-08 19:26 x
clossianaさん、
空蝉の術を使うと、後でバレた時に周囲から顰蹙をかっています(笑)。
山梨の甲府盆地も出現率が高いのですが、筑波山や山形県の島などいくつか出現率高い場所があるみたいです。その他の場所で低いのは、多分突然変異(somatic mutation)によって出てきて遺伝しないためかも知れませんね。高出現地域では、生殖細胞にその変異(germline mutation)が備わっているためなのかな。ちょっと興味あるところですが、よくわかりません。
大学の構内の木は比較的低い木が多いので、ミンミンゼミを見つけやすいのです。山の方では、鳴いていてもアプローチが困難なことが多く、根性の無い小生は遠慮してしまうことが多いかな。ねらい目は果樹園ですね。
Commented by furu at 2008-09-08 21:27 x
数年前、甲府のなんとか運動公園でミカドミンミンをたくさん見ました。中間型はまだ見た事ないですが、こちらの方がデザイン的には締まりがあってかっこいいですね。
全身緑のセミといえば沖縄のクロイワゼミも見てみたいです。
Commented by 蝶山人@昼休み at 2008-09-09 11:56 x
物凄いフィールドですね?
こんな貴重な種がいるなんて。
こちらのキャンパスはナガサキアゲハと
ツマグロヒョウモンが飛んでいて熱帯さながらです。
さすがにクマゼミよりはミンミンがのさばっています。
もう直ぐムラツも見られます。
(九州と勘違いしそうな都内某所より)
Commented by 虫林 at 2008-09-09 18:43 x
furuさん、
その運動公園は、多分小瀬のスポーツ公園のことですね。あそこには木が沢山あるので、ミカドミンミンがいても不思議ではないです。蝶は期待できませんが----。
クロイワゼミは見たことが無いので、ネットで見てみましたが、確かに凄い緑のセミですね。興味あります。ありがとうございました。
Commented by 虫林 at 2008-09-09 18:46 x
蝶山人さん、
都心(白金)にナガサキアゲハが飛んでいるなんて、それこそ凄いじゃないですか。山梨でもナガサキアゲハが記録されているのですが、まだ見たことはありません。クマゼミだってこちらではまだ少ないですよ。
クロマダラソテツシジミはどうですかね。
Commented by kmkurobe at 2008-09-09 19:28
なるほどこれがミカドミンミンなのですね。昨年ムモンアカのポイントの近くで変わったミンミンだと思いながら撮影したのがこれでした。
しかしあの敏感な蝉によく近づくことができるものですね。
Commented by chochoensis at 2008-09-09 20:49 x
虫林さん、なるほど・・・名前は聞いていても、実際に拝見すると凄い!=ミカドミンミン=なんとなく高貴に見えるかな???その=帝=なんでしょうか???凄いのがいるんですね、驚いています。
Commented by 緑一 at 2008-09-09 23:20 x
大阪の緑一と言います。いつも楽しく拝見させていただいております。初めてコメントをさせていただきます。ミカドミンミンゼミは“文献上の知識”はありましたが、初めて野外の写真を見ました。セミはいいですね。“昆虫ビギナー”の方でもある程度同定できて存在がわかります。6年前から「虫に全く興味がない方々に興味を持ってもらおう」と思って、北海道から九州までいる私の会社の社員に「セミの鳴き声を聞いたたらメールで報告する」と義務付けたら(?)非常に興味を持ち始めて、今では非常に精度の良い報告となり、ハルゼミからチッチゼミの全国の鳴き始めから鳴き終わりまでが把握できるようになりました。そうするといろいろ面白ことがわかってきました。クマゼミの分布は神奈川県、東京都、千葉県、埼玉県、富山県で確実で明らかに分布は拡大しているようです。私の住む大阪ではミンミンゼミは非常に少ないのですが、今年初めて大阪市内でも分布していることがわかりました。私の町内では今、クマゼミの鳴き声は9月6日以降聞かれなくなり(クマゼミ優勢な大阪市内でも9月3日以降鳴き声は聞いていない)ミンミンゼミが優勢になっています。
Commented by 虫林 at 2008-09-10 00:11 x
kmkurobeさん、
ミンミンゼミのアップは、構内の低い木で鳴いているセミを見つけることです。意外に鈍感なセミがいて、近づいて撮影できました。Sigma150mmマクロは、オリンパスだと300mm望遠になるのでこれも楽でした。
Commented by 虫林 at 2008-09-10 00:14 x
chochoensisさん、
ミカドという名前が付いた昆虫はかなり多いですね。このミカドの由来は、多分100年以上前にロンドンで流行ったオペラ「ミカド」 に由来するらしいです。その当時は、ミカドを名を多くの生物につけたそうです。
Commented by 虫林 at 2008-09-10 00:19 x
緑一さん、
有難うございます。上高地では楽しい時間を有難うございました。
その時もクマゼミのお話をしていたと思いますが、山梨でも少ないながらクマゼミの鳴き声が年に何度か聞こえます。でも、クマゼミとミンミンゼミは音質が似ていて紛らわしいらしいですね。
緑一さんの全国ゼミネットワークは強力ですね。さすがです。
これからも宜しくお願いします。
by tyu-rinkazan | 2008-09-07 22:19 | ■他の昆虫 | Comments(16)