NATURE DIARY

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20090411 富士川流域のギフチョウとスギタニルリシジミ (山梨県、静岡県)

Nature Diary #0247
Date: April 11th (Saturday), 2009
Place: Nanbu-cho, Yamanashi Pref.
Weather:Fine



<春景色>

春になると自然界が急に賑やかになる。

木々の新芽はいつの間にか若葉となり、そのパステルグリーンと山桜の花の薄桃色が複雑に溶け合ってなんともいえない山肌の模様を形成する。また、路傍にはスミレやタンポポの花々があふれ、多くの昆虫達も出現して、まるで、林全体が生命の歓喜に踊っているようだ。

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春景色 (4月11日、南部町)

Season of new green leaves
(Olympus E-510, ZD16-60mm)




§ Diary §


本日は「春の女神;ギフチョウ」に会うために勇躍国道52号を南下した。実は先週も富士川流域の生息地の一つを訪れたのだが、不安定な天気と低気温に加え、虫林の日頃の行いの悪さも相まって、春の女神は微笑んでくれなかったのだ。


ギフチョウ; Luehdorfia

毎年訪れるギフチョウポイントに到着して、準備をしながら周りを見回すと虫林のほかに人はいない。本日は天気も良く、気温も高いので期待しながらいつもの場所に腰をおろしてギフチョウの飛来を待つことにした。

待つこと約1時間、午前10時を過ぎる頃に、どこからともなく憧れの春の女神が舞い降りてきた。ギフチョウはタチツボスミレなどで吸蜜した後、アオキの新芽で静止した。

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アオキの新芽に静止したギフチョウ♀ (4月11日、南部町)

A female of Luehdorfia resting on the new leaves
(Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO)


昨年まで何度もギフチョウを撮影してきたが、目の前にギフチョウが現れると、有名な条件反射モデルの「パブロフの犬」のように涎が流れ、動悸と頻脈とともに血圧が上昇してしまう。

このチョウに対する強い憧憬は、幾つになっても消えない----虫屋の魂百まで。

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枝先に静止したギフチョウ♂ (4月11日、南部町)

A male of Luehdorfia resting on the new leaves
(Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO)


山梨県でのギフチョウの棲息地は。南部町、身延町など富士川流域に限られているが、いずれの生息地でも個体数が少なく、その存続が危ぶまれているといえるだろう。

ギフチョウの新鮮なメスは、実に美しい。

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地面に静止したギフチョウ♀(4月11日、南部町)

A female of Luehdorfia resting on the ground
(Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO)


イチリンソウの花が、蝶の重みで垂れてしまった。
何となくユーモラスで、ほほえましい。

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イチリンソウで吸蜜するギフチョウ♀(4月11日、南部町)

A female of Luehdorfia feeding on the flowers
(Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO)


翌12日(日曜日)に前日と同じギフポイントを訪れてみると、すでに横浜のE氏、フィールドノートのTheclaさん、Nature WorldのW氏、山梨のS氏が撮影されていた。

様子を聞いてみると、ギフチョウの飛来はかなり少ないとのことだった。
そこで、E氏とThecla氏が知る別なギフポイントに案内していただくことになった。

そのポイントでは、しばらくギフチョウの飛翔などを楽しんだが、お昼頃からは、食草であるカンアオイの多い場所でギフチョウの産卵シーンの撮影に挑戦した。葉裏をみると、白というよりはやや青みがかったギフチョウの卵が産み付けられていた。

2時間ほども待っただろうか、その間、数頭の産卵しそうなメス(タッチングしていた)は訪れたものの、残念ながら、産卵行動までには至らなかった。

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食草のカンアオイと卵 (4月12日、芝川町)

Eggs of Luehdorfia on the feeding plant “Kan-aoi”
(Olympus E-510, ZD12-60mm)




スギタニルリシジミ; Sugitani’s Hedge Blue

ギフチョウポイントから昨年見つけたスギタニルリシジミのポイントにTheclaさんと一緒に移動した。目的はスギタニルリのメスの開翅写真撮影だ。

スギタニルリの集まる水場は崖の下にあるが、恐ろしいことに崖の上からの落石が頻繁に起こっていた。かなり大きな石まで落ちてくるので危険なことこの上無い。それでも常に上に注意しながら落石が当たらない場所でスギタニルリの撮影を行った。

ちなみに写真の後ろに立っている人物はTheclaさんだ。

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スギタニルリシジミ♂の吸水 (4月12日、南部町)

Sugitani’s Hedge Blue
(Olympus E-510, ZD8mm + EC-14、外部ストロボ)


スギタニルリのオスは吸水に来るので観察する事は難しくないが、メスは樹上生活すると考えられていて、なかなかその姿を見せてくれない。

少し日が傾いて気温が下がってきた午後3時過ぎ。二人でメスかもしれないスギタニルリを見ていたところ、Theclaさんの推察通り、静止した後におもむろに開翅をしてくれた。

ルリシジミ♀の春型との鑑別が問題になるが、スギタニルリのメスの翅表では、色がより暗色調で、前翅、後翅とも黒い縁取りが等幅であることで区別できる。この個体はまさしくスギタニだ。


スギタニルリのメスの開翅は初めてなのでとても嬉しかった。

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スギタニルリシジミ♀開翅 (4月12日、南部町)

Sugitani’s Hedge Blue
(Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO)


バリアングルモニターを駆使して、吸水している雄の翅裏アップを撮影した。

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スギタニルリシジミ♂ (4月12日、南部町)

Sugitani’s Hedge Blue
(Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO)

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スギタニルリシジミ♀ (4月12日、南部町)

Sugitani’s Hedge Blue
(Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO)


スギタニルリの飛翔をしばらく観察しているとハクウンボクの花で吸蜜を始めた。

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スギタニルリシジミの吸蜜 (4月12日、南部町)

Sugitani’s Hedge Blue
(Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO、トリミング)


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§ Afterword §

先週は低気温のためにギフチョウが出現しなかったので、今回が今年初めてのギフチョウ撮影となった。やはりこの時期にはギフチョウを撮影しないと何となく落ち着かないのだ。それにしても、ギフチョウの環境は放置すると必ず悪化してしまう。それ故、ギフチョウの保護は彼らの生息環境の維持が最も大事になってくるのだ。ギフチョウを保護している方々の努力には頭が下がる次第だ。

スギタニルリのメスの開翅撮影は、諦めの早い虫林一人では困難だったと思う----とても嬉しかった。


最後に、色々と教えていただいた横浜のEさん、Theclaさん、Wさん(アッキーさん)、Sさんに感謝します。また何時かお会いしましょう。




以上、 by 虫林花山
Commented by 蝶山人@昼休み at 2009-04-13 11:58 x
春の感覚の繊細な描写W.H. Hudson顔負けですね。
「心掛けが悪い」なんて謙遜されていますが
虫林さんが悪かったら他の虫屋は心がけ最悪になってしまいます。

パブロフの犬が生物の教科書から消えたそうですね。
動物愛護の精神からだそうです。
動物愛護とヒステリーはきちがえているような印象を受けます。
まるで捕鯨バッシングのシーシェパードやグリーンピースです。

スギタニ♂の翅表も美しいですが♀開翅珍しい(めすらしい)ですね。
口吻が伸びているのが確認できますね。
どういう意味があるのでしょうか?
Commented by たにつち at 2009-04-13 12:50 x
まごうことなき、雌の表、、すばらしい!
ハクウンボクでの写真も美しいです。

ギフチョウもきれいですね。魂百までですよね、ほんと。
けしからん輩はいませんでしたか。
Commented by 蘭丸 at 2009-04-13 17:16 x
▼虫林san、こんにちは。
 ギフチョウの後翅素適です!!!
 スギタニの♀開翅も素敵です!!!
 私も、昨日、ヨウヤク ミヤマセセリとトラフシジミ に逢いました
 (地元ぢゃぁナイのデスガ・・・・・)。
Commented by kmkurobe at 2009-04-13 19:22 x
すばらしい。来年はぜひご一緒したいと思います。
青紋が本当に美しく写っていますね。
天気がいいのにこの週末は六本木で深酒・・・・・浮き世の義理ではありましたが、虫屋にはなんとも残念な週末でした。
Commented at 2009-04-13 19:28 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ヒメオオクワガタ at 2009-04-13 20:46 x
私も昨日は、新潟県で今年初めてギフチョウを
見ることが出来ました。
翅が痛んだ個体が多いものの色々なシーンに
遭遇出来て私としては300%の遠征でした。
Commented by banyan10 at 2009-04-13 20:57
スギタニの雌の翅表は未撮影なので羨ましいです。
夕方が狙い目なのでしょうか。
吸水の広角もいいですね。
花はニリンソウのようにも見えますが、キンポウゲ科の吸蜜は珍しいですね。
Commented by アッキーマッキー at 2009-04-13 21:39 x
昨日は、お疲れさまでした。飛翔写真の撮影方法、拝見しましたが、スゴイですね。汗だくになりながらも撮影されている様子を拝見し、僕では撮れないと感じました。それと、スギタニの写真も超広角で、どうしてこんなに近寄れるのか、とにかくスゴイです。僕は、根気がないので、やっぱりじってしてくれるものしか駄目ですね。春は、スミレにかけるしかなさそうです。金曜日は、休みを取って、前から気になっていた太平洋側のナガハシスミレを探しに行きました。過去2回、同じ様な場所を散策して、ようやく今回見つけました!初めてのナガハシスミレに感動です。続きは、ブログで。
またの機会に是非ご一緒できれば、と思います。
Commented by ぽんぽこ山本 at 2009-04-13 22:20 x
お久しぶりです!
スギタニメスの写真は「スゴイ!」ですね。
そもそもメスに遭遇する事自体すごいのに・・・・
富士川中流域~下流にかけてのスギタニが謎なんです。
トチが無い場所に沢山見られます。 ヤマフジ・ミズキ・キハダ・ニセアカシヤ・ムシカリから幼生が確認されています。 また、裏の黒紋がトチを食べている物よりはっきりしているんです。 変わった産地です。
また、チャンスがありましたらワサビ田に行かれてると良いと思います。
ワサビの花に♂・♀共に集まっています。【ぽん!】
Commented by thecla at 2009-04-14 00:06 x
昨日はお疲れ様でした。
昨日は帰途渋滞に巻き込まれ更新せずに寝てしまいました。
今日更新したのですが、広角を反対側から撮ったものも載せています、今度組写真で並べてみましょうか(^^;
岩がごろごろ落ちてくるし、一人だったら早々に諦めて帰ってしまっていたと思います。お付き合いいただきありがとうございました。
Commented by hagi-w-shogo at 2009-04-14 01:13
はじめまして。いつも拝見させていただいてます。
メスの新鮮なギフチョウはやはりきれいですよね。自分は富士川のギフとは相性が悪いらしく、1回しか見たことないので羨ましいです。黒い富士川っぽいギフを拝んでみたいものです。
Commented by clossiana at 2009-04-14 08:16
確かにギフ、ヒメギフはいつまでたっても見る毎に血が騒ぎますね。なんとかならないですかね。♀が本当に艶やかで綺麗です。スギルリの♀の開翅シーンと合わせて撮影おめでとう御座居ます。私も初めて開翅を撮れましたが開くまでいったい♂なのか♀なのかがわからない点が厄介です。
Commented by 虫林 at 2009-04-14 08:29 x
蝶山人さん、
ありがとうございます。日ごろの行いが悪いためと思っていました(笑)。パブロフの犬が教科書から消えているとは知りませんでした。まったく、信じられませんよね。
スギタニルリシジミはまさか開くとは思っていなかったのです。とてもびっくりするとともに嬉しかったです。
Commented by ダンダラ at 2009-04-14 11:49 x
ギフ撮影成功おめでとうございます。
メスは青紋がくっきりとしてきれいですね。
スギタニ雌の開翅は良いですね。なかなかチャンスがないです。
例の部門の写真としても十分ですね。
Commented by 虫林 at 2009-04-14 15:33 x
たにつちさん、
ありがとうございます。スギタニルリのメスの開翅は嬉しかったです。
今回は今年のギフチョウ初見ですので、それなりに嬉しいです。
最近はこの場所も個体数がかなり少なくなり、網をもったヒトも現れなくなりました。
Commented by 虫林 at 2009-04-14 15:35 x
蘭丸さん、
ギフチョウは毎年撮影していますが、今年はこれが初めてなので嬉しいです。スギタニは小さくて地味なシジミですが、ゆっくり撮影するとそれなりにきれいです。トラフシジミはうらやましいな。
Commented by 虫林 at 2009-04-14 15:37 x
kmkurobeさん、
是非とも来年はご一緒いたしましょう。今回は横浜のEさんに別なポイントを教わり気に入ってしまいました。
六本木での深酒もいいいなあ。
Commented by 虫林 at 2009-04-14 15:39 x
ヒメオオクワガタ さん、
ダンダラさんのブログで拝見しまいたが、すばらしい成果だったようでおめでとうございます。僕は今回は産卵シーンを撮影できたらと思っていたのですが、なかなかうまくいきませんでした。
Commented by 虫林 at 2009-04-14 15:42 x
banyanさん、
スギタニのメスは、Theclaさんが夕方に開翅するかも知れないといっていました。そして実際に開翅したので驚いたしだいです。
メスは水場のそばの葉にひっそりと来るようで、なんとかわかりそうです。
写真をみると確かに花茎がもう一本ありそうですね。あとでこっそりとニリンソウに変えておきます。ご指摘ありがとうございました。
Commented by 虫林 at 2009-04-14 15:45 x
アッキーマッキー さん
スミレは個体変異や地域変異があって難しいですが、やはりこの時期には気になってしまいます。そろそろスミレも気合を入れて撮影しないと時期が過ぎてしまいますね。
今回の飛翔写真はあまりうまく撮影できませんでした。レンズを別なレンズに換えていたのが災いでした。
Commented by 虫林 at 2009-04-14 15:48 x
ぽんぽこ山本さん、
コメントありがとうございます。確かにこのスギタニポイントではトチノキがありませんね。貴重なご指摘ありがとうございました。色合いなどはあまり気にしませんでしたが、他の場所のものと比較してみます。ワサビ田は魅力的です。そういえば、テレビにご出演おめでとうございます。
Commented by 虫林 at 2009-04-14 15:51 x
theclaさん、
落石は怖かったですね。でも、お互いに被害が無くてよかったです。その日の夕方のニュースで、大鹿村の林道で落石で車がぺしゃんこになり、運転手が死亡する事故がありました。世が世ならでしたね。
色々とお世話になりました。またよろしくお願いします。
Commented by 虫林 at 2009-04-14 15:53 x
hagi-w-shogoさん、
富士川流域でも山梨県側はかなり個体数が少なくなっています。でも、場所によっては今でも見られるところがあるので、小さいポイントですが、毎年通っているしだいです。
後ほどこちらでもリンクしておきますね。
Commented by 虫林 at 2009-04-14 15:55 x
clossianaさん、
ブログを背景しました。すばらしい開翅写真ですね。今年はまだまだスギタニのチャンスがあると思いますので、またチャレンジしてみたいと思っています。後ほどそちらにもコメント知れますね。
ありがとうございました。
Commented by 虫林 at 2009-04-14 15:58 x
ダンダラさん、
そちらの写真館のメスの開翅は以前にも見させていただきました。今回はやっとメスの開翅が撮影できてよかったです。今年はまだチャンスがあると思うのでチャレンジしてみたいです。撮れるときに集中して撮影しておきたいと思います。
Commented by chochoensis at 2009-04-15 08:50
虫林さん、=スギタニルリシジミ=♀の開翅に憧れています。過去に一度だけ♀の写真を撮影したことがあるのですが、完全に開いたところは、未だ一度も観察機会が無くとても羨ましいです!!!素晴らしい写真をありがとう・・・。
Commented by 虫林 at 2009-04-15 20:16 x
chochoensisさん、
スギタニルリのメスは、水場には降りずに、周囲の崖の葉の上をうろうろとしているようでした。裏面もオスとは少し違うようですので、見つければ粘って見る価値があります。まだ満足な写真とはいえないので、今年はもう少し撮影してみたいと思っています。chochoensisさんも撮影がうまく行くことを願っています。
by tyu-rinkazan | 2009-04-12 23:17 | ▣ギフ | Comments(27)