NATURE DIARY

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20110227 米国サンアントニオの蝶たち

Nature Diary #0374


§ Diary §

日曜日(27日)は朝から雨。

しかたがないので、ホテルの部屋で遅れている原稿を書いていたところ、あにはからんや正午を過ぎるとそれまで空を覆っていた雲が突然切れて、雲の間から青空が顔を出すと同時に暖かな陽も差してきた。さらにしばらくすると青空はどんどんひろがってきた。

早速、サンアントニオ植物園 (San Antonio Botanical Garden) を訪問。

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サンアントニオ植物園 の入り口

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Olympus EP-1, MZD14-42mm, ASA200
(San Antonio, USA, 2月27日)




» トラフアゲハ Tiger Swallowtail; Papilio glaucus

植物園の自然観察路の脇でグミに似た低木を見つけました。

何気なくその木に目を向けると、遠目にもそれとわかるほど鮮やかな黄色のアゲハチョウが吸蜜に訪れていました。このアゲハチョウは トラフアゲハ Tiger Swallowtail という名前の米国で最もポピュラーなチョウです。

今まで過去に訪れた夏の米国では、何度もこのトラフアゲハが空中を素晴らしいスピードで飛び去る姿を目撃してきましたが、どういうわけか花での吸蜜を見ていませんでした。今回はやっと念願かなって 「空の韋駄天野郎 トラフアゲハ」 が花で吸蜜する姿を、至近距離でゆっくりと観察することがことができました。

見れば見るほど「水もしたたる良いチョウ」だな。

まだ発生初期のようで、見つけた個体はいずれも新鮮な♂のようでした。

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白い花で吸蜜するトラフアゲハ

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Canon 7D, Sigma 17-70mm, ASA400
(San Antonio, USA, 2月27日)



トラフアゲハはキアゲハほど大きさで、翅表は黄色地に黒いラインが入っていわゆる虎(Tiger)模様のチョウです。チョウの中でトラ模様を示すチョウは意外に多い。多分、黄色一色よりもトラ模様の方が、背景に溶け込んで天敵たちに見つかりにくいためでしょう。

自然界の現象は、つきつめてみると常に合目的でその巧妙さに驚かされる。

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吸蜜するトラフアゲハ

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Canon 7D, EF300mm, ASA400
(San Antonio, USA, 2月27日)



花壇の花でもトラフアゲハの姿を見かけました。

しばらく観察していると、トラフアゲハ\は青いパンジーを特に好んで吸蜜していることに気づきました。そういえば、ギフチョウも青系統の色が好みですね。

蝶には花の色の好みがあるのは事実で、蝶の種類によって好きな花の色は異なるるようです。でも、どの蝶にも好まれるのは赤紫や青紫の花でしょう。トラフアゲハが青紫色のパンジーに惹かれたのは自然の生理ということになりますね。

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飛翔するTiger Swallowtail

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Canon 7D, EF300mm, ASA400
(San Antonio, USA, 2月27日)




» アオジャコウアゲハ Pipe-Vine Swallowtail; Battus philenor

小型の黒いアオジャコウアゲハ Pipe-Vine Swallowtail を見つけた。

英名の Pipe-Vine とは ウマノスズクサ科のアリストロキアという植物の名前らしい。

一般にウマノスズクサを食べるジャコウアゲハの仲間は体に毒を持っていて、このチョウを食べた鳥は、2度と食べないことが実験的に証明されています。そのため、無毒のチョウがこのアオジャコウアゲハに擬態することが知られています。前述のトラフアゲハのメスもその一つです。

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吸蜜する アオジャコウアゲハ

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Canon 7D, EF300mm, ASA400
(San Antonio, USA, 2月27日)



この アオジャコウアゲハ もやはり翅裏にオレンジ色の大きな紋が並んでいてなかなか見ごたえのある美しさを示す。

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吸蜜する アオジャコウアゲハ

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Canon 7D, Sigma 17-70mm, ASA400
(San Antonio, USA, 2月27日)



旋回飛翔(占有行動)を示すアオジャコウアゲハを見つけました。

この個体はテリトリーの独占欲が強くて、2時間ほどしてからまた同じ場所に戻ってみるとまだ木の周りで占有行動を示していました。

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飛翔するアオジャコウアゲハ

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Canon 7D, Sigma 10mm Fisheye, Kenko X1.4, ASA400, Trimming (+)
(San Antonio, USA, 2月27日)




» メスクロキアゲハBlack Swallowtail; Papilio polyxenes

Black Swallowtail は日本語にするとクロアゲハですが、実際はキアゲハに近い。

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飛翔するBlack Swallowtail

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Canon 7D, EF 100mm Macro, ASA400, Trimming (+)
(San Antonio, USA, 2月27日)




» イヌモンキチョウ Dog Face ; Colias cesonia

「Dog Face 犬の顔」という面白い名前のシロチョウです。

どうして「犬の顔」なのかというと、このチョウが翅を広げた時の様子が犬の顔に見えるからです。すなわち、尖った翅先が耳で、翅表の黒紋が目や鼻に見えます。

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吸蜜するイヌモンキチョウ

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Canon 7D, EF 300mm, ASA800
(San Antonio, USA, 2月27日)



チョウが花に飛び移る直前の姿勢を写したものか、それとも花から飛び立った直後かの2つの可能性が考えられます。多分、前者だと思いますが、自信はありません。

この写真を見る限り、チョウの翅は適度に柔らかくかつ適度に硬そうです。
多分、チョウの飛翔には硬軟のバランスがとれた翅が重要なのでしょう。

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飛翔するイヌモンキチョウ

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Canon 7D, EF 300mm, ASA800
(San Antonio, USA, 2月27日)




» オオムラサキシジミGreat Purple Hairstreak ; Atlides halesus

白い花に集まったチョウ達の中に、大きな黒いシジミチョウを見つけました。

しかし、発見した時には木の上方の花で吸蜜していたので、撮影は困難でした。
そこで、心の中で「降りて来い!」と叫んだのですが、チョウは一向に降りてきてくれませんでした。最後には「お願いだから降りてきてください!」と丁寧にお願いしたら撮影可能な下枝まで降りてきたのです(本当かい?)。

このチョウはオオムラサキシジミというシジミチョウで、英名を Great Purple Hairstreak というが、Great Blue Hairstreak とも呼ばれている。

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吸蜜するオオムラサキシジミ

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Canon 7D, EF 100mm Macro, ASA400
(San Antonio, USA, 2月27日)



このシジミチョウは、名前に Great という文字が冠せられているように Hairstreak の仲間では最も大きいようです。ちなみにButterflies of Houston and Southeast Texas という図鑑をみると「最も大きくて最も豪華な熱帯性のシジミチョウ」と記載されていました。

カメラに100ミリのマクロレンズを装着して近接してみると、翅裏の基部に毒々しいほど派手な赤紋が目に飛び込んできました。また、後翅尾部の近くには青銀色の紋が怪しく輝き、長さが著しく異なる尾状突起が2対(4本)あります。

一度お目にかかったら忘れることができないシジミチョウです。

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吸蜜するオオムラサキシジミの♀

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Canon 7D, EF 100mm Macro, ASA400
(San Antonio, USA, 2月27日)



同じ木の花で。吸蜜に訪れていたオオムラサキシジミのオスも発見。

この個体は残念ながら翅の尾部が欠損していましたが、翅裏はメスと同様の赤紋に加えて、鮮やかな青い紋が翅裏にひろがっていて、メスよりも派手な印象を受けます。良く見ると腹部が明るいオレンジ色なのもどことなくトロピカルな配色です。

少し逆光だったので、外部フラッシュを使用しました。

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吸蜜するオオムラサキシジミ ♂

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Canon 7D, EF 100mm Macro, ASA400, 430EXII
(San Antonio, USA, 2月27日)



チョウを上から見ると、尾状突起が何かの昆虫の長い触角のように見えます。
また、横に広がった部分は虫の頭部を模倣していそうです。

つまり、鳥などに体の前と後ろを誤認させる擬態かも知れませんね。

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オオムラサキシジミ の翅後端が横に広がる

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Canon 7D, EF 300mm, ASA800
(San Antonio, USA, 2月27日)


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§ Afterword §

今から6年前にも同じ時期にこの植物園を訪れました。その時に比べて、今回の方が花は少なかったですが、チョウの種類数、個体数ともかなり多く観察できたように思います。

サンアントニオ植物園はダウンタウンから車で10分ほどの至近距離にある上に、敷地がかなり広くて、自然の林を残した散歩道もつくられています。また、チョウだけでなく鳥の種類も豊富なようですので自然愛好者にはお勧めの場所といえるでしょう。

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以上、 by 虫林花山
Commented by 22wn3288 at 2011-03-04 09:51 x
外国のチョウのきれいな写真、とても新鮮な感じがします。
オオムラサキシジミの赤や青はとても印象的です。生きているチョウを見て見たいと思います。
Commented by banyan10 at 2011-03-04 12:55
またまた魅力的な蝶のオンパレードですね。
アオジャコウアゲハの翅裏とオオムラサキシジミのオスに惹かれました。
Commented by 虫林 at 2011-03-04 19:28 x
22wn3288 さん、
北米とくに南部の蝶は、やはり特徴的な種類が多くて面白いですね。オオムラサキシジミの色彩はとてもカラフルでユニークでした。普通種なのかどうかとかはあまり気にならないほどの魅力があると思います。
Commented by 虫林 at 2011-03-04 19:31 x
banyanさん、
やはりユニークでカラフルな蝶は被写体として撮影のし甲斐があります。その点、この両種は撮影していて嬉しくなりました。
とくに、オオムラサキシジミを撮影しているときには、長野のベニモンカラスを思い出しました。
Commented by dragonbutter at 2011-03-04 22:36
在米中に見たことのある蝶の素晴らしい写真があり、なつかしく拝見しました。当時はデジカメがなかったためろくな写真が残っておりませんが。特に飛翔を切り取った写真が素晴らしいですね。
テキサスまで行くとだいぶ蝶相も変わるようですね。
Commented by 虫林 at 2011-03-05 19:24 x
dragonbutterさん、
以前はデジカメが無かったので、なかなか撮影しようという気にならなかったですね。北米もテキサスだと一年中蝶が飛んでいるみたいです。是非とも次に渡米されるときはカメラ持参でお出かけください。
Commented by himeoo27 at 2011-03-05 20:31
アゲハチョウの仲間はどれも個性的ですね!私は「トラフアゲハ」が好みです。
Commented by bjynp at 2011-03-06 08:37
虫林さん、こんにちは
オオムラサキシジミ、面白いですね。でも、お腹を食べられないか心配してしまいます(笑)。
アッキーマッキー
Commented by grassmonblue at 2011-03-06 20:10 x
サンアントニオ植物園 、すばらしいところですね。
ひと味もふた味も違うチョウたち、それも樹木の花にくる子が多いんですね。テキサスの青空バックがたまりません。
オオムラサキシジミは尾部の擬態が立体的になっているのに驚きましたが、その様子が見事に写り込まれています。
Commented by naojjio at 2011-03-06 21:17 x
いやあ、またまたすごい画像ばかり。目が眩んでしまいます。
アゲハ3種素晴らしいですねえ。
特にトラフアゲハは素敵ですねえ。美しいとしか言いようがないですね。
メスクロキアゲハはマニア好みでしょうか。
それにしても虫林さんは飛翔写真が上手いです。
Commented by 虫林 at 2011-03-07 06:07 x
ヒメオオさん、
トラフアゲハはいつも飛び去る姿しか見ていなかったので、今回ゆっくり撮影できたことがとても嬉しかったです。
なかなか綺麗なアゲハですが、メスは黒いのがいるので、次回はメスを撮影してみたいです。
Commented by 虫林 at 2011-03-07 06:12 x
アッキーマッキーさん、
オオムラサキシジミのお腹は、オレンジ色なので驚きました。
かなり大きいシジミチョウなので、迫力がありますよ。
実はこの蝶の翅表は美しい青色なのですが、翅は一切開きませんでした。
Commented by 虫林 at 2011-03-07 06:15 x
grassmonblue さん、
サンアントニオの近くには、自然が残されていて、かつ花が咲く場所はあまり無いようです。この植物園はとにかく近くてゆっくりと撮影できます。入場料は8ドルでした。
オオムラサキシジミはユニークなので、結構長い間撮影しました。
Commented by 虫林 at 2011-03-07 06:19 x
naojjio さん、
トラフアゲハは新鮮な個体で、すべてオスでした。メスは黒いので、いつか撮影してみたいと思っています。メスクロキアゲハは少し古い個体が多く見られましたが、こちらも綺麗でした。
飛翔写真をお褒めいただき恐縮です。
by tyu-rinkazan | 2011-03-03 23:58 | Comments(14)