20111225 庭の擬態名人:アケビコノハ
2011年 12月 29日
<擬態考>
枯葉、小枝、樹皮などに化ける虫は多い。これは 擬態 mimicry と呼ばれ、昆虫たちが捕食者から身を守る手段だ。また、花にそっくりのカマキリのように獲物を捕るための擬態や毒を持つ別の昆虫に擬態するものもある。とにかく、昆虫たちはそれぞれ何かに擬態して生活しているといえるだろう。ひるがえって、ヒトをみると、やはり擬態は多い。例えば、女性の化粧や男性のカツラなどはある意味擬態といえるだろう。
虫林も時には虫のように「死んだふり擬態?」をしてみるのだが、残念ながらすぐばれてしまう。
擬態が下手だと人間界で生きていくのも楽ではないな。
**********************************************************
Nature Diary #425
拙宅の小さな庭には大きなケヤキがあって、冬には山のように落ち葉がでる。
日曜日の午前中は家内と一緒に落ち葉をかき集めて袋に入れる作業を行った。
以前ならば、集めた落ち葉で焚火(落ち葉焚き)して、サツマイモを焼いて食べるという楽しみもあったけれど、昨今では、住宅地の中で焚火でもしようものなら近所からたちまち苦情が出るか、火事と間違われて消防署に通報されるのが落ちだろう。寒い時期の焚火はとても楽しいのにな。
» アケビコノハ; Adris tyrannus
ブツブツいいながら庭の枯葉を集めていると、一緒に作業していた家内が「大きな蛾がいたよ」と呼びにきた。どれどれと見に行くと、「この辺りにいたはずなのに----」と探している。しばらくして、「見つけたよ」の声に指さす場所をみると、なんとそこには 擬態の名人(名蛾?)アケビコノハがいた。アケビコノハを枯葉の中で見つけるとは、家内の眼力は何ともすごいものだ。
アケビコノハのようなフォトジェニック photogenic な虫を見つけたとなると落ち葉集めどころでない。早速、部屋に戻ってカメラを持ち出してこのアケビコノハを撮影することにした。
► 枯葉とアケビコノハ Adris tyrannus
.
Ricoh GXR, S10, ASA100 (Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
枯葉に擬態する虫は多い(たとえばコノハチョウ、カレハカマキリなど)。
アケビコノハも枯葉に擬態する虫のひとつで、暗褐灰色の枯葉色の色彩に加えて、形も枯れ葉にそっくりだ、さらにご丁寧なことに、翅には葉脈のようなスジまで入っているのだから驚く。
► 枯葉とアケビコノハ Adris tyrannus
.
Canon 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400
(Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
斜め前からクローズアップすると。前胸背がフリルのように少し広がっていて、まるで、白亜紀の有名な恐竜トリケラトプス(Triceratops)に少し似ている気もしてくる。
昆虫たちを写真でクローズアップしてみると、しばしば驚くような迫力がでてくるから面白い。
► アケビコノハ Adris tyrannus
.
Ricoh GXR, S10, ASA100 (Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
刺激するとアケビコノハは翅を開く。
そこで、小枝で少しツンツンとしてみた-----すると、枯葉色の地味な翅の下から鮮やかな黄橙色の地に黒い紋を配した後翅を見せてくれた。後翅の色彩を見ると蛾の仲間でも人気が高いカトカラ(Catocala)のようだ。
► 開翅するアケビコノハ Adris tyrannus
.
Canon 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400
(Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
ついでに、裏面の様子も撮影してみた。
驚いたのは、あの地味な前翅の裏は後翅のように黄色で黒い紋が入っていることだ。
► アケビコノハ Adris tyrannus の翅裏
.
Ricoh GXR, S10, ASA100 (Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
頭部をクローズアップすると、口唇髭が角のように伸びている----ユニークだな。
アケビコノハの頭部は何ともヘンテコリンな形で面白い。
► アケビコノハAdris tyrannus のクローズアップ
.
Canon 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400
(Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
» キノカワガ; Blenina senex
昨年、キノカワガを見つけた川に面したケヤキの木にも行ってみた。
ここには何本もの大きなケヤキがあるがキノカワガを見るのはその中の1本だけだ。
どうしてその木ばかりにキノカワガが集まるのか今もってよくわからない。
► キノカワガが集まるケヤキ Blenina senex
.
Ricoh GXR, S10, ASA100 (Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
キノカワガの樹皮擬態は本当に巧みなので、偶然に見つけることは難しい。でも、1頭見つけると、そこには複数の個体を見ることが多い。ファインダーで見る樹皮に4頭のキノカワガが入った。
普通に写真を掲載するとその存在が不明瞭なので、黄色い円でそこを囲ってみた。
► 樹皮に静止するキノカワガ Blenina senex
.
Ricoh GXR, S10, ASA100 (Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
この時期になると、他の昆虫たちが少なくなるので、キノカワガを撮影してみたくなる。今年は数週間前にも新たなポイントを見つけたので、どうやらいるところにはいるようだ。
キノカワガをクローズアップすると、しみじみ樹皮に良く似ているなと思う。
► キノカワガ Blenina senex
.
Canon 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400
(Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
► キノカワガ Blenina senex
.
Canon 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400
(Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
§ Afterword §
今年も残り少なくなり、気候はすでに冬そのものだ。こんなときには、暖かい土地で南国の昆虫たちと戯れて見たくなる。でも、日本の自然は四季がはっきりしていて、冬には冬の魅力があるのも事実だ。
もうすぐ冬期休暇になるが、真冬のフィールドをノンビリとカメラ片手に歩くのも悪くない。
以上、 by 虫林花山
枯葉、小枝、樹皮などに化ける虫は多い。これは 擬態 mimicry と呼ばれ、昆虫たちが捕食者から身を守る手段だ。また、花にそっくりのカマキリのように獲物を捕るための擬態や毒を持つ別の昆虫に擬態するものもある。とにかく、昆虫たちはそれぞれ何かに擬態して生活しているといえるだろう。ひるがえって、ヒトをみると、やはり擬態は多い。例えば、女性の化粧や男性のカツラなどはある意味擬態といえるだろう。
虫林も時には虫のように「死んだふり擬態?」をしてみるのだが、残念ながらすぐばれてしまう。
擬態が下手だと人間界で生きていくのも楽ではないな。
Nature Diary #425
拙宅の小さな庭には大きなケヤキがあって、冬には山のように落ち葉がでる。
日曜日の午前中は家内と一緒に落ち葉をかき集めて袋に入れる作業を行った。
以前ならば、集めた落ち葉で焚火(落ち葉焚き)して、サツマイモを焼いて食べるという楽しみもあったけれど、昨今では、住宅地の中で焚火でもしようものなら近所からたちまち苦情が出るか、火事と間違われて消防署に通報されるのが落ちだろう。寒い時期の焚火はとても楽しいのにな。
» アケビコノハ; Adris tyrannus
ブツブツいいながら庭の枯葉を集めていると、一緒に作業していた家内が「大きな蛾がいたよ」と呼びにきた。どれどれと見に行くと、「この辺りにいたはずなのに----」と探している。しばらくして、「見つけたよ」の声に指さす場所をみると、なんとそこには 擬態の名人(名蛾?)アケビコノハがいた。アケビコノハを枯葉の中で見つけるとは、家内の眼力は何ともすごいものだ。
アケビコノハのようなフォトジェニック photogenic な虫を見つけたとなると落ち葉集めどころでない。早速、部屋に戻ってカメラを持ち出してこのアケビコノハを撮影することにした。
.
Ricoh GXR, S10, ASA100 (Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
枯葉に擬態する虫は多い(たとえばコノハチョウ、カレハカマキリなど)。
アケビコノハも枯葉に擬態する虫のひとつで、暗褐灰色の枯葉色の色彩に加えて、形も枯れ葉にそっくりだ、さらにご丁寧なことに、翅には葉脈のようなスジまで入っているのだから驚く。
.
Canon 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400
(Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
斜め前からクローズアップすると。前胸背がフリルのように少し広がっていて、まるで、白亜紀の有名な恐竜トリケラトプス(Triceratops)に少し似ている気もしてくる。
昆虫たちを写真でクローズアップしてみると、しばしば驚くような迫力がでてくるから面白い。
.
Ricoh GXR, S10, ASA100 (Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
刺激するとアケビコノハは翅を開く。
そこで、小枝で少しツンツンとしてみた-----すると、枯葉色の地味な翅の下から鮮やかな黄橙色の地に黒い紋を配した後翅を見せてくれた。後翅の色彩を見ると蛾の仲間でも人気が高いカトカラ(Catocala)のようだ。
.
Canon 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400
(Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
ついでに、裏面の様子も撮影してみた。
驚いたのは、あの地味な前翅の裏は後翅のように黄色で黒い紋が入っていることだ。
.
Ricoh GXR, S10, ASA100 (Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
頭部をクローズアップすると、口唇髭が角のように伸びている----ユニークだな。
アケビコノハの頭部は何ともヘンテコリンな形で面白い。
.
Canon 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400
(Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
» キノカワガ; Blenina senex
昨年、キノカワガを見つけた川に面したケヤキの木にも行ってみた。
ここには何本もの大きなケヤキがあるがキノカワガを見るのはその中の1本だけだ。
どうしてその木ばかりにキノカワガが集まるのか今もってよくわからない。
.
Ricoh GXR, S10, ASA100 (Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
キノカワガの樹皮擬態は本当に巧みなので、偶然に見つけることは難しい。でも、1頭見つけると、そこには複数の個体を見ることが多い。ファインダーで見る樹皮に4頭のキノカワガが入った。
普通に写真を掲載するとその存在が不明瞭なので、黄色い円でそこを囲ってみた。
.
Ricoh GXR, S10, ASA100 (Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
この時期になると、他の昆虫たちが少なくなるので、キノカワガを撮影してみたくなる。今年は数週間前にも新たなポイントを見つけたので、どうやらいるところにはいるようだ。
キノカワガをクローズアップすると、しみじみ樹皮に良く似ているなと思う。
.
Canon 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400
(Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
.
Canon 7D, EF 100mm F2.8L Macro IS USM, ASA400
(Kofu-shi in Yamanashi、December 25th, 2011)
§ Afterword §
今年も残り少なくなり、気候はすでに冬そのものだ。こんなときには、暖かい土地で南国の昆虫たちと戯れて見たくなる。でも、日本の自然は四季がはっきりしていて、冬には冬の魅力があるのも事実だ。
もうすぐ冬期休暇になるが、真冬のフィールドをノンビリとカメラ片手に歩くのも悪くない。
以上、 by 虫林花山
アケビコノハもキノカワガも凄い擬態ですね。
良く見つけられると感心します。
また詳しく見れると、綺麗だし、面白いですね。
良く見つけられると感心します。
また詳しく見れると、綺麗だし、面白いですね。
0
感動しました。
まず、どうやったらアケビコノハをみつけらるんだろう。
次に、葉っぱに見えるのは前翅の表側だったんですね。裏面だと思ってました。それに裏面が黄色だとは!
キノカワガ、埼玉チームの皆さんのBlogに上がってましたが、これも見てみたいです。
まず、どうやったらアケビコノハをみつけらるんだろう。
次に、葉っぱに見えるのは前翅の表側だったんですね。裏面だと思ってました。それに裏面が黄色だとは!
キノカワガ、埼玉チームの皆さんのBlogに上がってましたが、これも見てみたいです。
22wn3288 さん、
コメント有難うございます。
アケビコノハとキノカワガの擬態にはいつも驚いています。
今回は家内が見つけてくれたので、撮影することができました。
アケビコノハはとても綺麗です。
コメント有難うございます。
アケビコノハとキノカワガの擬態にはいつも驚いています。
今回は家内が見つけてくれたので、撮影することができました。
アケビコノハはとても綺麗です。
ごまさん、
コメント有難うございます。
アケビコノハは今年はこれで2回目ですが、1回目は明りの横に止まっていました。今回は家内が見つけてくれたので撮影できました。なかなか安定してみることができない蛾です。
キノカワガは、ポイントを見つければ、意外に毎年見ることができます。
コメント有難うございます。
アケビコノハは今年はこれで2回目ですが、1回目は明りの横に止まっていました。今回は家内が見つけてくれたので撮影できました。なかなか安定してみることができない蛾です。
キノカワガは、ポイントを見つければ、意外に毎年見ることができます。
私はアケビコノハとは相性がいいのか今までにずいぶん出逢ってきました。でもこんな風にちゃんと写真に収めた事がありません。
最後のクローズアップは本当に凄いです。
一体どんなシステムで撮影されたのだろうと思ってデータを拝見すると100マクロなんですね。しっかり撮ればこういう風に写るというお手本みたいです。
複眼の樹木の年輪のような模様に引きつけられました。
最後のクローズアップは本当に凄いです。
一体どんなシステムで撮影されたのだろうと思ってデータを拝見すると100マクロなんですね。しっかり撮ればこういう風に写るというお手本みたいです。
複眼の樹木の年輪のような模様に引きつけられました。
naoggioさん、
コメント有難うございます。
アケビコノハは相性が悪いとなかなか見ることができませんね。僕は昨年までは見ることができませんでした。キャノンのカメラはこの100mmマクロを使用するためにかったようなものです。やはりlクローズアップには3脚が必要ですが、ピントが合うととてもシャープですね。
コメント有難うございます。
アケビコノハは相性が悪いとなかなか見ることができませんね。僕は昨年までは見ることができませんでした。キャノンのカメラはこの100mmマクロを使用するためにかったようなものです。やはりlクローズアップには3脚が必要ですが、ピントが合うととてもシャープですね。
Commented
by
himeoo27 at 2012-01-03 09:48
キノカワガ一目4頭は素晴らしいですね!
アケビコノハ接写素晴らしいです。私は西表島で31日アケビコノハの仲間の「キマエコノハ」を見つけることが出来ました。
アケビコノハ接写素晴らしいです。私は西表島で31日アケビコノハの仲間の「キマエコノハ」を見つけることが出来ました。
Commented
by
itotonbosan
at 2013-12-20 05:50
x
私はアケビコノハを見つけたとき,
何故こんな所に枯れ葉があるのだろうと思いました。
よく見たらアケビコノハだったので驚きました。
後翅の黄色が鮮やかで,また驚きました。
幼虫も運良く見つけました。
目玉模様が2対もあってまたまた驚きました。
アケビコノハとの出会いは驚きの連続でした。
何故こんな所に枯れ葉があるのだろうと思いました。
よく見たらアケビコノハだったので驚きました。
後翅の黄色が鮮やかで,また驚きました。
幼虫も運良く見つけました。
目玉模様が2対もあってまたまた驚きました。
アケビコノハとの出会いは驚きの連続でした。
Commented
by
虫林
at 2013-12-20 07:21
x
Commented
by
itotonbosan
at 2014-04-19 16:20
x
by tyu-rinkazan
| 2011-12-29 02:30
|
Comments(10)