20120429 信州と越後上越の散歩道:ギフとヒメギフ
2012年 04月 30日
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Nature Diary 7(20):#445
<出版記念会>
土曜日(27日)は「フィールドガイド 日本のチョウ(日本チョウ類保全協会編)」の出版記念会が品川で催された。ちょうど学会出張で東京に滞在していたので、記念会には出席できなかったものの、無理やり時間調整して、記念会の二次会に駆け付けた。2次会は出版された本の話や虫好き仲間との蝶談義で盛り上がった。また昆虫写真家の海野和男さんにはメレ山メレ子さん「メレンゲが腐るほど恋したい」を紹介され、楽しさに時間を忘れて危なく甲府行の特急電車に乗り遅れるところだった。皆さん、ご苦労様でした。
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明けて日曜日の早朝6時には白馬村にいた----少し疲れた。
やっと雪が融け、小川の土手には沢山のフキノトウや土筆が伸び、見渡せば白馬の連山。
今日の白馬は春の女神「フローラ」が季節の遅れを取り戻そうとして突然ダッシュしたかのようにみえる。ちなみに、ミドリシジミでおなじみの西風の神「ゼフィルス」はフローラを追いかけて結婚したそうだ。フローラは美人でかつダッシュがけっこう速いに違いない----本当かよ?
► 朝の白馬連山
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Morning view of Shirouma
Canon 7D, Sigma 24mm, ISO400 (2012-Apr-29, Hakuba-mura in Nagano)
ギフチョウ; The Luehdorfia
蝶友の kmkurobeさん(安曇野の蝶と自然)とのギフチョウ撮影は今年2回目になる。訪れた場所は2週間前に雪が残っていて入れなかった越後上越の林道だ。今回は雪も無く、ちょうど桜が満開で、林床には多数のタチツボスミレやショウジョウバカマなどの花々が咲いていた。ここには春の花の定番のカタクリは無いけど、足場も良く、食草も豊富でギフチョウ撮影ポイントとしては一級だ。
林床に群生するタチツボスミレの花にはギフチョウたちが三々五々に訪れていた。でも、本日は気温が高いためか(7月上旬並みの陽気)それとも思わせぶりな態度であざ笑っているのかわからないが、ギフチョウたちはいかにも止まりそうな飛び方をするがなかなか静止してくれない。
気が短い虫林にはけっこうこたえる。
► 吸蜜するギフチョウ
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A male of the Luehdorfia nectering from the violet follower.
Canon 7D, EF 300mm F4L IS USM, ISO400 (2012-Apr-29, Echigo-johetsu, Niigata)
新鮮な♀個体がゆっくり飛んで小枝に静止した。メスの飛翔はオスに比較して穏やかでいいよね。みると、腹部に受胎嚢(矢印)とよばれる黒いシールが付いている(写真下)。受胎嚢とはようするに貞操帯のことだ。交尾する時にオスの分泌物で作られるらしい。
面白いことに受胎嚢の色はギフチョウでは黒色だがヒメギフチョウでは茶色。
► 小枝に静止するギフチョウ♀
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A female of the Luehdorfia resting on the branch l
Canon 7D, EF 300mm F4L IS USM, ISO400 (2012-Apr-29,Echigo-johetsu, Niigata)
この場所の食草のカンアオイの葉は大人の手の平ほどもある。kmkurobeさんによればこの大きなカンアオイは「クビキカンアオイ」というらしい。白馬のカンアオイはとても小さく、富士川流域のものはその中間ぐらいかな。カンアオイと一口にいってもえらく違うものだね。
いかにも怪しい飛び方をする個体を見つけた。
追跡していくと、どうも産卵したいみたいで、ちょっと止まっては葉の様子を見ているようだ。とうとう、まだ開ききらない新葉を見つけてつかまるようにして産卵を始めてくれた。写真下は同じ個体を違う角度から撮影したものだ。
► ギフチョウの産卵
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A female of the Luehdorfia egglying on the feeding plant leaf.
Canon 7D, EF 300mm F4L IS USM, ISO400 (2012-Apr-29,Echigo-johetsu, Niigata)
ヒメギフチョウ; The Small Luehdorfia
白馬村のお目当ての桜の花は、八分咲きからほぼ満開。ちょうどkontyさんも来られていたので、一緒にヒメギフチョウの桜撮影を楽しんだ。
ヒメギフチョウは三々五々に桜の花を訪れたが、吸蜜時間は意外に短いので撮影するのが難しかった。ここにはソメイヨシノもあるけど、ヒメギフはこのんでピンクの桜(オオシマザクラ??)の花を訪れていた。ピンクの桜とヒメギフチョウと青い空の組み合わせは心がうずくな。
しかし、撮影が難しい。
► 桜の花で吸蜜するヒメギフチョウ
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The Small Luehdorfia nectering from cherry flowers
Canon 7D, EF 300mm F4L IS USM, ISO400 (2012-Apr-29, Hakuba-mura, Nagano)
新鮮な♀個体を見つけた。ゆっくりと旋回するするように飛んで、枯れ草や小枝に静止する。みると、この個体は腹部に受胎嚢を付けていないようだ(未交尾)。もしかして-----。
► 小枝に静止する未交尾の♀
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A fresh female of the Small Luehdorfia
Canon 7D, EF 300mm F4L IS USM, ISO400 (2012-Apr-29, Hakuba-mura, Nagano)
前の写真の未交尾♀個体を追いかけていたら、突然にオスが現れて水仙の葉で交尾になった。嬉しいことにオスの個体も新鮮で美しい。産卵シーンはある程度予想して撮影できるが、交尾シーンは運が良くないと見ることができないと思う。
► 交尾するヒメギフチョウ
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Mating behavior of the Small Luehdorfia
Canon 7D, EF 300mm F4L IS USM, ISO400 (2012-Apr-29, Hakuba-mura, Nagano)
► 交尾後のヒメギフチョウ♀ A female of the Small Luehdorfia after mating behavior.
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交尾後に枝につかまる♀。腹部に茶色の受胎嚢がすでに付着しているのがわかる。 事情を知っている虫林には何となくさびしそうな様子に見えるが----。
Ricoh GXR IV, ISO100 (2012-Apr-29, Hakuba-mura, Nagano)
§ Afterword §
今回もかなりのタイトなスケジュールになった。サメは生きるために泳ぎ続け、虫林は生きるためにフィールドに----意味不明。とにかく、忙しい日々の中での週末のフィールド散歩は、僕にとっては一種のカンフル剤(アドレナリン)注射のようなものなのだ。
今回もkmkurobeさんにお世話になりました。また、奥様にもお付き合いいただき感謝します。
楽しい一日でした。
以上、 by 虫林花山
Nature Diary 7(20):#445
<出版記念会>
土曜日(27日)は「フィールドガイド 日本のチョウ(日本チョウ類保全協会編)」の出版記念会が品川で催された。ちょうど学会出張で東京に滞在していたので、記念会には出席できなかったものの、無理やり時間調整して、記念会の二次会に駆け付けた。2次会は出版された本の話や虫好き仲間との蝶談義で盛り上がった。また昆虫写真家の海野和男さんにはメレ山メレ子さん「メレンゲが腐るほど恋したい」を紹介され、楽しさに時間を忘れて危なく甲府行の特急電車に乗り遅れるところだった。皆さん、ご苦労様でした。
明けて日曜日の早朝6時には白馬村にいた----少し疲れた。
やっと雪が融け、小川の土手には沢山のフキノトウや土筆が伸び、見渡せば白馬の連山。
今日の白馬は春の女神「フローラ」が季節の遅れを取り戻そうとして突然ダッシュしたかのようにみえる。ちなみに、ミドリシジミでおなじみの西風の神「ゼフィルス」はフローラを追いかけて結婚したそうだ。フローラは美人でかつダッシュがけっこう速いに違いない----本当かよ?
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Morning view of Shirouma
Canon 7D, Sigma 24mm, ISO400 (2012-Apr-29, Hakuba-mura in Nagano)
ギフチョウ; The Luehdorfia
蝶友の kmkurobeさん(安曇野の蝶と自然)とのギフチョウ撮影は今年2回目になる。訪れた場所は2週間前に雪が残っていて入れなかった越後上越の林道だ。今回は雪も無く、ちょうど桜が満開で、林床には多数のタチツボスミレやショウジョウバカマなどの花々が咲いていた。ここには春の花の定番のカタクリは無いけど、足場も良く、食草も豊富でギフチョウ撮影ポイントとしては一級だ。
林床に群生するタチツボスミレの花にはギフチョウたちが三々五々に訪れていた。でも、本日は気温が高いためか(7月上旬並みの陽気)それとも思わせぶりな態度であざ笑っているのかわからないが、ギフチョウたちはいかにも止まりそうな飛び方をするがなかなか静止してくれない。
気が短い虫林にはけっこうこたえる。
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A male of the Luehdorfia nectering from the violet follower.
Canon 7D, EF 300mm F4L IS USM, ISO400 (2012-Apr-29, Echigo-johetsu, Niigata)
新鮮な♀個体がゆっくり飛んで小枝に静止した。メスの飛翔はオスに比較して穏やかでいいよね。みると、腹部に受胎嚢(矢印)とよばれる黒いシールが付いている(写真下)。受胎嚢とはようするに貞操帯のことだ。交尾する時にオスの分泌物で作られるらしい。
面白いことに受胎嚢の色はギフチョウでは黒色だがヒメギフチョウでは茶色。
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A female of the Luehdorfia resting on the branch l
Canon 7D, EF 300mm F4L IS USM, ISO400 (2012-Apr-29,Echigo-johetsu, Niigata)
この場所の食草のカンアオイの葉は大人の手の平ほどもある。kmkurobeさんによればこの大きなカンアオイは「クビキカンアオイ」というらしい。白馬のカンアオイはとても小さく、富士川流域のものはその中間ぐらいかな。カンアオイと一口にいってもえらく違うものだね。
いかにも怪しい飛び方をする個体を見つけた。
追跡していくと、どうも産卵したいみたいで、ちょっと止まっては葉の様子を見ているようだ。とうとう、まだ開ききらない新葉を見つけてつかまるようにして産卵を始めてくれた。写真下は同じ個体を違う角度から撮影したものだ。
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A female of the Luehdorfia egglying on the feeding plant leaf.
Canon 7D, EF 300mm F4L IS USM, ISO400 (2012-Apr-29,Echigo-johetsu, Niigata)
ヒメギフチョウ; The Small Luehdorfia
白馬村のお目当ての桜の花は、八分咲きからほぼ満開。ちょうどkontyさんも来られていたので、一緒にヒメギフチョウの桜撮影を楽しんだ。
ヒメギフチョウは三々五々に桜の花を訪れたが、吸蜜時間は意外に短いので撮影するのが難しかった。ここにはソメイヨシノもあるけど、ヒメギフはこのんでピンクの桜(オオシマザクラ??)の花を訪れていた。ピンクの桜とヒメギフチョウと青い空の組み合わせは心がうずくな。
しかし、撮影が難しい。
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The Small Luehdorfia nectering from cherry flowers
Canon 7D, EF 300mm F4L IS USM, ISO400 (2012-Apr-29, Hakuba-mura, Nagano)
新鮮な♀個体を見つけた。ゆっくりと旋回するするように飛んで、枯れ草や小枝に静止する。みると、この個体は腹部に受胎嚢を付けていないようだ(未交尾)。もしかして-----。
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A fresh female of the Small Luehdorfia
Canon 7D, EF 300mm F4L IS USM, ISO400 (2012-Apr-29, Hakuba-mura, Nagano)
前の写真の未交尾♀個体を追いかけていたら、突然にオスが現れて水仙の葉で交尾になった。嬉しいことにオスの個体も新鮮で美しい。産卵シーンはある程度予想して撮影できるが、交尾シーンは運が良くないと見ることができないと思う。
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Mating behavior of the Small Luehdorfia
Canon 7D, EF 300mm F4L IS USM, ISO400 (2012-Apr-29, Hakuba-mura, Nagano)
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交尾後に枝につかまる♀。腹部に茶色の受胎嚢がすでに付着しているのがわかる。 事情を知っている虫林には何となくさびしそうな様子に見えるが----。
Ricoh GXR IV, ISO100 (2012-Apr-29, Hakuba-mura, Nagano)
§ Afterword §
今回もかなりのタイトなスケジュールになった。サメは生きるために泳ぎ続け、虫林は生きるためにフィールドに----意味不明。とにかく、忙しい日々の中での週末のフィールド散歩は、僕にとっては一種のカンフル剤(アドレナリン)注射のようなものなのだ。
今回もkmkurobeさんにお世話になりました。また、奥様にもお付き合いいただき感謝します。
楽しい一日でした。
以上、 by 虫林花山
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kmkurobe
at 2012-05-01 09:06
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お疲れ様でした。産卵はあの角度からでも卵にバッチリ、ピントが来ていますね。楽しい一日を過ごさせて頂きました。
連勝街道ばく進ですね。次回もがんばりましょう。
連勝街道ばく進ですね。次回もがんばりましょう。
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himeoo27 at 2012-05-01 20:46
Kmkurobeさん、
お世話になりました。
林道全体が貸切のような状態で、ゆっくりと撮影できるのがとても良いですね。また予想以上に産卵や交尾などの生態面での観察も出来てとても良かったですね。
今後とも宜しくお願いします。
お世話になりました。
林道全体が貸切のような状態で、ゆっくりと撮影できるのがとても良いですね。また予想以上に産卵や交尾などの生態面での観察も出来てとても良かったですね。
今後とも宜しくお願いします。
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chochoensis
at 2012-05-02 11:57
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虫林さん、出版記念会の会合・・・おつかれさまでした。小生は行くことが出来なかったので、とりあえず=5冊=発送依頼してしまいました。
ギフの産卵・ヒメギフの交尾・・・いずれも素晴らしい写真ですね!
ギフの産卵・ヒメギフの交尾・・・いずれも素晴らしい写真ですね!
虫林san、こんばんは。
「にほんのチョウ」はアマゾンで注文しているのですが、まだ届きません。
ギフにヒメギフ。華やかで羨ましい限りです。GW最後に安曇野方面へ行くので、観られたらうれしいのですが・・・。
「にほんのチョウ」はアマゾンで注文しているのですが、まだ届きません。
ギフにヒメギフ。華やかで羨ましい限りです。GW最後に安曇野方面へ行くので、観られたらうれしいのですが・・・。
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konty33 at 2012-05-03 00:12
桜の場所ではお世話になりました。桜の吸蜜は綺麗に撮れていますね。
今回は、正面向いた画像がなくて残念でした。何回か通っていますが吸蜜時間、角度、距離と3拍子揃うのは難しいですね。
上越のギフチョウの♀は、やはりもの凄く綺麗です。
今回は、正面向いた画像がなくて残念でした。何回か通っていますが吸蜜時間、角度、距離と3拍子揃うのは難しいですね。
上越のギフチョウの♀は、やはりもの凄く綺麗です。
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thecla
at 2012-05-03 09:15
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出版記念の2次会お疲れ様でした。昨シーズンはすれ違いが多く、お会いするのは久しぶりでうれしかったです。
ギフ・ヒメギフ、交尾・産卵も含め華やかでうらやましいです。
ギフ・ヒメギフ、交尾・産卵も含め華やかでうらやましいです。
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Sippo5655 at 2012-05-03 22:45
こんばんは!
先日は大変お世話になりました!
ヒメギフチョウの交尾シーン、、凄いですね!
私、ギフチョウしか見たことがありません。
また、ラストの女の子のシーン・・・じーんときちゃいました。
何を想うのか 乙女心(´▽`*)
リンク頂きました、これからどうぞよろしくお願いいたします♪
先日は大変お世話になりました!
ヒメギフチョウの交尾シーン、、凄いですね!
私、ギフチョウしか見たことがありません。
また、ラストの女の子のシーン・・・じーんときちゃいました。
何を想うのか 乙女心(´▽`*)
リンク頂きました、これからどうぞよろしくお願いいたします♪
chochoensisさん、
コメント有難うございます。
出版記念会には重要な会議があって出れませんでしたが、2次会には何とか出ることができました。お会いできなくて残念です。
ギフはヒメギフは毎年撮影していますが、嬉しいですね。
コメント有難うございます。
出版記念会には重要な会議があって出れませんでしたが、2次会には何とか出ることができました。お会いできなくて残念です。
ギフはヒメギフは毎年撮影していますが、嬉しいですね。
Shippoさん、
2次会でお会いできてとても楽しかったです。
こちらこそ宜しくお願いします。
ギフとヒメギフは毎年撮影していますが、やはり撮影できると嬉しい蝶ですね。ヒメギフはこれからシーズンですので、是非とも撮影してくださいね。ギフと少し違った趣がありますよ。
今後ともどうぞ宜しくお願いします。
2次会でお会いできてとても楽しかったです。
こちらこそ宜しくお願いします。
ギフとヒメギフは毎年撮影していますが、やはり撮影できると嬉しい蝶ですね。ヒメギフはこれからシーズンですので、是非とも撮影してくださいね。ギフと少し違った趣がありますよ。
今後ともどうぞ宜しくお願いします。
by tyu-rinkazan
| 2012-04-30 22:52
| ▣ギフ
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Comments(18)