20130406 夜の散歩道:エゾヨツメとオオシモフリスズメ
2013年 04月 06日
▊虫眼鏡ノート:
ノーベル賞作家 ヘルマンヘッセの 「少年の日の思い出」 という短編は、「クジャクヤママユ」という綺麗な蛾を友達から思わず盗んでしまった少年のことが哀しくも美しく描かれています。これを読むと、ヨーロッパ(舞台はドイツ)では、蛾と蝶は同等に扱われていることがわかります。さて、日本ではどうでしょうか?-------蝶は好きだけど、蛾はちょっとねという人がとても多いと思います(偏見かな)。
いつか、少年をこれほどまでに狂わせた蛾を実際に見てみたいものです。
**************************************************************************************************** ▊Diary ▊
春爛漫。
色が変わった、音が変わった、風が変わった、空気の香りが変わった-----でも天気がね。
█ エゾヨツメ Aglia japonica microtau
夜、自宅からほど近い武田の杜に行ってみた。
道の脇の灯火に春のヤママユ「エゾヨツメ」が飛来した。
エゾヨツメは日本産のヤママユの中で最も小さくて、雄は開張が6cmほどしか無い。
日本のヤママユの中で唯一春に出現して、日没後すぐに灯火に飛来する習性がある。
本州産は microtau という亜種になるそうだ。
灯火に飛来する蛾の飛翔は意外に速くて、その撮影は難しい。
ストロボ光を工夫しながら何とか写すことができた。
▶灯火の周りを飛ぶエゾヨツメ本州以南亜種.. Aglia japonica microtau .
Canon EOS 7D, EF100mm Macro, Flash(+), April-05-2013, Kofu, Yamanashi
蛾は一般的に翅を開いて静止するが、このエゾヨツメは蝶のように翅を閉じている。
電灯がある場所は高台になっているので、木の枝の間から見える甲府市内の夜景が美しい。
▶電柱に静止するエゾヨツメ本州以南亜種.. Aglia japonica microtau .
Canon EOS 7D, EF100mm Macro, Flash(+), April-05-2013, Kofu, Yamanashi
早春にだけ発生する蝶や蛾は、防寒のためか体に長い毛を持つものが多い。
例えばギフチョウやコツバメ、ミヤマセセリなども体毛は長くて密だ。エゾヨツメも体の毛がとても長くて、まるで高級なミンクのコートでも羽織っているように見える--------暖かそうだ。
▶電柱に静止するエゾヨツメ本州以南亜種.. Aglia japonica microtau .
Canon EOS 7D, EF100mm Macro, Flash(+), April-05-2013, Kofu, Yamanashi
翅を閉じているショットばかりでは面白くないので、少し刺激して翅を開いてもらった。
エゾヨツメは北海道で最初に見つかったので、エゾという名前がついた。さらに翅には明瞭な4つの紋があるのでエゾヨツメということだ。そのまんまの名前だ。
▶静止するエゾヨツメ本州以南亜種.. Aglia japonica microtau .
Canon EOS 7D, EF100mm Macro, Flash(+), April-05-2013, Kofu, Yamanashi
█ オオシモフリスズメ Langia zenzeroides
この時期、ギフチョウが昼の主役なら、夜の主役はオオシモフリスズメ-------かな?
オオシモフリスズメは、以前から是非とも撮影してみたいと思っていたモンスター級スズメガだ(日本のスズメガの中で最大で、開張16cmに達する)。春の早い時期だけに出現するのでスプリングエフェメラルといってもよい。そこで、以前に記事を出されている「ふしあな日記」の Spaticaさん にご教示いただき、長野県南部(多分、北限)の発生地を訪れた。
自宅からはかなり距離があるので、現地に到着したのは12時近くになった。
時期的に少し早めかなと思っていたが、春のモンスター君はちゃんと出迎えてくれた。
▶自販機を訪れたオオシモフリスズメ.. Langia zenzeroides .
Canon EOS 60D, Sigma 8mm Fisheye, Flash(+), April-06-2013, Nagano
▶ガラスの横に静止するオオシモフリスズメ.. Langia zenzeroides .
Canon EOS 60D, Sigma 8mm Fisheye, Flash(+), April-06-2013, Nagano
白と灰色を基調にして流れるような霜降り模様は意外に気品が高い。
上からよりも横から見た方が迫力がある。
▶オオシモフリスズメ.. Langia zenzeroides .
Canon EOS 7D, EF100mm Macro, Flash(+), April-06-2013, Nagano
オオシモフリスズメには吻(ストロー)が無い。
彼らは生殖のためだけに春の一時期に羽化する。
正面から見ると、どこか動物の顔(牛?)に似ている。
▶オオシモフリスズメ.. Langia zenzeroides .
Canon EOS 7D, EF100mm Macro, Flash(+), April-06-2013, Nagano
▊Afterword ▊
エゾヨツメ、イボタガ、オオシモフリスズメは春だけに発生する大型美麗種で是非とも撮影してみたいと思っていた。実はオオシモフリスズメの場所ではイボタガも見ることができたのは嬉しかった。
とにかく、あこがれの春のモンスター(オオシモフリスズメ)は美しくそして迫力満点だったな。
来年もまたこのモンスターに会うために、この地を訪れてみたいものだ。
ご教示いただいたSpaticaさんのおかげです-----感謝。
Nature Diary vol.8(18): #505
Written by 虫林花山
ノーベル賞作家 ヘルマンヘッセの 「少年の日の思い出」 という短編は、「クジャクヤママユ」という綺麗な蛾を友達から思わず盗んでしまった少年のことが哀しくも美しく描かれています。これを読むと、ヨーロッパ(舞台はドイツ)では、蛾と蝶は同等に扱われていることがわかります。さて、日本ではどうでしょうか?-------蝶は好きだけど、蛾はちょっとねという人がとても多いと思います(偏見かな)。
いつか、少年をこれほどまでに狂わせた蛾を実際に見てみたいものです。
春爛漫。
色が変わった、音が変わった、風が変わった、空気の香りが変わった-----でも天気がね。
█ エゾヨツメ Aglia japonica microtau
夜、自宅からほど近い武田の杜に行ってみた。
道の脇の灯火に春のヤママユ「エゾヨツメ」が飛来した。
エゾヨツメは日本産のヤママユの中で最も小さくて、雄は開張が6cmほどしか無い。
日本のヤママユの中で唯一春に出現して、日没後すぐに灯火に飛来する習性がある。
本州産は microtau という亜種になるそうだ。
灯火に飛来する蛾の飛翔は意外に速くて、その撮影は難しい。
ストロボ光を工夫しながら何とか写すことができた。
Canon EOS 7D, EF100mm Macro, Flash(+), April-05-2013, Kofu, Yamanashi
蛾は一般的に翅を開いて静止するが、このエゾヨツメは蝶のように翅を閉じている。
電灯がある場所は高台になっているので、木の枝の間から見える甲府市内の夜景が美しい。
Canon EOS 7D, EF100mm Macro, Flash(+), April-05-2013, Kofu, Yamanashi
早春にだけ発生する蝶や蛾は、防寒のためか体に長い毛を持つものが多い。
例えばギフチョウやコツバメ、ミヤマセセリなども体毛は長くて密だ。エゾヨツメも体の毛がとても長くて、まるで高級なミンクのコートでも羽織っているように見える--------暖かそうだ。
Canon EOS 7D, EF100mm Macro, Flash(+), April-05-2013, Kofu, Yamanashi
翅を閉じているショットばかりでは面白くないので、少し刺激して翅を開いてもらった。
エゾヨツメは北海道で最初に見つかったので、エゾという名前がついた。さらに翅には明瞭な4つの紋があるのでエゾヨツメということだ。そのまんまの名前だ。
Canon EOS 7D, EF100mm Macro, Flash(+), April-05-2013, Kofu, Yamanashi
█ オオシモフリスズメ Langia zenzeroides
この時期、ギフチョウが昼の主役なら、夜の主役はオオシモフリスズメ-------かな?
オオシモフリスズメは、以前から是非とも撮影してみたいと思っていたモンスター級スズメガだ(日本のスズメガの中で最大で、開張16cmに達する)。春の早い時期だけに出現するのでスプリングエフェメラルといってもよい。そこで、以前に記事を出されている「ふしあな日記」の Spaticaさん にご教示いただき、長野県南部(多分、北限)の発生地を訪れた。
自宅からはかなり距離があるので、現地に到着したのは12時近くになった。
時期的に少し早めかなと思っていたが、春のモンスター君はちゃんと出迎えてくれた。
Canon EOS 60D, Sigma 8mm Fisheye, Flash(+), April-06-2013, Nagano
Canon EOS 60D, Sigma 8mm Fisheye, Flash(+), April-06-2013, Nagano
白と灰色を基調にして流れるような霜降り模様は意外に気品が高い。
上からよりも横から見た方が迫力がある。
Canon EOS 7D, EF100mm Macro, Flash(+), April-06-2013, Nagano
オオシモフリスズメには吻(ストロー)が無い。
彼らは生殖のためだけに春の一時期に羽化する。
正面から見ると、どこか動物の顔(牛?)に似ている。
Canon EOS 7D, EF100mm Macro, Flash(+), April-06-2013, Nagano
▊Afterword ▊
エゾヨツメ、イボタガ、オオシモフリスズメは春だけに発生する大型美麗種で是非とも撮影してみたいと思っていた。実はオオシモフリスズメの場所ではイボタガも見ることができたのは嬉しかった。
とにかく、あこがれの春のモンスター(オオシモフリスズメ)は美しくそして迫力満点だったな。
来年もまたこのモンスターに会うために、この地を訪れてみたいものだ。
ご教示いただいたSpaticaさんのおかげです-----感謝。
Nature Diary vol.8(18): #505
Written by 虫林花山
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tamayam2 at 2013-04-06 16:55
春の貴重なモンスターたち、見せていただきありがとうございました。
西欧でチョウと蛾を区別しないということを知りました。蛾が気持ち悪い
と思いこむのは変ですよ。チョウ同様、美しい!ヘッセの本、読んでみたいです。
西欧でチョウと蛾を区別しないということを知りました。蛾が気持ち悪い
と思いこむのは変ですよ。チョウ同様、美しい!ヘッセの本、読んでみたいです。
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kmkurobe at 2013-04-06 22:19
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Sippo5655 at 2013-04-06 22:21
蛾の世界、、本当に奥が深いですね。
エゾヨツメ、しっとりとしたレンガのような翅ですね!
翅閉じて止まるのですね、私もいつか出会えたらいいな!
大きな蛾っていきなり見つけるとびっくりするけど、
彼らの世界って、どんな苦楽があるんだろう。
お日様は嫌いなの? どんな風に世界を見ているの?
聞いてみたくなります。
数年前、都会の交差点のそばの植え込みにすごく大きい
スズメガの仲間かなあ、、止まっていて。
蛾もびっくりして、飛んで止まった先が道路。
腹ばいになって撮影した私、、
かなり目立ってたはず(爆)
エゾヨツメ、しっとりとしたレンガのような翅ですね!
翅閉じて止まるのですね、私もいつか出会えたらいいな!
大きな蛾っていきなり見つけるとびっくりするけど、
彼らの世界って、どんな苦楽があるんだろう。
お日様は嫌いなの? どんな風に世界を見ているの?
聞いてみたくなります。
数年前、都会の交差点のそばの植え込みにすごく大きい
スズメガの仲間かなあ、、止まっていて。
蛾もびっくりして、飛んで止まった先が道路。
腹ばいになって撮影した私、、
かなり目立ってたはず(爆)
tamayamさん、
蛾にもかなり綺麗いな種類が数多くありますし、チョウとそれほど
大きな差が無いように思いますが、一般世間での印象は、蝶と蛾
には大きな差は存在するのも事実です。
ヘッセの本は是非ともご覧になることをお勧めします。
蛾にもかなり綺麗いな種類が数多くありますし、チョウとそれほど
大きな差が無いように思いますが、一般世間での印象は、蝶と蛾
には大きな差は存在するのも事実です。
ヘッセの本は是非ともご覧になることをお勧めします。
kmkurobeさん、
安曇野ではこれらの蛾が見れるのですね、僕にはなかなか
簡単にみることができずに苦労しました。でも、見つけると
やはり嬉しくなってしまいます。
エゾヨツメの飛翔写真はたまたまうまくいきました、再現性
に自信がありません。
安曇野ではこれらの蛾が見れるのですね、僕にはなかなか
簡単にみることができずに苦労しました。でも、見つけると
やはり嬉しくなってしまいます。
エゾヨツメの飛翔写真はたまたまうまくいきました、再現性
に自信がありません。
Shippoさん、
エゾヨツメはヤママユの仲間なのに小さくてかわいい蛾です
が、オオシモフリスズメは巨大で迫力が満点でした。
オオシモフリスズメは吻が無いので、吸蜜することはできず
生殖のためだけに発生してくるのも自然界の面白さが表れ
ているように思えます。現地ではオオシモフリスズメは地面
止まっているいる個体が多いので、腹這いになって周りを
気にせずに撮影しています。後で考えるちょっと恥ずかしい
かもしれません(笑)。
エゾヨツメはヤママユの仲間なのに小さくてかわいい蛾です
が、オオシモフリスズメは巨大で迫力が満点でした。
オオシモフリスズメは吻が無いので、吸蜜することはできず
生殖のためだけに発生してくるのも自然界の面白さが表れ
ているように思えます。現地ではオオシモフリスズメは地面
止まっているいる個体が多いので、腹這いになって周りを
気にせずに撮影しています。後で考えるちょっと恥ずかしい
かもしれません(笑)。
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bjynp at 2013-04-09 06:15
おはようございます♪
じっくり拝見しました。
エゾヨツメの飛翔写真。うまく撮れてますね。毛がフカフカで、気持ち良さそう。
オオシモフリスズメの撮影は、やっぱり地面に腹這いでしたか!野山の中ではよくあることですが、街中だとなかなか勇気が要りますね。ともあれ、夜間の撮影、お疲れ様でした。
アッキーマッキー
じっくり拝見しました。
エゾヨツメの飛翔写真。うまく撮れてますね。毛がフカフカで、気持ち良さそう。
オオシモフリスズメの撮影は、やっぱり地面に腹這いでしたか!野山の中ではよくあることですが、街中だとなかなか勇気が要りますね。ともあれ、夜間の撮影、お疲れ様でした。
アッキーマッキー
エゾヨツメもオオシモフリスズメも素晴らしいですね。
灯火での飛翔撮影お見事です。
オオシモフリスズメは子供の頃憧れたものですが今まで一度も見た事がありません。
そうか〜、春の蛾だとは知りませんでした。
それにしても想像以上に美しい蛾ですね。おっしゃる通り気品を感じます。
自販機の写真では大きさがよくわかって面白いですね。
知らない人(それとこの蛾の写真を撮りたい人)が見たら少なくとも「コクの超微糖」の購入は避けるでしょう。
灯火での飛翔撮影お見事です。
オオシモフリスズメは子供の頃憧れたものですが今まで一度も見た事がありません。
そうか〜、春の蛾だとは知りませんでした。
それにしても想像以上に美しい蛾ですね。おっしゃる通り気品を感じます。
自販機の写真では大きさがよくわかって面白いですね。
知らない人(それとこの蛾の写真を撮りたい人)が見たら少なくとも「コクの超微糖」の購入は避けるでしょう。
アッキーマッキーさん、
有難うございます。
山の中ではしばしば腹ばいで撮影しています。一人が多いので
気になりませんが、周りに人がいるとさすがにね----。
ここは蛾が多いので時々行きたいところでした。
有難うございます。
山の中ではしばしば腹ばいで撮影しています。一人が多いので
気になりませんが、周りに人がいるとさすがにね----。
ここは蛾が多いので時々行きたいところでした。
naoggioさん、
この2種とも以前から撮影してみたいものだと憧れていました。
今回やっと撮影できてうれしく思います。
自販機の写真は、確かにこれではコーヒーが売れなくなる可
能性がありますね。
この2種とも以前から撮影してみたいものだと憧れていました。
今回やっと撮影できてうれしく思います。
自販機の写真は、確かにこれではコーヒーが売れなくなる可
能性がありますね。
by tyu-rinkazan
| 2013-04-06 16:12
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