NATURE DIARY

tyurin.exblog.jp

20061119 台湾胡蝶散歩3(蝶の棲む山)

すでに11月も半ばを過ぎているのに、日が照るとまだ暑い------。
しかし、我々虫屋にとってはこの暑さは嬉しい。

**************************************************
台北駅から観光地として有名な烏来(ウライ)行きのバスに乗った。本日は日曜日ということもあり、ハイキングの格好をした子供達でバスは満員である。
我々は烏来の手前でバスを降り、そこからなんとヒッチハイクで、谷の5kmほど奥まで行った。そこには小さな部落があり、山の斜面に家が散在している。我々を車に乗せてくれた人は学校の先生で、ご自身も昆虫に興味があるといっていた。

ここは台北より標高が高いので涼しいが、斜面をみると紛れもなく亜熱帯の林だ。侯先生によれば、この辺の家は以前にミカン栽培をしていたので、アゲハ類がとくに多いという。



◆亜熱帯林◆
d0090322_18532784.jpg
= Pentax K100D, Pentax 100mm MACRO, ASA 200 =



今回の台湾行で是非見たいと思った蝶の一つが、白化したナガサキアゲハ♀だ。台湾産のナガサキアゲハ♀は日本産のものに比較して白化がめだち、特に白化の著しい個体は美しいという。さらに♀には有尾型が出現するとされている。

侯さんとしばし別れて、1人で山道を登っていくと、道路脇の赤い花にナガサキアゲハが吸蜜に訪れていた。なんと後翅の大部分が白いではないか!
額から流れる汗を拭くのも忘れてシャッターを押した。



◆ナガサキアゲハ白化型♀の吸蜜◆
d0090322_18534668.jpg
= Pentax K100D, Pentax FA200mm X 1.5 RC, 1/2000, F3.5, ASA 200 =



少し冷静になってそのメスをみると、後翅は明らかに白化しているのに、前翅はそれほど目立った白化ではなさそうだ。つまり後翅のみが白化している。
こんな白化のタイプがあるのだろうか?-------面白い白化といえるのでは?



◆ナガサキアゲハ白化型♀の吸蜜◆
d0090322_1854349.jpg
= Pentax K100D, Pentax FA200mm X 1.5 RC, 1/2000, F3.5, ASA 200 =



この個体は虫林の近くまで来て吸蜜し始めたので、GR-Dで広角写真を撮影することにした。しかし、明らかに逆光になってしまう。そこで、内蔵ストロボを用いて撮影することにした。自作のディフューザーを出したいところだが、そこまでの余裕はなさそうなので、そのまま撮影した。



◆ナガサキアゲハ白化型♀の吸蜜◆
d0090322_18593491.jpg
= Ricoh GR-D, ASA100, Flash(+) =



ナガサキアゲハの♂は飛翔が俊敏で、なかなか撮影できなかった。しかし、シャワーが降った後に訪花した個体を何とか撮影することができた。
台湾産の♂は♀に比較して地味ではあるが、後翅表面の青燐が広く発達していてそれなりに美しい。



◆ナガサキアゲハ♂の吸蜜◆
d0090322_18594536.jpg
= Pentax K100D, Pentax 100mm MACRO, ASA 200 =



ナガサキアゲハのオスは必ず無尾型になるが、メスは有尾と無尾の両方のタイプがある。どうしてメスだけが両方のタイプが出現するのだろうか?
これは多分、伴性遺伝形式をとっているのだろう。つまり、性染色体(蝶の性染色体がどんなものかわからないが)上に尾状突起の形成に関係した遺伝子があるのかも知れない。

写真のタイプは白化していない通常型であった。注意深く見ると有尾型で、白化した個体はみることができなかった。白化の個体の割合はそれほど高くないみたいだ。



◆ナガサキアゲハ♀有尾型の飛翔◆
d0090322_18595651.jpg
= Pentax K100D, Pentax 100mm MACRO, 1/2500, F3.2, ASA 200 =



オスとメスが求愛行動をしていた。
シャッター速度が遅かったためにかなりブレブレになってしまったが、躍動感を出すということで採用した。



◆ナガサキアゲハの求愛◆
d0090322_190513.jpg
= Pentax K100D, Pentax 100mm MACRO, ASA 200 =



ツマベニチョウは斜面の林の上を素晴らしいスピードで飛んでゆく。元気なやんちゃ坊主が走り回っているようで、見ているだけでも小気味が良い。このやんちゃ坊主は時たま下まで降りてくるが、ほとんど吸蜜してくれない。今回の撮影の中でツマベニの吸蜜は1度も見なかった。

この蝶の撮影を諦めかけていたときに、たまたま橋の上から下を見たら、コンクリートの湿った部分にツマベニチョウが2匹吸水に訪れていた。滑りやすく危険な斜面を河原まで5mほど降りて撮影した。

カメラに200mmの望遠レンズを装着し、さらに1.5倍のリアコンバーターをかまして、300mmとした。これで実際の倍率は450mm相当になるはずだ。絞り開放、ASA800にして、シャッター速度を上げてやれば手持ちでも何とかなるだろう。こんなとき、内蔵のてぶれ防止装置がついているPentax K100Dは心強い。

純白の翅先に赤いベニをつけた大型のシロチョウが、ファインダーの中で舞っていた。
偶然にこの望遠設定のままピントが合ったが、なんと下に空き缶があるではないか。
だれだここに空き缶を捨て奴は-----------!
少し笑えるショットではある。ウーム、でも空き缶が-------。



◆ツマベニチョウの飛翔◆
d0090322_1902086.jpg
= Pentax K100D, Pentax A 200mm X 1.5 RC, 1/1500. F2.8, ASA 800、トリミング=



ツマベニチョウは吸水中にはなかなか開翅してくれない。しかし、こんなチャンスは再び訪れることは無いと思い、ファインダーを覗いたままでねばってみることにした。
5分ほども待ったろうか、やっと翅を開いたときには、その美しさに息を呑んだ------。

後で写真をみると、ツマベニチョウは翅を閉じたときに後ろ羽と前翅が合わさって翅全体が茶色になる。まるで茶色い蝶である。しかし、開いたときにみると、翅が合わさった部分の下になっている前翅は白いのだ。
何となく日焼けしたときに水着の下の地肌が現れたみたいで面白いではないか。



◆半開翅したツマベニチョウ◆
d0090322_190292.jpg
= Pentax K100D, Pentax A 200mm X 1.5 RC, 1/1000, F4.5, ASA 800 =




◆閉翅したツマベニチョウ◆
d0090322_1904088.jpg
= Pentax K100D, Pentax A 200mm X 1.5 RC, 1/500, F4.5, ASA 800 =



山道の脇で吸水しているカラスアゲハのようなアゲハチョウを見つけた。ファインダーを通してみると何となく変だ。それでも台湾産のカラスアゲハは初めてなので、そんなものかもしれないと思い撮影していた。



◆ルリモンアゲハの吸水◆
d0090322_1904921.jpg
= Pentax K100D, Pentax A 200mm X 1.5 RC, 1/500, F4.5, ASA 800 =



さらに回りこんで、別な角度から撮影しようとしたときに、後翅の大きな緑色の紋が見えたのだ。なんと、カラスアゲハと思ったのが、実はルリモンアゲハだったのだ。思わず胸が高鳴ってしまった。
ルリモンアゲハは日本にはいない南方系の蝶だ。こんな蝶をみていると、ここが日本ではないことが実感できる。



◆ルリモンアゲハの吸水◆
d0090322_191062.jpg
= Pentax K100D, Pentax 100mm MACRO, 1/500, F5.6, ASA 200 =



ルリモンアゲハはさほど珍しい蝶ではないらしく、その後しばしば飛翔する個体を見かけた。しかし、吸蜜撮影のチャンスはなかなか訪れなかった。
やっとセンダングサの花にきた個体を撮影できた。もう少し翅を開いてくれればよかったのに-------。



◆ルリモンアゲハの訪花◆
d0090322_191974.jpg
= Pentax K100D, Pentax A 200mm X 1.5 RC, 1/4000, F3.5, ASA 800 =



とぼとぼと二人でバス停まで歩いていると、ブーゲンビリアの花にカラスアゲハが訪れていた。午後になり曇ってきて、今にも雨が降りそうで薄暗い。この条件では翅の震えを止めることは出来ないだろうと思いながらも数枚シャッターを押してみた。



◆カラスアゲハの訪花◆
d0090322_1911977.jpg
= Pentax K100D, Pentax 100mm MACRO, ASA 200 =


**************************************************
その他、アゲハではアオスジアゲハとナミアゲハをそれぞれ1頭づつ見かけた。ここは時期がよければミカドアゲハが集団吸水する場所だと侯先生がいっていた。

昨日と同様に、午後になるとやはり土砂降りの雨になった。
帰る途中でまたヒッチハイクし、トラックの荷台に乗ってバスの通る道路まで出た。バスを待つ間、侯先生が近くのお店(雑貨屋)の人に話しかけられ、そのお店でジュースをご馳走になった。そこのご主人の話によれば、もっと奥の方が蝶は多いといっていたようだ。台湾の田舎の人たちはとても話好きで、見ず知らずの旅人にも優しい。

台湾胡蝶散歩4につづく---------。
Commented by banyan10 at 2006-11-27 20:28
やっと見たことのない蝶が登場しましたね。
もちろん、ルリモンアゲハです。瑠璃色の斑紋も綺麗ですが、カラスアゲハとも少し違うメタリックなグリーンも綺麗ですね。
ナガサキは沖縄本島でもかなり白くなりますが、有尾は少ないですし、僕が見た限りでは後翅だけ白いというのはありません。
ツマベニの空き缶は笑ってしまいました。僕としても避けたい人工物ですかね。(^^;
Commented by nomusan at 2006-11-27 21:21 x
お~!すごいぞすごいぞ!! これはどれも素晴らしい画像ですね。ナガサキもここまでくると別種のようですね。ルリモンアゲハも素敵です。achillidesファンとしては脳みそがとろけそうな画像ですね。いや、これはエエもん見せていただきました。
それにしても、ツマベニ飛翔画像は・・・・・(爆)。
Commented by fanseab at 2006-11-27 23:40
ナガサキ有尾♀飛翔画像はベニモンアゲハへの擬態を示す最高の解説写真ではないでしょうか?paris吸水シーンもエエですね。ツマベニ飛翔シーン、これは迫力物です。空き缶ですが、この缶詰の残渣由来の塩分を吸いに来た可能性もあり、あながち邪魔物ではなかったかもしれないですよ。わずかなミネラルに敏感に反応するものですから。
Commented by 虫林 at 2006-11-28 01:14 x
Banyanさん
南国の蝶、デビュー戦の私にとっては、台湾で見る蝶見る蝶の全てが新鮮でした。遅ればせながら、皆さんが南国の蝶にはまる気持ちが少し理解できましたよ。
ルリモンアゲハは後翅の大きな紋が突然見えたときには大人気なく興奮しましたね。ナガサキの後翅のここまでの白化は西表島で稀に観察されていたようですが、今は絶滅したみたいですね。偶然にピントがうまくいったツマベニはラッキーでしたが、下に空き缶がバッチリ写っていたのにはやられました。
どうも小生も南国の蝶にハマる予感がして困っています(笑)。
Commented by 虫林 at 2006-11-28 01:21 x
nomusanさん、
台湾の蝶は日本との共通種が多く、それが逆に面白いですね。
何ていったって、日本南端の与那国からは見える島ですからね。
今回の撮影では、日本で見ることの出来ない蝶はほとんどいませんでした。ルリモンは共通種でない蝶の一つですが、個体数はそこそこ見ることができました。ただ、なかなか撮影チャンスはありませんでした。
Commented by 虫林 at 2006-11-28 01:35 x
fanseabさん、
東南アジアの蝶という広い立場から台湾や日本の蝶を見ることができていつもうらやましく思っています。
そうですね、おっしゃるとおり、ナガサキの飛翔はベニモンアゲハにそっくりさんですね。でもなぜベニモンに擬態するのかなぁ?
恥ずかしながら、ツマベニが空き缶に止まっていたかどうか定かではないのです。
何しろ夢中でシャッターを切っていましたら。でも、空き缶に惹かれてそこに来たのだとすれば、この空き缶はとても重要な価値を持ってきますね。
貴重なご意見、有難うございました。
Commented by chochoensis at 2006-11-28 17:25
虫林さん、ドキッ!ルリモンアゲハのブルーは、堪えられない魅力ですね・・・素晴らしいです。ナガサキアゲハの後ろ翅の白さは凄いですね。
こんなのがいるんだ・・・ピントもシッカリあっていて素敵な写真ですねさすがです。「ツマベニ」の飛翔素敵です、それなりに外国の証拠?が写っているのでそれなりに良いと思いますが・・・。
Commented by 虫林 at 2006-11-28 20:52 x
chochoensisさん、
今まで北方志向で、南国の蝶にはあまり関心がありませんでしたが、実際に台湾で南国のチョウ達に接して、その種類の多さとあでやかさにビックリした次第です。ルリモンアゲハは後翅の紋が目に入ったときは、想像もしてなかったもので、大人気なく興奮してしまいました。
ツマベニは何しろ飛翔写真にかける以外には翅表を撮影することができず、それでも何とかピントが合ったので良かったです。たとえ、空き缶が下に写っていても、それなりのムードはあるかと思っています。有難うございました。
Commented by thecla at 2006-11-29 23:07 x
ナガサキの後翅白紋の鮮やかさは別種の蝶みたいですね。
ルリモンアゲハをはじめとしたアゲハ系およびツマベニは、先日香港で見たものの全く撮影チャンスがなかったのでうらやましいです。
私も北方系だったのですが、南国もはまりました。南国の空の下の蝶はやけに輝いてみえるんですよ。
Commented by mhidehide at 2006-11-29 23:27
虫林さん ナガサキの後翅だけ白化したのは沖縄のものと違いますね。
沖縄のは、後翅だけ比べても、白い部分が黒い翅脈できっちり囲まれてはいません。まるで別種の蝶のようです。
ルリモンアゲハ、凄く綺麗な色ですね。ナマで見たいです!
Commented by 虫林 at 2006-11-30 06:59 x
theclaさん、
ナガサキアゲハは皆さんに別種みたいといわれます。確かにこの個体は変異かもしれませんね。
theclaさんの日記も拝見しましたが、香港も蝶の多いところで驚きました。短時間での撮影にも関わらず多くの種類を撮影されていましたね。
これからは南国のチョウたちも楽しみましょう。
Commented by 虫林 at 2006-11-30 07:05 x
mhidehideさん、
theclaさんのところでも書きましたが、どうもこの個体は特異な変異を伴ったものかも知れません。多数のナガサキを観察されているmhidehideさんがおっしゃるのですから間違いありませんね。有難うございました。
ルリモンアゲハは初めはビックリしましたが、比較的よく見るアゲハでした。沖縄から台湾は非常に近いので、気軽に訪れてみてください。
Commented by 頂点眼 at 2009-02-08 08:16 x
生きている蝶はとても美しいですね。
台湾のルリモンアゲハは、標本にすると大したことないのですが、太陽光線の下では息お呑むほどに美しい。台湾に行きたくなります。
Commented by 虫林 at 2009-02-08 23:35 x
頂点眼さん、
コメント有難うございます。台湾は昆虫だけでなく、人々もとてもよかったです。いつか、再び訪れてみたいです。
ルリモンアゲハは大賛成です。命の輝きといったところですかね。
by tyu-rinkazan | 2006-11-27 19:04 | ● Taiwan | Comments(14)