20090307 武田の杜のテングチョウ (山梨県)
Date: May 7th (Saturday), 2009
Place: Kofu-shi, Yamanashi Pref.
Weather:fair
<三つ目がとおる>
カメラを持ってフィールドを歩くと、今まで気づかなかった多くのものが見えてくる。つまり、カメラを持って歩くことは、「本来持っている目とは異なる別な目」を持つということになるのだろう。
有名なマンガ家で虫屋でもあった故手塚治虫氏の作品の一つに「三つ目が通る」がある。前額部に特別な力を持つ目(第三の目)を有する主人公の自称「悪魔のプリンス」写楽保介が様々な事件を解決する物語だが、カメラを持つ虫屋はまさしく「三つ目」になることができるのだ。
§ Diary §
金曜日は淡路島での研究会から夜遅くに帰宅したため、本日(土曜日)の朝はゆっくり起きて、コーヒーを飲みながらNHKの連ドラ「だんだん」を家族と一緒に楽しんだ。
外は晴れているが、風が強くて気温も低く、また昨日の疲れもあってレイジーな虫林はテレビでも見ながら日がな一日のんびり、ゆっくり、ほっこりとしてみたいと思った----------が、やはり近くの武田の杜を散歩することにした。虫屋の性には逆らえないのだ。
そういえば、ちょうど今は虫たちが土から出て活動を始める「啓蟄」の時期だ。土中から虫たちが出てくるように虫林も家から外に出て活動開始しよう。
虫屋の啓蟄だ!

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Today was almost butterfly weather (warm, bright, and not too windy). A short visit this early afternoon to my favorite place“Takedanomori”produced my first looking of European Beaks of the season
(Olympus E-3, ZD8mm FISHEYE + EC-14)
▶テングチョウ; European Beak
武田の杜の小径を歩くと、所々で冬眠からさめたテングチョウが足下から飛び立つ。テングチョウの他にはキタテハやルリタテハも見かけたが、彼らはより開けた場所で出会うことが多く、テングチョウは森の中の小径にその姿を多く見た。
彼らは飛び立つのでその存在を知ることができるが、もしも飛びたたなければ、目に自信が無い虫林にはとうてい発見できないだろうと思う。
下の写真の落ち葉の上で休むテングチョウをすぐに発見できるかな?
昆虫版の「ウォーリーを探せ」

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I had seen more than 10 European Beaks in the path of the forest. This photo is showing an European Beak resting with the wings closed on the ground. Please try to find a camouflaged butterfly.
(Olympus E-3, ZD50mm MACRO + EC-14)
テングチョウはしばらく旋回するように飛ぶと元の笹の葉上で静止して翅を開いた。そこで、そっと近づいて広角レンズで撮影した。こんな時にはバリアングルモニターは便利だと思う。

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This photo is a wide-angle view of a male of European Beak perching on the bamboo leaf with the wings opened
(Olympus E-3, ZD8mm FISHEYE + EC-14)
翅を閉じた状態でもテングチョウの♂♀を見分けることはそれほど困難ではないらしい。(赤みが無く、雲状紋が発達しているものが♂で、逆に赤みがあって雲状紋が不明瞭なのがメスだ)
地表の落ち葉に静止したテングチョウの裏面は、雲状紋が明瞭なのでオスと思う。

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An European Beak resting on the ground with the wings closed
(Olympus E-3, Sigma 150mm Macro)
テングチョウはこの時期には数がとても多くまるで「わが世の春」を謳歌しているようだ。
このチョウは形だけでなく、生活史もユニーク。
彼らは6月頃に新成虫になるとすぐに長い眠り(夏眠、秋眠、冬眠)に入り、翌年の春になってやっと目覚めてくるのだ。長生きといえば長生きな蝶ではあるが、人生いやチョウ生の大部分を物陰で眠っているのだ。
テングチョウのテングという名前は、テングの鼻のように頭部の先端が前方に長く伸びていることから来たのだろう。日本には想像上?の生物として、天狗の他に河童もあるが、カッパチョウという蝶がいなのが虫林には少し残念だ。
この長い鼻は正式には下唇鬚(labial palpus)というものが著しく発達した結果らしい。

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An European Beak
(Olympus E-3, Sigma 150mm Macro, ストロボ)
▶スジボソヤマキチョウ; Lesser Brimstone

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A female of Lesser Brimstone resting on the ground
(Olympus E-3, Sigma 150mm Macro)
▶キタテハ; Chinese Comma

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A Chinese Comma nectaring on the flower
(Olympus E-3, ZD50mm MACRO + EC-14)
§ Afterword §
啓蟄も過ぎて、昆虫達が現れる季節になった。
今回、武田の森を訪れた目的は、この春に羽化したミヤマセセリを見つけるためだった。昨年は3月の中旬に初見しているので、季節の歩みが速い今年なら見ることができるかも知れないと思ったからだ。
しかし、残念ながら、今回はミヤマセセリは見ることができなかった。
出現したのは、テングチョウ(10以上)、ルリタテハ(1)、キタテハ(4)、モンキチョウ(1)。
でも、来週あたりは元気なミヤマセセリに会いたいものである。
以上、 by 虫林花山
いよいよ春の到来ですね、毎年春に越冬明けの蝶たちと出会うのは嬉しいものです。
私も土曜日には沢山のキタテハやモンキチョウと戯れてきました。
ミヤマセセリやコツバメなど、春の蝶たちとの出会いが待ち遠しいですね。
テングチョウの雌雄の違いは知りませんでした。気を付けて見るようにしてみます。
スジボソはこの時期に行く場所では見れないので、羨ましいです。

これからが楽しみですね。
こちらはまだまだ白い世界ですが、雪解けが進んでいます。
シーズンが楽しみです。

ついつい、接近しすぎて、逃げられたり、蝶との「適度な間合い」を思い出す時でもあります。
やっと春めいてきましたが、気温の低い日には蝶が飛ばないので、この時期の観察は天候しだいですね。はやく、コツバメやミヤマセセリの姿が見たいです。
テングチョウの雌雄の鑑別は思ったよりも難しくないみたいです。羽表でもできますが、裏面のほうが容易かもしれません。
スジボソヤマキはこの時期には山間で結構見ることができます。でもボロイものが多いですけど。
そろそろこちらではミヤマセセリが期待できる時期に入ってきました。ミヤマセセリ、コツバメ、スギタニルリ、そしてギフチョウと連続して春が賑やかになっていきます。
貴重なご意見ありがとうございます。
定説というのはけっこう危ないもので、事実は少し異なることもありますね。テングチョウの夏眠、秋眠、、冬眠やあるいは年1化というのもどうも本当かな?という向きもあるみたいですね。
よく見るテングチョウも調べてみれば面白いかもしれません。
林の写真などではときどきセルフタイマーで撮影したりして楽しんでいます。なにしろ自分がモデルですから気にしなくて良いですね。
テングチョウは敏感なものもいればフレンドリーなものもいますので、選んで撮影しています。

私もフレンドリーな個体に出会いたいなー!
テングチョウの頭部のアップは以前から撮影しようと思っていました。今回、うまく撮影できてうれしいです。10頭以上のテングチョウに出会いましたが、ゆっくりと撮影させてくれたのはこの1頭だけでした。
梅でも咲いていれば吸蜜に来て春らしい写真も撮れるし・・
テングチョウは大半が年1化みたいですけど、エノキの土曜芽が出るとそこに産卵して、2化のものもでるようです。
森一さんも書かれていますが、私も10月中旬、多数のテングチョウがそろって熱心に吸蜜しているところに行き会ったことがあります。夏眠(秋眠?)明けで、冬眠のためにエネルギーを溜め込んでいるのかなと想像したことを覚えています。他の時期に見るテングとは食欲の貪欲さが違いました。
モンシロチョウはまだですか?
毎年、梅の花でテングチョウの写真を撮影していたので、今回も梅の花を注意して見て歩いたのですが、残念ながら姿を見つけることができませんでした。テングチョウの一化か2化についてはいろいろ検証する必要があるみたいですね。テングチョウのように普通な種類でもわからないことがいっぱいあることが昆虫の面白さかもしれません。
ありがとうございます。
この時期は蝶の姿を撮影できるだけでもう嬉しくなります。テングチョウはこの時期には個体数が多いので、格好の撮影対象になります。
おっしゃるとおりで、テングチョウはそれほど長い間休眠していたら、体が持ちませんよね。どこかで吸蜜して栄養を取る必要があります。10月中旬の集団吸蜜は面白い観察だと思います。今年は注意して観察してみます。モンシロチョウも意識していますが、今までのところお目にかかっていません。見つけたら連絡いたします。
おっしゃるとおりで、定説となっていることには疑問の点がかなりあります。ただ定説には例外というものがつきもので、定説自体が間違っているのか、それとも例外なのかを見極める必要があるように思います。これから、テングチョウについてもこの点を検証していくと面白いものですね。ついでにヒオドシチョウについても同様です。
それと、秋にはけっこう吸蜜に来るようです。
ついでの折にでもご覧ください。
写真を見せていただきました。貴重なさ心をものにされていてさすがですね。これだけ春先にはたくさん見ることができるテングチョウですが、自然界でのその生態についてはまだまだ不分明な点があることが良くわかりました。これから勉強していきます。ありがとうございました。
今日 散歩中に 見つけた 蛾ですが 辞典等で 調べても 判りません
教えて くれませんか。
宜しく お願いします
コメントありがとうございます。
蛾は小生もあまり得意ではありません。どなたか専門の方にお聞きになった方が懸命だと思います。こちらでも調べてもしもみてわかりましたら連絡いたします。