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20090621 みちのくにて:メスアカミドリと天牛(岩手県)

Nature Diary #0260
Date: June 21st (Sunday), 2009
Place: Iwate Pref.
Weather: Cloud and rain



§ Diary §

岩手では毎日雨にたたられた。
まあ、梅雨の時期に雨に文句をいう方が間違っているね--------。

写真は、岩手を離れる日(23日)の午前中に撮影したもので、この時だけ雲が切れて、南部富士(岩手山:2038m)の雄姿を少しだけ拝むことができた。

風さむき岩手の山にわれらいま校歌をうたふ先生もうたふ (宮沢賢治)

20090621  みちのくにて:メスアカミドリと天牛(岩手県)_d0090322_1821569.jpg
南部富士 (6月23日、岩手県)

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Mt. Iwate
Olympus E-3, ZD50mm、EC-14



メスアカミドリシジミ; Smaragdius Green Hairstreak

林の周りを歩きながら、下草や葉を見たがゼフの影は無い。そこで、少し枝を叩いてみたが、やはりチョウが飛び出す気配は無かった。天気(小雨が降っていた)のせいなのだろうか、それとも時期が早すぎたのだろうか(今年の東北のゼフの発生は例年並みか少し遅れ気味だ)。

しばらくして、クリの花からシジミチョウが飛び立って下草の葉上に静止した。近づいてみるとメスアカミドリシジミだった。こんな時は1頭のメスアカミドリでも、とても貴重で愛おしく感じるものだ。

そういえば、メスアカミドリは今年の初見である。

20090621  みちのくにて:メスアカミドリと天牛(岩手県)_d0090322_18225673.jpg
メスアカミドリシジミ (6月21日、岩手県)

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A male of Smaragdius Green Hairstreak
Olympus E-3, ZD8mm Fish-eye、EC-14

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メスアカミドリシジミ (6月21日、岩手県)

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A male of Smaragdius Green Hairstreak
Olympus E-3, ZD50mm、EC-14


メスアカミドリの静止した葉に、木漏れ日があたると、おもむろに翅を開いた。
半開翅のときに見える鮮やかな青は、何度見ても、幾つになっても、胸が高鳴る。

20090621  みちのくにて:メスアカミドリと天牛(岩手県)_d0090322_18243486.jpg
メスアカミドリシジミ (6月21日、岩手県)

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A male of Smaragdius Green Hairstreak
Olympus E-3, ZD50mm、EC-14


クリソゼフ(Chrysozeph)の翅の輝きは強烈だ。

標本では、クリソゼフの仲間(アイノミドリ、メスアカミドリ、ヒサマツミドリ)は金緑色に輝く。しかし、野外で太陽光の元で彼らを見ると、翅表の金属的な輝きは緑色よりは青色の色調が勝っているようだ(野外で綺麗に金緑色を出すのは至難の技である)。

多分、光源の違いによるものだろうか。

20090621  みちのくにて:メスアカミドリと天牛(岩手県)_d0090322_18245090.jpg
メスアカミドリシジミ (6月21日、岩手県)

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A male of Smaragdius Green Hairstreak
Olympus E-3, ZD50mm、EC-14


そこで、ためしにストロボを用いて撮影して見たところ、かなり緑色を帯びることがわかった。緑色を出したい時にはストロボを用いるのも1考である。

20090621  みちのくにて:メスアカミドリと天牛(岩手県)_d0090322_1825534.jpg
メスアカミドリシジミ (6月21日、岩手県)

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A male of Smaragdius Green Hairstreak
Olympus E-3, ZD50mm、EC-14



フタスジチョウ; East European Sailer

北海道や東北のフタスジチョウは、中部亜種に比較して白い帯がより太い

フタスジチョウに会いたくて、ある場所まで車を走らせた。そこは一昨年に訪れたときに、多数の個体を見かけたユキヤナギの垣根だ。しかし、残念ながらフタスジチョウを見ることができなかった。たぶん、まだ未発生なのだろう。

少しがっかりして車を走らせていると、道路上に飛ぶフタスジチョウを見つけた。静止したところを数枚撮影することができたが、このチョウは後から来た車に轢かれてしまった。

20090621  みちのくにて:メスアカミドリと天牛(岩手県)_d0090322_1826649.jpg
フタスジチョウ東北亜種 (6月21日、岩手県)

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East European Sailer
Olympus E-3, Sigma 150mm Macro

20090621  みちのくにて:メスアカミドリと天牛(岩手県)_d0090322_18261831.jpg
フタスジチョウ東北亜種 (6月21日、岩手県)

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East European Sailer
Olympus E-3, Sigma 150mm Macro



天牛:カミキリムシ; Long-horned beetle

キモンハナカミキリを路傍のセリ科(たぶんハナウド)の白い花上で見つけた。

本種を見るのは何年ぶりになるだろう。最初にキモンハナに出会ったのは、高校生の頃に訪れた裏日光(群馬県)の片品村大沢の村内の栗の花だった。キモンハナは稀というほどではないが、少ないハナカミキリなので、出会ったときには喜んだのを覚えている。

岩手の山中では、このキモンハナの個体数が比較的多いようだ。

ハナウドの花には、キモンハナの他に、ニンフホソハナ、クロルリハナ、ヒメアカハナ、ツヤケシハナなどのハナカミキリの仲間が多く集まっていた。実のところ北上山地のモモブトハナカミキリを期待したのだが、残念ながらみることができなかった。

20090621  みちのくにて:メスアカミドリと天牛(岩手県)_d0090322_18263227.jpg
キモンハナカミキリ (6月21日、岩手県)

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Leptura duodecimguttata
Olympus E-3, Sigma 150mm Macro


イラクサの葉上で、小さな赤い甲虫を見つけた。よく見るとアカイロニセハムシハナカミキリである。この虫がカミキリムシの仲間であることを看破したヒトは慧眼である

アカイロニセハムシハナは珍しいとまではいえないが、やや局地的で、どこでも見られるものではない。関東地方ではピックニセハムシハナやヒナルリハナなどとともに春にカエデの花に集まることが多い。

20090621  みちのくにて:メスアカミドリと天牛(岩手県)_d0090322_18264642.jpg
アカイロニセハムシハナカミキリ (6月21日、岩手県)

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Lemula nishimurai
Olympus E-3, Sigma 150mm Macro



伐材にキンケトラカミキリが集まっていた。みるとかなり多くの個体が這い回っている。
この虫は一見、キイロトラに似ているが、キイロトラよりも小型で、キイロトラに比べると見る機会はかなり少ない。

キンケトラも久し振りの出会いなので嬉しい。

20090621  みちのくにて:メスアカミドリと天牛(岩手県)_d0090322_182774.jpg
キンケトラカミキリ (6月21日、岩手県)

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Clytus auripilis
Olympus E-3, Sigma 150mm Macro



赤いカミキリムシが飛翔してきた。ヘリグロベニカミキリかなと目で追っていたら、どうも違う。もしかして稀種のムモンベニカミキリかも知れないと思いあわてて近寄ると、ベニカミキリだった。

ベニカミキリは竹を食べるカミキリである。ここには竹など見当たらないが、いったい何を食べているのだろうか。

20090621  みちのくにて:メスアカミドリと天牛(岩手県)_d0090322_18272213.jpg
ベニカミキリ (6月21日、岩手県)

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Purpuricenus (Sternoplistes) temminckii
Olympus E-3, Sigma 150mm Macro



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§ Afterword §

ここ数年、岩手に来ているが、ゼフに会うのが楽しみである。しかし、今回は残念ながら、連日の雨で、ゼフにはほとんど会うことが出来なかったのが残念だ。

今年の東北は、6月の天候不順のためなのか、蝶の発生が遅れているようだ。というのも、この時期(6月20日前後)ならすでに発生していてもおかしくない陸中のチョウセンアカシジミが、盛岡市や宮古市のいずれの棲息地でも全く見ることができなかったからだ。そして他のゼフもほとんどnull 状態。

いつか、みちのくでゼフの乱舞にまた出会いたいものだ。



以上、 by 虫林花山
Commented by ヘムレン at 2009-06-26 20:05 x
出始めのメスアカ!・・美しいです。クリソの輝きは、やっぱりいいですね。これだけ近いと、迫力です(^^)
太い帯のフタスジ・・・こちらのものとは、別種のように美しいですね。
見てみたいです。
キモンハナカミキリ・・・すっきりしていて綺麗ですね。最近、カミキリにも興味を持っています(^^)。。こちらも、いろいろ、教えてください。
Commented by 蝶山人 at 2009-06-26 21:41 x
強行軍道中心配して居りました。
東北の蝶の数は想像を絶する乱舞になることも有りますね。
メスアカの♂これだけ色を出すのは職人芸です。
キマも2日で私の10年分に勝る作品でしたが
ゼフの実力も恐れ入りました。
Commented by kmkurobe at 2009-06-26 22:43 x
メスアカの色綺麗ですね。クリソの光は本当に光源によって違って見えるものですね。
昨日長い間観察していたヒサマツは標本では鈍いグリーンに見えるのですが、飛んでいるときはメスアカのように、影になるとファボのように色が変化していました。
Commented by 蘭丸 at 2009-06-27 05:00 x
虫林san、おはようございます。
メスアカミドリのメタリックグリーンに寝ぼけた頭が起こされました。
アカイロニセハムシハナカミキリ・・・・・私では、「クビボソハムシの仲間かぁ。」
と、通り過ぎてしまうところです。。。
Commented by アッキーマッキー at 2009-06-27 17:58 x
虫林さん、こんにちは
東北に行かれてたんですね。メスアカのメタリックカラーが見事ですね。今日は、富士山麓に出かけましたが、撮影できた蝶は、クジャクとフタスジチョウのみでした。先週の日曜日、信州で再びギンイチに出会ったのですが、うまく開翅してくれました。1匹は結構きれいでしたよ。
昨夜は、『里山』のマスコミ試写会で六本木に行ってきました。滋賀県のマキノ町の撮影ほとんどで懐かしい風景に心がなごみました。8月22日から全国で公開の予定なので、良かったら観て下さい(HPに若干宣伝しました)。
Commented by 虫林 at 2009-06-27 22:42 x
ヘムレンさん、
ありがとうございました。
東北のゼフはまだ未発生だったようで、メスアカミドリは貴重でした。クリソの輝きをうまく表現するのはなかなか難しいですね。
フタスジの東北亜種は、かなり関東のものと異なるので面白いですよ。こちらも発生初期ようでした。
カミキリムシはいろいろと超とちがった楽しみがあるようです。こちらこそ教えてくださいね。
Commented by 虫林 at 2009-06-27 22:51 x
蝶山人さん、
色々お世話になりました。
キマルリの撮影は蝶山人さんの協力、貴重なアドバイスのおかげです。ありがとうございました。おかげで目の上のタンコブをとることができて喜んでいます。
岩手のほうは絶不調でしたね。それでも、メスアカミドリを見ることができましたので、ゆっくりと撮影できました。クリソの輝きを撮影するのはなかなか難しいですね。
来年はもう少し遅い時期に訪れてみようと考えています。
Commented by 虫林 at 2009-06-27 22:57 x
kmkurobeさん、
もちろん、ヒサマツミドリの快挙は拝見していますよ。おめでとうございます。クリソの輝きは光線の加減で変化するようで、うまく表現するのはなかなか工夫が必要です。
これから、白馬でもゼフの季節に突入しますので、楽しみですね。
Commented by 虫林 at 2009-06-27 23:03 x
蘭丸さん、
クリソゼフのメタリックグリーンの表現はなかなか難しいです。前方からだと光りすぎて趣が無くなりますし、後ろからだたあまり光りません。適当な輝きの角度を見つけて、自分好みに表現するしかなさそうです。
僕は元カミキリ屋なのでアカイロニセハムシハナカミキリがカミキリの1種だとわかりますが、ふつうは難しいでしょうね。面白いものです。
Commented by 虫林 at 2009-06-27 23:10 x
アッキーさん、
いつも温かいコメントありがとうございます。
かなりアクティブにフィールドに出かけていますね。花とともに是非とも蝶も楽しんでくださいね。またあとでそちらを訪問させていただきます。
「里山」も是非とも見せていただきます。
実は今週末は土日とも学会で東京にいまして、とらわれの身になっています。久しぶりに天気が良い週末なのに残念です。
Commented by banyan10 at 2009-06-28 01:07
メスアカ綺麗ですね。もう少し前方向からだともっと輝いたでしょうね。
僕も今日は秩父で撮影しました。綺麗でしたが、尾状突起が欠けていました。
カミキリ類も相変わらずすごいですね。
山形のチョウアカはかなり早い発生だったそうなので、岩手が遅れているというのも不思議ですね。
Commented by maeda at 2009-06-28 18:50 x
岩手のフタスジは北海道産のように白帯が広いので、初めて見たときは驚きでした。イチモンジもちょっと違うようですね。
岩手、なんかおかしな地域です。
Commented by chochoensis at 2009-06-28 21:46 x
虫林さん、流石に専門家だけあって=カミキリ=の写真にため息です!こんなにたくさんの=カミキリ=を瞬時に同定できるなんて、凄いです!小生なら調べても分からないかもしれません・・・写真も綺麗だし、素晴らしいです・・・フタスジの帯・・・広いんですね・・・。
Commented by N at 2009-06-29 03:44 x
 メスアカ非常によいですね。
フタスジも帯が広くて新鮮です。

やはり、個人的にはゼフィルスの金緑色の魅力にはまいってしまいます。。
いいもの見せていただきました!
Commented by 虫林 at 2009-06-29 12:50 x
banyanさん、
ありがとう御座います。
もう少し前方から撮影すると、羽全体が輝いて、羽のディテールが全くわからないようになってしまうのです。そこで、やや前方から輝きが適度な場所を見つけて撮影するようにしています。
カミキリはもともと興味があるのですが、通常に見つけようとするとなかなか見つかりませんね。
岩手の方は決して早い出現ではなさそうです。今年は発生時期がずれてしまったのかな。
Commented by 虫林 at 2009-06-29 12:53 x
maedaさん、
ありがとう御座います。
フタスジは北海道のものに非常に近くて綺麗でした。
岩手の北上山地には、北海道との共通種がいくつかあって面白いです。
カミキリムシですと、ケマダラカミキリは北海道と岩手くらいですし、モモブトハナカミキリも北海道と岩手では見ることができますね。
考えてみると面白い地域です。
Commented by 虫林 at 2009-06-29 12:56 x
chochoensisさん、
お褒めいただき恐縮します。
カミキリは以前は結構好きでやっていましたので、知識は少しあるかもしれません。でも、最近のヒメハナカミキリ(Pidonia)の仲間などはどんどんと新知見がでており、全くついていっていないのです。もう少しちゃんと勉強しないといけないと思っています。
フタスジはとても綺麗でした。発生所期のようで、見れただけでもラッキーでしたね。
Commented by 虫林 at 2009-06-29 12:58 x
Nさん、
コメントありがとう御座います。
やはり蝶屋はゼフの輝きにはしびれますよね。何度みても、幾つになってもゼフの輝きには胸が高鳴ってしまいます。今年はあまり見れませんでしたので、そこが残念でした。
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by tyu-rinkazan | 2009-06-26 18:28 | ▣メスアカミドリシジミ | Comments(18)

Photographic Adventures for Insects and Flowers


by 虫林花山
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