NATURE DIARY

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2011年 07月 26日 ( 1 )

201100722 北アルプス散歩:ハイマツ仙人と山のムスメ

=山のムスメと山ガール=
最近、「山ガール」という言葉が流行っています。誰が名付けたかは知りませんが、なかなかセンスがある命名だと思います。近頃、確かにカラフルな服をまとった若い女性ハイカーが増えているみたいで、山小屋も少し華やかになったように感じます。稀代のナチュラリスト 故・田淵行男 は、ミヤマ(アルプス)モンキチョウ(以下アルプスモンキ)を「山のムスメ」と称しました。もしも彼が今に生きていたら、赤いオシャレな襟巻をしたアルプスモンキを 「山ガール」 と呼んでいたかも知れませんね


Nature Diary #402

今回は以前から登ってみたかったT岳に行くことにしました。虫林は大学の山岳部の顧問もしているので、年に一度くらいはアルプスに登らないと学生君たちに示しがつきませんからね。でも、単独行ではやはり不安でしたが、嬉しいことに蝶写友の ダンダラさん が同行してくれることになりました----安心。

登山口からひたすらつづら折の急な坂道を喘ぎながら登り、何とか昼前には山小屋に到着することができました。昼食後、途中で降り始めた雨もあがったので(ガスっていましたが)、さっそく稜線を散策してみました。アルプスモンキは撮影できましたが、タカネヒカゲの方は飛び去る個体を見ただけで終わりました。

明けて翌朝は良い天気になりました。

穂高連峰から続く槍ヶ岳の大パノラマ が朝日に少し染まりながら目の前に迫ってきます。こんな雄大な山々をみれば、アルプスモンキもタカネヒカゲもどうでも良くなってしまいます---絶対ウソです。

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朝日に映える穂高、槍ヶ岳の山々 (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 60D, Sigma 24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro, ASA400



山の稜線には、ハイマツだけが絨毯のように地面を覆っています。虫林は中学生の頃に北八ヶ岳でハイマツを初めて見ることができましたが、以来、ハイマツをみるとその時の光景がフラッシュバックしてどこか懐かしく感じてしまいます。アルプスモンキとタカネヒカゲは、このハイマツが生い茂る広い稜線だけに棲息しています。彼らにとってハイマツは自宅といえるでしょう。

稜線のハイマツはとても低くて、ひざ下くらいしかない場所が多く見られますが、良く見るとその幹は太くて、長い間過酷な環境で生きてきたことがその幹からわかります(写真下)。

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高山蝶が棲息する稜線(上)とハイマツ(下) (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 60D, Sigma 24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro, ASA400




» ミヤマ(アルプス)モンキチョウ; The Alpine Clouded Yellow

朝、蝶たちがまだ活動する前に、景色を見ながらぶらぶらと稜線を見回ったところ、幸運にもハイマツの葉上に静止する2頭のアルプスモンキチョウを見つけることができました。

ちょうどこの時は槍、穂高連峰の山々の稜線がくっきりと見えていたので、アルペンバックの写真が撮影出来ました(その後、雲が上がってしまって、穂高、槍の稜線は最後まで姿を現すことはありませんでした)。タイトルトップの写真もこの時に撮影したものです。今回の山行の目的がアルペンバックのアルプスモンキの撮影だったので、これでとにかく目的が果たせたことになるわけです---------良かったな。

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ミヤマ(アルプス)モンキチョウ♂ (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 60D, Sigma 24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro, ASA400



アルプスモンキは、ハイマツの中にもぐりこまずに、どうやらハイマツの上で寝るようです。そのため、活動時間前にハイマツを良く見ていくと、葉の上に静止しているアルプスモンキを何頭も見つけることができました。一方、タカネヒカゲの方はハイマツで見つけたのは1頭のみでしたので、ただ単に個体数が少なかったためかもしれませんが、ハイマツ仙人ですから寝るときはハイマツの下に潜り込むのかもしれません。

活動時間前に静止している個体を見ると、体や触角に沢山の水滴(朝露?)をつけていました。そんな姿を見ると、厳しい気候の稜線で逞しく生きている彼らがとても愛おしく思えてきますね。

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水滴(朝露?)が付着したミヤマ(アルプス)モンキチョウ♂ (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 60D, Sigma 24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro, ASA400



アルプスモンキは晴れると活発に飛び回りますが、曇るととたんにハイマツの上に静止します。その習性は撮影にはかえって都合がよく、静止するミヤマモンキチョウの♂♀を二人でかわるがわるゆっくりと撮影することができました。静止している個体はとても鈍感で、指で軽く押してみましたが飛び立ちませんでした。

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ミヤマ(アルプス)モンキチョウ♂ (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 60D, Sigma 24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro, ASA400



登山道の近くで撮影していると、時折登山者たちが通りかかりました。最近は「山ガール」という言葉が流行しているようですが、登山者(とくに女性)のファッションはひところよりも艶やかになりましたね。

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ミヤマ(アルプス)モンキチョウ♀ (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 60D, Sigma 24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro, ASA400



アルプスモンキの新鮮な個体は、頭、脚、翅を縁どりがとても赤くて綺麗です。まるで「赤い襟巻」のようですね。今回は、♂(下の写真の上)♀(下の写真の下)ともに新鮮な個体が多く見ることができたので、多分この時期が彼らの発生のピークのように思えました。

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ミヤマ(アルプス)モンキチョウの♂(上)と♀(下) (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 60D, Sigma 24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro, ASA400



アルプスモンキが棲むこの稜線には、キバナシャクナゲ、コマクサ、ミヤマダイコンソウ、チシマギキョウ、アオノツガザクラ、チングルマ、イワツメクサなどの種々高山植物の花々をみることができました。

アルプスモンキのお気に入りの花はミヤマダイコンソウで、しばしば黄色いこの花で吸蜜していました。運が良いことに登山道脇に咲いたキバナシャクナゲの花で吸蜜する個体が撮影できました。

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キバナシャクナゲの花で吸蜜するミヤマモンキチョウ (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 60D, Sigma 24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro, ASA400



ハイマツ上の♂をアップで撮影していたら、別のオスが絡んできました。メスと間違えたのでしょうか。

ほんの一瞬の出来事だったので、シャッターを2度ほどしか押せませんでしたが、1枚だけは何とかフォーカスが合っていたのでほっとしました。今回の最もお気に入りの一枚になりました。

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♂同士の絡み (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 7D, EF 300mm F4L IS USM, ASA400



ダンダラさんがクロマメノキの葉で交尾するアルプスモンキを見つけて呼んでくれました。

アルプスモンキの交尾シーンは初めてなので胸をときめかせながら撮影しました。もしかして交尾したまま夜を明かしたのでは?と思いましたが、水滴が付着していいないので、やはり朝に交尾したのでしょう。

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アルプスモンキの交尾 (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 7D, EF 300mm F4L IS USM, ASA400



時々アルプスモンキのオスとメスの求愛飛翔を観察しましたが、あまり近くでやってくれなかったので、300mmのままで望遠飛翔撮影をしてみました。写真はトリミングしています。

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求愛飛翔 (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 7D, EF 300mm F4L IS USM, ASA400, trimming(+)




» タカネヒカゲ; The Asamana Arctic

タカネヒカゲの撮影には少し苦労しました。かなり敏感で、飛び立つと風に乗って視野の彼方に飛び去ってしまうからです。そこで、食草のスゲが生えていそうな窪地に降りてみました。するとうまい具合に、そこでは何頭ものタカネヒカゲを観察することができました。

タカネヒカゲは地面に静止すると、全く分からなくなってしまいます-----さすがハイマツ仙人。

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タカネヒカゲ♂ (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 60D, Sigma 24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro, ASA400



新鮮な♀個体を見ることができました。もう少しゆっくりと観察すれば、交尾シーンやスゲでの産卵シーンなども観察できたと思いますが、次回の課題にしておきます。

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タカネヒカゲ♀ (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 60D, Sigma 24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro, ASA400



タカネヒカゲは砂礫地に静止すると体を傾けて横になる性質が良く知られています。

この姿勢は高山での強風を避けるためといわれています。今回、ミヤマモンキチョウでも同様の姿勢が観察できましたので、タカネヒカゲだけの特徴的姿勢とはいえないかもしれません。

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体を横にするタカネヒカゲ♀ (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 60D, Sigma 24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro, ASA400



タカネヒカゲを上手く刺激すると翅を開いてくれました。

オスは開いても草の間なのでなかなかうまくいきませんでしたが、メスの方は綺麗な開翅写真が撮影できました。タカネヒカゲの開翅撮影のコツが少しわかりましたので、次回も同じようにトライしてみようと思います。

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タカネヒカゲの開翅:上が♂で下が♀ (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 7D, EF 300mm F4L IS USM, ASA400



最後に朝に出会ったブロッケン現象の写真を一枚載せておきます。本日は2度ほどこのブロッケン現象を見ることができました。雲が多い稜線では良く見るものらしいです。

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ブロッケン現象 (北アルプス、7月23日)

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Canon EOS 60D, Sigma 24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro, ASA400, Trimming (+)




§ Afterword §

実はこの登山は、○○代最後のメモリアル登山でした。

T岳の登りは1350mもの標高差があって、日頃、歩かない虫林には長く辛いものでした。さらに霧でガスり、雨まで降ってきたのですから、虫林一人だと途中で諦めて帰ってしまったかも知れません(多分帰ってしまったでしょう)。最後まで登りきることが出来たのは、同行してくれたダンダラさんのお陰です。


この日記を書いている時には、まだ筋肉痛を我慢しながら歩いています。山に登るともう二度と登りたくないと思いますが、年があけるとまたその時期には登ってしまうようです。それだけアルプスと高山蝶には魅力があるのかなと思います。来年はまたどこかの山で高山蝶たちと戯れたいものだと思います。

ダンダラさん、ご苦労様でした。


以上、 by 虫林花山
by tyu-rinkazan | 2011-07-26 21:20 | Comments(32)