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反骨の博物学者「南方熊楠」という人物がいる。南方は、和歌山県に生まれ、19才の時に渡米、粘菌の魅力にとりつかれ、その研究に没頭、サーカス団に入ってキューバに渡るなど苦学しながら渡英した。その抜群の語学カと博識で大英博物館の東洋関係文物の整理を依頼されたという。南方は周囲から奇人呼ばわりされたらしいが実はやさしい含羞の人であり、自然保護運動に命をかけて闘いぬいた。
(南方熊楠記念館,南方熊楠紹介より抜粋)

そんな南方の育った紀伊半島を一度は訪れたいと思っていた。

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南紀の海をみたいと思い、小高い丘の上に登ってみた。
上から望む海は、どんよりとした曇り空を写して鉛色にみえた。



◆南紀の海◆
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= GR-D, ASA 100 =



海岸線には、少しひなびた漁村が広がる。
南紀の海辺はとても長閑で、peacefulだ。こんな所に棲んでいたら、ノンビリと長生きできるに違いない。

虫林が宿泊した宿のご主人は、もともと大阪に近いところに住んでいたそうだが、年をとったのと釣りが好きなので、ここに引っ越してきて宿をやっているとのことだった。ちなみに、この日は金曜日だったが、宿泊客は虫林一人だった。



◆南紀の海◆
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= GR-D, ASA 100 =


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海辺の道にはセイタカアワダチソウやアメリカセンダングサが群生している。両花とも既に花の時期が終わり、センダングサでは忌まわしい種の時期になっていた。ここを数週間訪れるのが早ければ、セイタカアワダチソウやセンダングサの花が蝶のポイントになるのだろう。

道の脇で枯れたセンダングサに静止したウラナミシジミを見つけた。
GR-DにGW-1をつけて、広角22mmで、海をバックにして撮影してみた。

翅は破損して、どうも見るからに寒そうにみえる。多分、これでは飛ぶこともままならないのだろうと思い、指でつついてみると、意外な速度で飛び去ったではないか。



◆ウラナミシジミ◆
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= GR-D, GW-1, ASA 100=



11月下旬のこの時期は、キク類の花盛りだ。
海辺の近くの岩壁にはしがみつくようにキイシオギク(紀伊潮菊)が群生していた。

キイシオギクはイソギクの仲間で、イソギクが千葉県から静岡県に分布するのに対して、茨城県以北にはハマギク、四国の東部にはシオギク、そして紀伊半島にはキイシオギクが分布しているのである。キイシオギクは紀伊半島に分布するシオギクの変種とされている。

野生のキクは色々種類が多く、また地域により形態が異なるので、観察したら面白そうだ。



◆キイシオギク◆
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= GR-D, GW-1, ASA 100=




◆キイシオギク◆
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= GR-D, GW-1, ASA 100=




◆キイシオギク◆
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= GR-D, ASA 100 =



白いキクの花もかなり認められる。しかし、花の同定が自信が無いのだ。
一応、海岸の傍で見られるのと、花の形が似ているのでノジギクとするが、葉の切れ込みは少ないような気がする。



◆ノジギク◆
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= GR-D, ASA 100 =



海辺の砂浜に出てみると、意外にもアザミの花が咲いているではないか。
このアザミは海辺の砂浜の自生することからハマアザミ(別名:ハマゴボウ)と呼ばれている。伊豆半島以西に分布する。
この浜ではかなり群生し、波打ち際近くまで認められた。



◆ハマアザミ◆
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= Ricoh GR-D, ASA 100 =



ツワブキの黄色い花がそこかしこで咲いていた。
ツワブキという名前は、葉につやがあることを意味する艶フキという名前がなまったものらしい。葉柄は通常のフキと同様に「きゃらぶき」にして食べられるそうだが、まだこのフキを食べたことはない。



◆ツワブキ◆
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= Ricoh GR-D, ASA 100 =



岩場に咲くアゼトウナの花を見つけた。
初めて見たときはジシバリかと思ったが、良く見ると花の形が異なるようだ。
伊豆半島から紀伊半島、四国、九州の海辺の岩場に自生する花だ。



◆アゼトウナ◆
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= Ricoh GR-D, ASA 100 =



こんな寒い日であったが、クロホウジャクだけは盛んに吸蜜のために花を訪れていた。
*当初、クロホウジャクとしましたが、chochoensisさんからご教示いただき、ホシホウジャクに訂正しました。ご指摘、有難うございました。



◆ホシホウジャク◆
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= Pentax K100D, Pentax D-FA 100mm MACRO, ASA 200=



歩いていると種々の木の実が綺麗だった。
いくつか撮影したので、並べておいておこう。



◆トベラ◆
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= Pentax K100D, Pentax D-FA 100mm MACRO, ASA 200=




◆マンリョウ◆
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= Pentax K100D, Pentax D-FA 100mm MACRO, ASA 200=




◆クサギ◆
d0090322_0564717.jpg
= Pentax K100D, Pentax D-FA 100mm MACRO, ASA 200=



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和歌山県を訪れるのは、実はこれで2回目なのだ。
1回目は数年前に講義で訪れた。6月だったので、蝶の撮影には絶好であったが、忙しかったのと、その時はそれほど蝶の撮影に熱心ではなかったので、すぐに帰宅してしまったのだ。今思えば残念である。

この海岸線の散歩道はヤクルリやサツマシジミの存在を除いても、第一級の素晴らしい散歩道であると確信できる。

今回は天候不順ということで、蝶よりも植物の観察がメインになってしまった。
近い将来、是非とももう一度訪れてみたい散歩道である。
by tyu-rinkazan | 2006-12-10 01:06 | ■野花 | Comments(14)

台湾から帰国後まもなく、今度は和歌山県和歌山市を訪れた。この学会には、虫林の知るポルトガルや米国の研究者が特別講演に招待されており、昨夜は久しぶりに彼らと会い夕食を共にした。こんな機会をつくってくれたW医大のK教授に感謝したい。

ワークショップ終了後、何気なくホテルの窓から外を見ると、和歌山城のシルエットが夕日に映え、少し色づいたイワシ雲が空を飾っていた。



◆和歌山城とうろこ雲◆
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= Ricoh GR-D, ASA 100=



学会は金曜日(24日)に終了したので、和歌山での滞在を1日延長し、紀伊半島の南にある小さな海辺の町に向かった。サツマシジミとヤクシマルリシジミを撮影するためだ。

両種ともまだ見たことがないが、いくつかのブログやホームページで掲載された素晴らしい写真が目に焼きついていた。すでに11月も下旬だが、この両種はまだ健在だろうか-------。

虫林の乗る特急「くろしお」は、リゾート地として全国的に有名な白浜を過ぎると、乗る人も急に少なくなり、暗闇の中に時おり垣間見える海の気配がさびしげな列車の音とともに、南紀の旅情を演出していた。

列車の中で、ノートパソコンを学会場に忘れてきたのに気づいた。
発表の際のファイルの受け渡しの時に、PCセンターのデスクの上に置いてきてしまったのだ。
うーむ、どうしよう。
そこで、明日の講習会に参加するM助教授に電話して、預かってもらうことにした。
Mさん、有難う。

結局、宿に到着したのはすでに夜9時をまわっていた。

思えば遠くに来たものだ~♪。--------ということで、今回は和歌山県の海辺散歩である。


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数日前の天気予報では、土曜日は晴れの予想だった。しかし、朝起きて外をみると、空は厚い雲で覆われ、さらに風が音をたてているではないか。
週間天気予報にはいつも裏切られているような気がするぞ。

少し寒いので、上着を着て、海沿いの細い道を歩いてみたが、案の定、蝶の姿は全く見なかった。仕方が無いので砂浜をしばらく散歩したところ、波打ち際にほら貝?が波に洗われて転がっているのを見つけた。



◆南紀の海岸◆
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= Pentax K100D, Pentax 100mm MACRO, ASA 200=



途中から小雨まで降り出してしまった-----------。
弱り目に祟り目(things go from bad to worse)とはこのことだ。でも諦めずに、忍耐強く木の葉や草などをじっくり見ていくと、少しめくれたマテバシイの葉にやっと白いシジミチョウを見つけた。
目的のサツマシジミだ!

サツマシジミは翅を硬く閉じ、じっとしている。
時期的に遅すぎるのか、破損した翅が哀れさを感じさせた。
よくぞ生きていてくれたね。



◆マテバシイの葉裏に静止するサツマシジミ Albocaerulean 
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= Ricoh GR-D, ASA100 =



散々苦労してやっと見つけた蝶である。大事に観察したいものだ。

完璧に綺麗な羽を持った蝶は素晴らしい被写体だ。
しかし、発生時期も終盤で、翅が破損し、尾羽打ち枯らし、哀れな姿を見せる個体にも何ともいえない愛おしさを感じるのである。

それにしてもサツマシジミの地色は本当に白い。
美しい蝶だ。
今度は是非とも天気の良い時に出会ってみたいものだ。



◆サツマシジミ Albocaerulean 
d0090322_2344814.jpg
= Ricoh GR-D, ASA100 、ストロボ=




◆サツマシジミ Albocaerulean 
d0090322_235138.jpg
= Ricoh GR-D, ASA100 、ストロボ=



海辺の観察を諦め、山の中の遊歩道を歩いてみた。
すると、葉の上に静止する茶色いシジミチョウを見つけた。
ムラサキシジミかムラサキツバメのどちらかだろう。
ムラサキシジミは山梨でもしばしば見かけるが、ムラサキツバメは少なく、まだ観察したことがない。

ゆっくり観察してみると、尾状突起が見えた。ムラサキツバメだ!

色々工夫しながら、広角とアップの写真を何とか撮った。
しかし、いかんせん暗いのでストロボをたいた。



◆ムラサキツバメ Powdered Oakblue 
d0090322_2351776.jpg
= Ricoh GR-D, ASA100 =




◆ムラサキツバメ Powdered Oakblue 
d0090322_2352997.jpg
= Pentax K100D, Pentax D-FA 100mm MACRO, ASA200, ストロボ(+) =



林の中の暗い道で、曲者クロコノマチョウに出会った。この蝶は今年山梨でも見かけた蝶である。
やはり敏感でなかなか近づくことが出来ない。
何とか数枚の写真を撮った。



◆クロコノマチョウ Dark Evening Brown 
d0090322_2354280.jpg
= Pentax K100D, Pentax D-FA 100mm MACRO, ASA200, トリミング =



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結局、曇り時々雨+強風の中を、傘をさして歩き回ったが、目的のヤクルリは撮影できず、サツマも1頭だけで終わってしまった。

でも、これで良いのだ。これが自然というものだ。
サツマ、ヤクルリの写真撮影は将来の楽しみにしよう。

最後に、色々アドバイスをいただいた「蝶にあそぶ」のma23さんに感謝します。


--------------南紀の海辺散歩2につづく
by tyu-rinkazan | 2006-12-09 02:40 | ▣サツマシジミ | Comments(12)